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社会言語学のしくみ (シリーズ・日本語のしくみを探る) by 町田 健, 中井 精一

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THÔNG TIN TÀI LIỆU

Thông tin cơ bản

Tiêu đề 社会言語学のしくみ (シリーズ・日本語のしくみを探る)
Tác giả 町田 健, 中井 精一
Trường học 未知の大学
Chuyên ngành 日本語学
Thể loại sách chuyên khảo
Năm xuất bản 2017
Thành phố Tokyo
Định dạng
Số trang 195
Dung lượng 2,37 MB

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Nội dung

iii はしがきは し が き 社会言語学という学問分野が日本で本格的に研究されるようになったのは一九八 ○年代のことでし た 。私がこの分野の研究に興味をもったのは 、それまでの国語学や日本語学の方法では 、実社会で使 用されている日本語の姿を把握するにはあまり不十分で不適切であると感じていたからでした 。 当時の国語学や日本語学では 、ことばと 、それを使う人間やそ

Trang 2

研 究 社

Trang 3

編 者 の こ と ば

日本語および日本語教育に対する関心の高まりとともに

、日本語のしくみそのものを深く追求しよ

うという試みも

、これまでにも増してさかんに行われるようになりました

。従来の日本語研究は

、ど

ちらかと言えば日本語の歴史に重点が置かれる傾向にありましたし

、現代日本語についても

、英語を

はじめとする欧米の諸言語をもとにして開発された考え方を

、そのまま日本語に当てはめようとする

姿勢が強かったことは否めません

しかし最近では

、言語学や情報科学の進展に伴って

、人間が使っていることばとは一体どんな性質

をもつものであって

、そのような性質が日本語という個別の言語にどんな形で現れているのかという

一般的な視点からの分析が行われるようになりつつあります

。このような見方は

、日本語の特殊性を

いたずらに強調したり

、逆に欧米の言語だけからことばの一般性を引き出してそれを日本語に対して

無批判に適用したりするという

、人間のことばの本質を無視した方法を鋭く批判するものでもありま

。そしてそのことによって

、人間のことばとしての日本語の正体がより鮮明に浮かび上がってくる

ことが期待されるのです

Trang 4

iii はしがき

は し が き

社会言語学という学問分野が日本で本格的に研究されるようになったのは一九八

○年代のことでし

。私がこの分野の研究に興味をもったのは

、それまでの国語学や日本語学の方法では

、実社会で使

用されている日本語の姿を把握するにはあまり不十分で不適切であると感じていたからでした

当時の国語学や日本語学では

、ことばと

、それを使う人間やその人間が暮らす社会との関係に目を

向けず

、ことばの局部的な

、体系のごく一部だけを記述し

、それを帰納的処理して論文を書くという

ことがよく見受けられました

。もちろんそれには一面無理からぬところもあって

、日本語の研究が長

い歴史と多くの研究者によってこれほど発展すると

、大づかみで見ていくところや未知の新しい種が

少なくなるため

、ごくごく細部の構造を明らかにしようということに重点が移っていくことは仕方の

ないことだったかもしれません

。しかし

、そういったことが繰り返されると

、社会が要請する現代的

課題への関心が希薄になったり

、パラダイムの固定化がますます進んで

、外部からの視点や大局的に

鳥瞰するといったことが困難になって

、ことばだけが上滑りした研究が際限なくやりとりされること

につながっていったのです

私には

、膨大な文献資料や調査データを細かく分類し並べたてて

、こっちがこっちより古いとか

Trang 5

用に関するシステムを突き詰めていくほうがいいと考えて社会言語学に取り組むようになりました

社会言語学は

、人々の日々の暮らしや行動に注目しながら

、形にならないものに形を与え

、なによ

り変化してやまない現実の生活を記述し

、それをもとにことばとことばを使用する人間

、そしてその

人間が暮らす社会の関係で

、一種のストーリー

・メーキングを行うことだと考えています

。自分の身

のまわりから見直し

、わからないこと

﹂や

﹁知りたいこと

﹂と正面から向きあい

、そしてあきらめず

に考え続けていくこと

。そんなささやかな

、そして着実な一歩一歩の積み重ねが

、私が社会言語学に

関わる基本的なスタンスです

。本書をとおして

、多くの方々が社会言語学を知るきっかけとなること

を期待しています

本書の企画のお話をいただいてから三年を経て

、同僚で本書の執筆をお勧めくださった加藤重広さ

Trang 6

v 目次

第 一 章 社 会 言 語 学 の 枠 組 と 方 法

001

Q 1 社 会 言 語 学 に は ど ん な 意 義 が あ り ま す か

002

Q 2 社 会 言 語 学 に は ど ん な テ ー マ が あ り ま す か

005

Q 3 日 本 の 社 会 言 語 学 に は ど ん な 特 徴 が あ り ま す か

011

Q 4 研 究 に 必 要 な デ ー タ の 収 集 は ど の よ う に 行 わ れ ま す か

022

第 二 章 日 本 社 会 の 特 質 と こ と ば

Trang 7

第 三 章 変 貌 す る 日 本 社 会 と こ と ば

107

Q 8 高 度 経 済 成 長 に よ っ て 日 本 語 は ど の よ う に 変 化 し ま し た か

108

Q 9 都 市 化 に よ っ て 人 の 言 語 行 動 は 変 わ り ま し た か

113

Q 10 世 代 間 や 男 女 間 で こ と ば に は ど の よ う な 違 い が あ り ま す か

123

Q 11 日 本 社 会 の 集 団 語 に は ど の よ う な 特 徴 が あ り ま す か

130

第 四 章 国 際 社 会 と 日 本 語

139

Q 12 外 国 人 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に は ど ん な 配 慮 が 必 要 で す か

140

Q 13 世 界 の な か で 日 本 語 は ど ん な 位 置 に あ り ま す か

158

Q 14 多 言 語 社 会 と は 具 体 的 に ど の よ う な も の で す か

Trang 9

Q 1 社 会 言 語 学 に は ど ん な 意 義 が あ り ま す か

社会言語学は

、社会とことばの相関関係に焦点を当てた学際的な研究分野です

。その

歴史は浅く

、かつては言語を社会との関連のなかで解明する言語学の一分野として理解

されたり

、あるいは社会学の一部として社会を言語との関連で解明しようとする分野と

して捉えられたりしたこともあります

学際的な学問として

学術研究全般の流れとして

、一九八

〇年代以降に学際的な研究が強く志向されるよう

になり

、その潮流は社会言語学にも大きな影響を与えました

。言語学的

﹂社会学的

といったカテゴリーを厳格に設定してしまうと

、研究の発展が阻害されてしまう可能性

があります

。むしろ

﹁言語学

﹂の知と

﹁社会学

﹂をはじめとした関連分野の知とのあい

だを往復運動しながら

、研究を進めていくことこそが

、学際的研究分野としての社会言

語学にふさわしい姿勢であると考えられるようになりました

﹂ と は

、 学 問 と 学 問 の 境 界

的 な 領 域 に あ る こ と を 言 い ま す

、 イ ン タ ー

デ ィ シ プ リ ナ リ ー

﹂ 境 界 学 問 的

﹂ な

ど と も 言 い ま す

。 ま た

、 社 会 言 語 学 に

つ い て

﹁ ト ラ ン ス デ ィ シ プ リ ナ リ ー

︵ transdisciplinar

︶ と 表 現 す る こ と も

あ り ま す が

、 こ れ は 色 々 な 領 域 を 横 断

的 に 渡 っ て い く 姿 勢 を 意 味 す る も の で

﹁ 領 域 横 断 的

﹂ と 一 般 に 訳 し ま す

Trang 10

003 Q1 社会言語学にはどんな意義がありますか ?

ヨーロッパの異文化研究の雛形になったのはキリスト教の海外伝道です

。異文化理解

のためには

、おのおのの環境が生み出した固有の精神構造

・物質文化を尊重しなければ

なりませんが

、その土地の風俗

・習慣

・思想などに関する知識なくしては住民の精神生

活は理解できません

。ましてやキリスト教伝道者が行ったように異文化に属する人々と

深い愛情で接するには

、異文化に対する深い理解と愛情が不可欠です

歴史的に見れば

、異文化研究の主要な分野である民族学が

、近代の植民地政策に深く

関わったという負の面もあります

ただ

、異文化理解の本質は外国への憧憬や冒険心を背景に芽ばえたものであって

、本

来は人類が互いに理解し

、信頼関係のもと共存することを目的にしていたものです

。そ

んな流れのなかで

、異文化理解に深く関わるもう一つの分野

、文化人類学が成立しまし

。文化人類学の目標は異文化研究だけではありません

。異文化を自文化を写し出す鏡と

して使い

、自文化の理解をさらに深めることも

、教養を高めることにつながる大切な目

標です

。社会言語学についても同じ考え方が成り立ちます

。異なる言語を使用する社会

や集団を自らを写し出す鏡として用いて

、自分たちの言語を

、さらには

、その言語を使

Trang 11

日本における社会言語学

言語を

﹁文化や社会を写し出す鏡

﹂と捉える欧米の社会言語学の理念は間違ってはい

ないでしょう

。だからと言って

、欧米流の社会言語学をそのまま日本に移植すれば済む

というわけではありません

欧米の社会言語学は欧米の諸言語を対象にし

、欧米文化を写し出すために

、その鏡と

して異文化研究を発展させてきました

。日本人である私たちがその方法論や成果を無批

判に取り入れても

、正しく異文化を理解できないばかりか

、間違って異文化理解をして

しまう危険性さえあります

。欧米の研究をそのまま吸収すれば

、せっかくつかんだ異文

化という鏡には

、欧米から見た像が写し出されてしまうかもしれません

。残念ながら欧

米の社会言語学を絶対視して取り入れるだけの研究者もいないわけではありませんが

日本をフィールドに研究を行う以上

、まず日本における社会言語学を構築するべきだと

私は考えますし

、そこから

、欧米の社会言語学にアイディアを提供するというくらいの

気構えをもつほうがむしろ健全でしょう

よく知られているように

、日本語を学ぼうとする外国人の数は増えています

。日本語

、 二

〇 三 年 に 海 外 で 日 本 語 を 学 ぶ 人 は 二

、 日 本 語 を 対 象 と す る 第 二

言 語 習 得

、 す な わ ち 日 本 語 教 育 に 欧 米

で の 研 究 成 果 を 活 用 す る こ と は 意 味 が

あ り ま す

Trang 12

005 Q2 社会言語学にはどんなテーマがありますか ?

に用いられている言語ですから

、日本語と日本という社会の双方に注目する学問である

社会言語学は

、日本語教育を発展させるうえでも重要な役割を負っているのです

本書は

、日本社会と日本のことばに関心をもつ人と

、日本語教育に携わっていこうと

考える人のために書かれました

。日本語と日本社会との関係からことばのしくみをあぶ

り出していくとともに

、ことばと社会の関係を写し出す新しい社会言語学のありかたと

方向性を提案していきます

Q 2 社 会 言 語 学 に は ど ん な テ ー マ が あ り ま す か

﹁言語

﹂と

﹁文化

﹂はそれぞれ人間存在の根幹にあるもので

、この二つは互いに深く

関連し合っています

。ある社会特有のものの見方

・考え方

︵ お お む ね 文 化 に 含 ま れ る も の

、しばしばその社会の言語のありかた

︵ 語 彙 や 表 現 方 法 な ど

に刻みつけられていて

、人

はごくふつうに母語を使用するなかで

、知らず知らずのうちにその社会特有の見方

・考

え方に従ってしまうことが多いのです

、 生 成 文 法 な ど を 思 い 浮 か

Trang 13

★ 実 際 に

、 ア メ リ カ で は チ ョ ム ス キ ー

ら の 理 論 的 な 研 究 が 力 を 得 て い く 一 九

〇 年 代 に

、 ち ょ う ど 対 極 を な す よ う

に 社 会 言 語 学 の 研 究 が さ か ん に な っ て

い き ま す

。 日 本 で も 変 形 文 法

・ 生 成 文

法 を は じ め と す る 理 論 的 な 研 究 が 隆 盛

を 極 め る 時 期 に 社 会 言 語 学 が 発 展 し て

い き ま し た

ままに

、なるべく本来の姿をゆがめずに捉えようとすると

、理論的な言語学の枠組みや

方法論だけではうまく処理できないことや正しく理解できないことが残ってしまいま

。つまり

、理論のための理論を重視する研究では

、ことばの現実からますます遠ざ

かってしまうのです

。このことは

、日本語教育などの現場でも強く意識されていること

、高度に理論化した言語学の研究成果はそのままでは活用も導入もできないという不

満の声が聞かれるのも事実です

。こういった行きすぎた理論化に対する批判や反動形成

として

、 現実と深く結びついた社会言語学に徐々に関心が向いていったということは

考えておかねばなりません

たとえば

、教育現場は

、机上の理論では予想できないような事態が生じる場でもあり

ます

。これは日本語教育や外国語教育をはじめとする

、ことばの教育の場でも同じで

。ことばが文化や社会と切り離されて存在することはありません

。コミュニケーショ

ンにはつねに文化的な背景や社会の現実が深く関わりますし

、ことばを教えたり学んだ

りする場でも文化や社会を抜きに話を進めることは不可能です

。こういう場面では

、現

Trang 14

007 Q2 社会言語学にはどんなテーマがありますか ?

社会言語学の領域

日本の社会言語学をリードしてきた真田真治は

、日本における社会言語学の領域を次

のように分類しています

。具体的な説明を補いつつ掲げます

漓方法論

⋮研究の手法や手順

、また

、調査の手法

、分析の方法を含めた枠組みの

研究を行う

滷属性とことば

⋮ことばの使用者の属性

︵ た と え ば

、 職 業 や 社 会 階 層 の 違 い

、 年 齢 差

性 差 な ど

とことばの変異の関係を扱う

。隠語や文体差

、集団語なども扱う

言語行動

⋮場面とコード選択の関係

、敬語の運用

、コミュニケーション行動な

、ことばを用いた行動のパターンや原理を探る

潺言語生活

⋮生活環境や生活様式とことばの関係

、また命名などについて扱う

潸言語接触

⋮方言と標準語の関係

、外来語

、二重言語併用など二つ以上のことば

が接触することやそれによる影響を考察する

澁言語変化

⋮各地の方言の共通語化

、新方言やネオ方言の発生

、移住とことばの

変化の関係などを扱う

。 大 阪 大 学 大 学 院 教

。 一 九 四 六 年 富 山 県 生 ま れ

。 日 本 の

社 会 言 語 学

・ 方 言 学 に お け る パ イ オ ニ

ア 的 存 在

★ コ ー ド 選 択 は

、 コ ー ド 切 替

︵ code

︶ を 含 み ま す

。 こ の 場 合 の

コ ー ド と は

、 英 語 と 日 本 語

、 地 元 の 方

言 と 標 準 語

、 丁 寧 な 話 し 方 と く だ け た

話 し 方 な ど

、 広 い 意 味 で の

﹁ こ と ば

﹁ こ と ば 遣 い

﹂ を 指 す と 考 え て お い

て く だ さ い

Trang 15

潛言語計画

⋮ことばの正字法の確定

︵ 国 語 国 字 改 革 な ど

のほか

、言語教育や言語

使用に関わる政策的なことを扱う

こういった社会言語学の枠組みは

、豊富なフィールドワークの経験と日本語に対する

深い洞察をもとに構築されています

。同時に

、欧米の社会言語学の方法を日本に適用し

、新たな知の体系として提示されたものと言えます

右にあげたのは

、九つにやや細かく分けたものでしたが

、もっと大くくりに

﹁方法

﹂言語生活

﹂言語変種

﹂日本語の社会的価値

﹂といった四つのカテゴリーを作っ

、それぞれのカテゴリーで下位分類を行うこともできます

。各カテゴリーごとに説明

を加えてみることにします

漓方法論というカテゴリー

社会言語学という分野を立てる以上

、理論的基盤となる社会言語学の視点と方法をも

たなければなりません

。日本の社会言語学にとって固有の問題

、課題の優先順位

、研究

日 本 語 教 育 な ど も こ こ に 含 ま れ ま す

Trang 16

009 Q2 社会言語学にはどんなテーマがありますか ?

の観点から

、生活の場としての日本の各地の地域的特性と生活のことばの関係について

検討しなければなりません

。たとえば

、伝統的な生活と言語生活

・地域集団と言語の諸

・生活環境がことばに及ぼす影響

・地域の年中行事とことば

・名付けの伝統と考え

・あいさつ

・なりわいとそれに関わる語彙などがそのテーマになるでしょう

。また

言語使用者としての日本人がどういう規範意識をもっているか

、自分たちの方言や他の

方言をどう見ているかといったイメージの問題

、差別語など用いることを忌避する

︵ 忌

避 す べ き

ことばの問題も取り上げなければなりません

。言語行動という点では

、場面に

適した言語

・文体の選択

︵ コ ー ド 選 択

の問題

、敬語の運用論

、コミュニケーションと社

会への関わり方

、社会階層とことばの関係などもテーマにすべきでしょう

澆言語変化というカテゴリー

都市化や社会構造の変化によって生じる言語変化は社会言語学の重要な課題になりま

。共通語化とそれにともなって生じる

﹁新方言

﹂や

﹁ネオ方言

﹂の問題

、移住によっ

て変容することばの問題などがそのテーマとなります

。世代と性差がことばの変異と

なって現れることも社会言語学の一般的な問題です

。たとえば

、ことばに見られる世代

間のギャップ

、男女のことばの違い

、ことばのうえでのジェンダーの扱いなどを考えま

﹂ と は

、 こ の よ う に 使 う べ き

だ と い う お 手 本

﹂ の よ う な も の で す

た い て い の 人 が

、 ど う い う こ と ば 遣 い

﹁ よ り 望 ま し い か

﹂ よ り 妥 当 か

適 切 か

﹂ よ り 価 値 が 高 い か

﹂ を 判 断

す る 基 準 と な る 知 識 を も っ て い ま す

こ れ は

、 規 範 意 識 を 形 成 し ま す

★ 新 方 言

﹂ ネ オ 方 言

﹂ に つ い て は

第 二 章 で 説 明 し ま す

★ 生 物 学 的 な 性 セ ッ ク ス

︶ 対 し て

社 会 的 な 性 を ジ ェ ン ダ ー と 言 い ま す

ジ ェ ン ダ ー を 表 さ な い こ と ば や

、 逆 に

表 す こ と ば や

、 ま た

、 そ の 機 能 と 影 響

を 考 え な け れ ば な り ま せ ん

。 な お

、 文

法 用 語 で は

、 文 法 上 の 性 を ジ ェ ン ダ ー

と 言 い ま す が

、 社 会 言 語 学 で は

、 一 般

社 会 で の 使 い 方 と 同 じ で す

★ 家 族 関 係 な ど に 基 づ く 血 縁

、 近 所

近 隣 の 共 同 体 の な か で の つ な が り に 基

づ く 地 縁 の ほ か に

、 仕 事 や 学 校 な ど 社

会 的 な 活 動 を 行 う な か で 形 成 す る つ な

Trang 17

の関係も考えることができるでしょう

潺日本語の社会的価値というカテゴリー

国際化が進むにつれて

、外国からの移住も見られるようになり

、外国から労働者が多

く日本に働きに来る時代になりました

。また

、海外に長く滞在して帰国する日本人も少

なくありません

。これらの人たちの用いる日本語には

、いわば純粋培養の日本語とは異

なる面が見られるかもしれませんし

、コミュニケーション上の問題に対処する必要があ

るかもしれません

。関連して

、フォリナートーク

、ノンバーバル

・コミュニケーショ

、中間言語

、ピジンとクレオールもテーマとなります

。日本語が世界中の諸言語のな

かでどういう位置づけになっているか

、どのように見られているか

、どういう価値を

もっているかということも重要なテーマです

。また

、あわせて

、日本における日本語の

位置づけ

︵ 国 語 と 日 本 語 の 関 係

、かつての植民地での日本語政策

、海外に移民した日本人

とことばの関係も検討すべきでしょう

。日本だけでなく多くの国や地域で

、国際化の波

、多言語化の波でもあり

、多くの文化や価値観が交錯するという現象でもあります

これが言語に関わるところ

、たとえば

、多言語社会のありかた

、公用語の問題なども当

﹂ ピ ジ ン

﹂ ク

レ オ ー ル

﹂ は

、 第 三 章 で 説 明 し ま す

Trang 18

011 Q3 日本の社会言語学にはどんな特徴がありますか ?

究する人や学ぶ人の目的や立場によって大きく変わりえます

。たとえば

、第二言語習得

や異文化理解といった具体的な目標に向けて社会言語学を応用する場合には

、またそれ

にふさわしい枠組みが必要になります

日本語を外国人に教授するための日本語教育能力検定試験では

、出題の範囲をあらか

じめ示していますが

、そのなかには

、日本語やその教授法に関する知識はもちろん

、日

本文化に関する基礎知識や学習者の心理に関わることまで含められており

、心理言語学

や社会言語学の基礎知識も習得しておくべきものとされています

。出題範囲は現在のと

ころ五つに分けられていますが

、そのうちの一つが

﹁言語と社会

﹂というセクション

、そこには

﹁言語と社会の関係

﹂言語使用と社会

﹂異文化コミュニケーションと社

﹂といった下位区分があります

。ここで出題範囲に含まれているもののほとんどは

これまで述べてきた社会言語学のテーマや対象と重なるものです

Q 3 日 本 の 社 会 言 語 学 に は ど ん な 特 徴 が あ り ま す か

近年の国際情勢を背景にして

、地球的規模からの社会言語学のありかたに注目が集

ホ ー ム ペ ー ジ な ど を ご 覧 く だ さ い

Trang 19

会問題に応えていこうする研究が見受けられます

しかしながら

、歴史的に見ると

、日本の社会言語学は

、欧米の社会言語学とは大きく

違うところから始まりました

。一九四九年から国立国語研究所が

﹁言語生活研究

﹂とし

、大規模な調査を行い

、その成果を報告していますが

、こういった研究が始められた

頃には

、社会言語学

﹂あるいは

﹁言語社会学

﹂とは呼ばれていませんでしたし

、 そも

そも

﹁社会言語学

﹂という学問名も聞かれることがありませんでした

。要するに

、人文

系の多くの学問や分野が

、西欧の研究を輸入する形で始められたのとは大きく異なり

最初から日本国内で始まった研究の蓄積があったのです

。その後

、欧米の社会言語学の

成果や知見を取り入れるようになりましたが

、その時点ですでに社会言語学の研究には

日本独自の知見や方法論が存在していました

。とくに

、言語生活の調査と研究を行って

きた国立国語研究所の

﹁国語の合理化の確実な基礎を築く

﹂という設置目的を考える

、この組織が

﹁日本の社会言語学的問題を解決するための社会言語学研究所であるこ

ということができる

︵ 柴 田 武

﹃ 社 会 言 語 学 の 課 題

としても誇張ではないでしょう

社会言語学には

、社会に実際に存在する具体的な問題に注目し

、その背景を把握し

、 欧 米 の 学

問 を 移 植 す る 形 で 日 本 で は 始 ま っ た の

で す

Trang 20

013 Q3 日本の社会言語学にはどんな特徴がありますか ?

会言語学の本来の存在意義が忘れられていることもあります

アメリカの社会言語学

欧米の社会言語学は

、異なる民族や文化の存在を背景とする社会問題の解決に貢献す

ることを目標としたので

、当初からこの問題に関わる調査と研究に重心がありました

特に一九六

〇年代の後半から一九七

〇年の前半にかけてこの姿勢が強まっていきます

その背景には

、アメリカの黒人問題や女性の社会進出をめぐる大きな社会運動のため

、これまでに注目されることのなかった社会階層の言語変種への関心が大きな学問的

注目を集めたことがあります

。言語変種

、同じ意味や伝達上

の機能を有しながらも

、場面や使用者などの要因によって現れ方が変わってくる言語形

式群

︵ の 一 つ

﹂を意味します

。言語変種という用語は

、単語などのレベルで使うことも

ありますが

、ことばとしての体系全体を指して使うことあります

。特定の言語変種が特

定の社会階層と結びついていることは

、言語だけの問題ではありませんから

、社会の現

実を理解しなければ言語の問題も取り上げられないということになります

。黒人英語の

問題は

、社会におけるマイノリティ言語としての問題でもありました

。イギリス国内の

︶ 言 っ て も

、 変 わ っ

た も の で も 変 わ り 種 で も あ り ま せ ん

バ ラ エ テ ィ

︵ variety

︶ の 訳 語 と し

﹁ 変

﹂ と い う こ と ば を 用 い ま す

Trang 21

言えるでしょう

アメリカで行われた最初の大

がかりな研究としては

、ラボフ

によるものがあげられます

。ラ

ボフは

、社会階層によって母音

のあとの/r/

の発音の有無が異な

ることに注目しました

。ニュー

ヨーク市はもともと母音のあと

の/r/

の発音しない地域でした

、社会階層によってこの/r/

発音されるかどうかが違い

、ま

た社会階層を判断する一つの目

安でもあり

、より威信のある言

い方であることを利用したわけ

は pr

の 訳 語 と し て 用

い て い ま す

。 国 語 辞 典 を 引 い て も

﹁ 威

﹂ は

﹁ 威 光 と 信 望

﹂ な ど と 説 明 さ れ

。 ア

メ リ カ を 代 表 す る 社 会 言 語 学 者

。 主 著

ラボフのニューヨークにおけるデパート調査の結果 (Labov 1996: 49)

Trang 22

015 Q3 日本の社会言語学にはどんな特徴がありますか ?

流階級が行くことの多いデパートのメイシーズ

︵ S Klein

というデパートにおいて

、あらかじめ婦人物の靴が四階で売られているこ

とを確認したうえで

、店員に以下のような質問をしました

調査員

︵ 女 性 用 靴 売 り 場 は ど こ で し ょ う か

店員

︵ 四 階 で す

調査員

︵ す み ま せ ん

店員

︵ 四 階 で す

この調査では店員

が F

というフレーズをふつうの言い方と強勢をつけた言

い方でそれぞれ二回言うので

、/r/

が計四回出現する可能性があります

。その結果

、高

級百貨店サックスでは店員の六十二

%が四個所の/r/

を全部

、あるいは部分的に発音し

ましたが

、メイシーズでは五十一

、クラインはわずか二十一

%しか発音しませんでし

。つまり

、もともと母音のあとの/r/

を発音しない土地柄であったニューヨーク市で

、/r/

を発音することが社会的に威信のある

︵ prestigious

ことだと考えられるようにな

ると

、それが社会階層に対応して発音の有無が変わるということがわかったのです

。こ

り 返 す わ け で す が

、 よ り 強 調 し て 発 音

す る と と も に

、 な る べ く 明 確 に

、 ま

、 正 し い 発 音 を し よ う と 意 識 す る 傾

向 が 強 く な る の で

、 /r/

の 出 現 す る 可

能 性 が 高 く な る と 予 測 さ れ ま す

Trang 23

。ニューヨーク市内部で実際に使用されていることばをかたよりなく捉えるため

、市

全体の人口構成をよく反映していると考えられ

た Lo

地区で

、無作為抽出

︵random sampling

︶による調査が行われました

。インフォーマント選定にあたっては

、 一

つの民族

・性別

・年齢などにかたよらないようにし

、また

、典型的なニューヨーク地域

の地域方言を話す話者を追い求めるのではなく

、市の人口を構成するあらゆるサブグ

ループからまんべんなく調査対象者を選び出しました

この調査では

、car

などの母音のあとの

/r/

、ask

のように語末に

[t/d

]で終わる子音連鎖の

[t/d

]の発音が脱落する

かどうかを調べています

。このうち

、ask

は語末の[t]

を発音しない

と ask

との違いが

なくなってしまい

、[t]

の有無に大きな意味の違いがあります

すが

、不規則な活用を行う動詞で

、[t]

の有無

は ask

の語末子音ほど明確な機能を担っ

ているとは言えません

。また

、testの語末の[t]

は単語

︵ 厳 密 に 言 え ば 一 つ の 形 態 素

の内部

に含まれているもので

、[t]

が単独で何かの意味を担っているとは考えられません

。こ

の三つの語形での[t]

の脱落は

、アメリカの英語話者に共通して見られるのですが

、予

︵ infor

︶ は 言

語 調 査 や 民 俗 調 査 な ど の 資 料 や 情 報 を

提 供 し て く れ る 被 験 者

・ 協 力 者 の こ と

を 指 し ま す

。 た だ し

、 英 語

の infor

に は 密 告 者 の 意 味 も あ る こ と か

、 最 近 で は

、 こ れ を 避 け て

、 単 に

﹁ 協 力 者

﹂ あ る い

は linguistic helper

言 う こ と も あ り ま す

Trang 24

プ ロ グ ラ ム を 使 っ て 分 析 が

行 わ れ る こ と が 多 い よ う で す

、 カ ナ ダ の モ ン ト リ オ ー ル 大

学 で 開 発 さ れ た プ ロ グ ラ ム で

、 い く つ

か の 要 因 に つ い て そ の 関 わ り 具 合 を

い っ ぺ ん に 分 析 で き る 多 変 量 解 析 を 行

う こ と が で き る の で

、 社 会 言 語 学 的 な

分 析 に 広 く 用 い ら れ て い ま す

Q3 日本の社会言語学にはどんな特徴がありますか ?

、こういった調査においては

、単に発音の違いをデータとして集めたのではなく

、あ

らかじめ仮説を立てて

、その仮説が成り立つかどうかを検証するための手段として調査

が行われていることが重要です

松田

︵ 二

、欧米の社会言語学は

、まずなんらかの仮説から出発してそ

れを検証するというスタイルをとります

。その代表であるロジスティック回帰分析で

、まず仮説に基づくモデルを作り

、仮説蝸計算

・分析蝸モデルを変更蝸再び計

・分析蝸モデルを変更蝸再び計算

・分析といった作業を繰り返します

。最終的に

もっとも正確に与えられたデータを予測するモデルにたどり着くことを目指し

、解釈

、主に最終モデルに基づいて行われます

欧米の社会言語学は

、まず仮説を立ててモデルを作り

、その説明モデルの有効性を高

めることを目指しています

。つまりより説得力があり

、応用性があるようにしていくこ

とを目標にしているのです

。それに対して

、日本の社会言語学は

、あらかじめ仮説を考

えることを避け

、データの分布自体から分布を生み出す要因を推測するという手法を

とっています

。データから要因を明らかにするというスタイルをとることが多い点が欧

米の研究と異なります

。これは

、欧米の社会言語学をよく理解する研究者が日本には少

Trang 25

、言語を社会的なコンテキストに依存させずに研究しようとする構造主義

言語学や生成文法に対する批判があったことも重要な点です

。チョムスキーは

、均質

な言語共同体における理想的な言語使用者

﹂がいるものとして

、その言語知識を明らか

にすることを目指しました

。しかし

、実際には

、すべての言語使用者の言語知識は異な

りますから

、均質な言語共同体などは存在しません

。また

、ことばを

﹁完璧に

﹂使いこ

なす人も現実にはいません

。実際には

、むしろ

、不正確な発音や使用

、あるいは

、誤り

が多く見受けられますし

、それが社会の実態であるとともに

、階層や性別や年齢といっ

た社会的要因に左右されていることがわかります

。理論言語学が

、完成度を高めること

、言語の現実から離れていく一方で

、より言語の現実に近づこうとする研究として社

会言語学が発展したと言うことができます

日本の社会言語学

日本では

、初期の社会言語学は

、日本各地の地域語研究を行うフィールド言語学者た

ちのあいだで発展していったと言えます

。その中心となったのは

、かつて国立国語研究

Trang 26

019 Q3 日本の社会言語学にはどんな特徴がありますか ?

の諸相

﹂ などがあり

、日本の社会言語学の関心が

、各地の方言の記述

・言語行動や言

語生活

・敬語などの待遇表現に向かっていたことがわかります

。二人は

、一九九八年に

社会言語科学会という学会が設立されるにあたってその原動力になったのですが

、その

萌芽は二十世紀半ばから精力的に行われてきた研究にあったのです

日本の社会言語学を考えるうえで重要とされる地域語を対象としたフィールド言語学

の流れには

、次のような傾向が認められます

とくに注目すべきなのは第二期と第三期です

。これは

、国立国語研究所の

﹃日本言語

地図

﹄のための調査

・編集を通して多くの研究者が既成の方法にいきづまりを感じた時

期と重なります

日本で社会言語学という名称が正式に用いられるようになったのは

、一九七三年の野

元菊雄と江川清による報告

﹁国立国語研究所の歩み社会言語学

﹂が最初です

。日本の

〇 年 代

記 述 的 研 究

一 九 六

〇 年 代

地 理 的 研 究

一 九 七

〇 年 代

社 会 的 研 究

一 九 八

〇 年 代

計 量 的 研 究

★ い き づ ま り の 原 因 は

、 二 章 で と り

げ る よ う に 近 代 化

・ 都 市 化 に よ っ て 日

本 国 内 の フ ィ ー ル ド が 大 き く 変 化 し た

こ と で し た

。 の ち に 日 本 の 社 会 言 語 学

を 推 進 す る メ ン バ ー の 多 く が こ の プ ロ

ジ ェ ク ト に 関 わ っ た 人 た ち だ っ た の

、 こ の 調 査 の 先 進 性 を 示 し て い ま す

Trang 27

伝統的な方言研究の総括とともに

、その研究領域

、研究方法をめぐっての模索の

はじまった時期であった

。方言

﹂とは相対的な概念であるゆえに

、言語を地理的

変異としてとらえることによってはじめて

﹁方言

﹂の研究が成立する

、とするのが

従来の日本の方言研究の主たる立場である

。しかし

、考えてみれば

、言語を支配す

る環境は何も地理的な側面だけではない

。この立場だけに拘泥していては地域社会

の複雑な言語実態を総合的にとらえることはとうていできない

、といった認識か

、言語の存立に関するあらゆる条件を採り上げうる学が求められたのである

︵ 地 域 言 語 の 社 会 言 語 学 的 研 究

この時期に欧米で大きな学問的発展をとげた社会言語学

︵ sociolingustics

を国立国語研

究所のメンバーが強く意識していたことは間違ありません

。しかし

、彼らの研究には

日本社会に古くから伝承されてきた地域語をもとに

、日本語の分布や史的変遷過程を解

明しようとする方言研究の方法が土台にありました

。それ以前はことばの地理的分布だ

けを調査して記録するものでしたが

、彼らは新たに話し手の社会的属性

︵ 年 齢 や 性 別 や 職

Trang 28

★ こ こ で の

﹁ 理 論 的 な 研 究

﹂ と は

、 社

会 言 語 学 の 基 盤 的

・ 基 礎 的 な 理 論 を 指

し て い ま す

。 生 成 文 法 な ど の 理 論 言 語

学 を 指 し て い る わ け で は あ り ま せ ん

欧 米 の 社 会 言 語 学 も 理 論 言 語 学 と は 出

発 点 が 異 な る た め

、 そ り が 合 わ な い こ

と が 多 い の で す

Q3 日本の社会言語学にはどんな特徴がありますか ?

展した社会言語学を単に輸入することになっていたかもしれません

。しかし

、日本の社

会言語学は

、成果と伝統を踏まえ

、欧米の方法論と成果も参考しながら

、独自に日本社

会に適した社会言語学を構築し直すという方向に進んだのです

もちろん

、その方法論は間接的に洋風の社会言語学の影響を受けていますが

、日本国

内で独自に発達させたものも少なくありません

。データに対する綿密な観察と丁寧な取

り扱い

、また

、記録のための高い技術は

、日本の社会言語学の特筆すべき長所です

。し

かし

、同時に日本の社会言語学は

、理論的な研究に対して閉鎖的であることを認めなけ

ればなりません

集積されたデータに基づいて社会像の真実を映し出すには

、その帰納的な手順を踏む

のは当然のことだと言えるでしょう

。しかし

、それが方法のすべてではありませんし

このやり方のみで明晰な像が結ばれることはありえません

。欧米の社会言語学が

、まず

枠組みや方法論を固めてから演繹的な手順を踏む点は

、方法論としての普遍性をもって

おり

、理論化していく際にもまとめやすいという長所があり

、大いに学ぶべきところで

もあります

。これに対して

、日本の社会言語学は

、データを重視して

、より現実の姿を

正しく

、歪めることなく処理していくために

、方法論にやや職人芸的なところがあると

Trang 29

には多くの困難をともないますし

、そもそも日本において社会言語学がいかにあるべき

かについて確固たるビジョンがなくては進むべき方向も決まらないでしょう

。そういう

意味では

、日本の社会言語学は転換期を迎えているのかもしれません

Q 4 研 究 に 必 要 な デ ー タ の 収 集 は ど の よ う に 行 わ れ ま す か

社会言語学において

、データを収集する方法には大きく分けて二つあります

。一つは

フィールドワークなどの調査による方法

、もう一つがさまざまな既存のデータを利用す

る方法です

。イギリスの人類学者マリノフスキーに代表される研究のように

、調査現地

に長期間滞在して

、目で見て耳で聞き

、臭いをかいで

、肌で感じ

、舌で味わいながら現

地の人々密着し調査をする

﹁参与観察

﹂が重要な調査法の一つになっています

社会言語学の

﹁参与観察

﹂では

、インフォーマントが他の人と話している様子を本人

に隠れてこっそり聞く方法で行う

﹁自然観察法

﹂のほか

、どのような言い方をするかを

直接インフォーマントに尋ねる

﹁質問調査法

﹂を行います

。自然観察法がインフォーマ

会 人 類 学 者

。 機 能 主 義 人 類 学 の 祖 と し

、 フ ァ ー ス な ど ロ ン ド ン 派 の 言 語 学

に 大 き な 影 響 を 与 え た

﹂ と も 呼 ば れ ま す

Trang 30

★ 録 音 機 材 だ け を 用 意 し て

、 イ ン

フ ォ ー マ ン ト に 自 由 に 会 話 を し て も ら

い 記 録 す る 方 法 も あ り ま す

。 こ の 方 法

は 事 前 に 承 諾 を 得 る こ と に な る の で

倫 理 的 問 題 は 生 じ に く い の で す が

、 や

は り 手 に 入 れ た い デ ー タ が 手 に 入 る と

は 限 ら な い 点 が 難 点 で す

Q4 研究に必要なデータの収集はどのように行われますか ?

に記入してもらう方式のほか

、郵便などで調査票の受け渡しを行う

﹁通信調査

﹂ とい

う方法もこれに含まれます

。また

、最近では

、携帯電話のメール機能を用いた調査も行

われるようになってきています

これらの調査法のうち

、自然観察法はもっとも自然な形でデータを収集することが可

能です

。ただし

、調査に時間がかかるうえに

、調査時の発話が調査の対象としている発

話でなかったり目的や意味が違っていたりしても容易にその間違いに気づきにくいと

いった短所があります

。また

、観察を行う場所や状況によっては問題にならないことも

ありますが

、相手に事前に知らせることなく

、発話を聞いたり

、録音したりすれば

、倫

理的な問題が生じる場合もあります

。総じて自然観察法は

、研究テーマが高度化するほ

、多くの無駄が生じてしまいます

限られた時間のなかで

﹁知りたいこと

﹂確認したいこと

﹂に限定して調べるには

直接聞き出す

﹁質問調査法

﹂をとるのが明らかに効率的です

。実際

、必要なデータを集

約しやすいために

、現在はこの方法が一般的になっています

。ただ

、直接質問するの

、質問の仕方によっては

、データが影響を受けることがあります

。また

、回答するイ

ンフォーマントが内省的になってしまい

、自然でないデータになってしまう可能性もあ

Trang 31

調査を計画する

フィールドワークは未知の世界に入ることでもあり

、それじたい魅力的なものです

、その目的と方法を明確にし

、その目的を達成するために十分な準備をしておかない

、実際に現地で調査を行う段になって

、いろいろと不都合が出てきかねません

。その

ためには綿密な計画を立て

、地道に準備をしておく必要があります

。調査にいたるまで

の流れは

、おおよそ以下のようになります

漓調査目的を明確にする

滷調査地域を決定する

澆調査の方法

︵ 質 問 方 法 や 調 査 票 の 形 式 な ど

を決定する

潺調査対象者

= イ ン フ ォ ー マ ン ト

を決定する

潸調査スケジュールを決定する

︵ 調 査 参 加 者

・ 関 係 機 関 と の 連 絡

漓から潸までが固まったら

、調査についての具体的な準備に入ります

蠢調査の役割分担

⋮単独で行うのでない限り

、事前に分担を決めておく必要がありま

と に な り ま す

。 漫 然 と 現 地 に 行 っ て 調

べ る

、 あ る い は

、 と り あ え ず 現 地 に

行 っ て み る

、 と い う 現 地 調 査 は 通 常 や

り ま せ ん

。 現 地 の 状 況 が わ か ら な け れ

、 事 前 に 現 地 を 視 察 す る こ と で

﹁ 予

備 調 査

﹂ を 行 う こ と は あ り ま す が

、 そ

の 場 合 で も

、 必 要 な 情 報 を 事 前 に 明 ら

か に し て か ら 現 地 に 赴 き ま す

Trang 32

025 Q4 研究に必要なデータの収集はどのように行われますか ?

準備しておくといいでしょう

調査機材や調査謝礼の準備

⋮録音や録画のための機材のほか

、現地でデータの入力

も行う場合はパソコンも用意します

。また

、乾電池などの消耗品も十分に用意して

おく必要があります

。調査に協力してくれた方にはお礼のしるしになるものを用意

するのがふつうですが

、協力してもらうことによる負担の大きさなどを考慮したう

えで予算に組み入れておきます

蠶インフォーマントへの連絡調整

⋮協力者の都合を勘案しながら

、調査に参加するメ

ンバーの分担や段取りも考えてスケジュールを決めますが

、協力者のところをいつ

誰が訪ねるかなどを事前に連絡しておく必要があります

﹁調査のしおり

﹂の作製

⋮調査に参加する者にはベテランもいますが初心者もいま

。調査の概要と予定

、注意すべきことなどを簡潔に記したものを準備しておくこ

とで

、現地での混乱を最小限にすることができます

調査票の作り方

社会言語学の調査では

、調査票を用いるのがふつうです

。とくに質問調査では

、調査

、 カ セ ッ ト テ ー プ レ コ ー

ダ ー が 主 流 で し た し

、 今 で も 使 う こ と

は あ り ま す

。 最 近 は

、 デ ー タ の 頭 出 し

が 容 易 だ と い う 理 由 で M D や I C レ

コ ー ダ ー を 使 う こ と が な い わ け で は な

い の で す が

、 こ れ ら で 録 音 す る と

、 特

定 の 周 波 数 帯 が 記 録 さ れ な い た め

、 機

器 に よ る 音 声 分 析 に 適 さ な い デ ー タ に

な っ て し ま い ま す

。 ア ク セ ン ト な ど を

あ と で 自 分 の 耳 で 聞 き 分 け た り

、 試 し

に 記 録 し て い る お い た り す る の に は

M D な ど で も 十 分 で す が

、 ピ ッ チ や

フ ォ ル マ ン ト な ど を 調 べ る 可 能 性 が あ

る の な ら D A T を 利 用 し ま す

。 D A

T と は

、 Digital Audio T

の こ と で

見 か け は カ セ ッ ト テ ー プ に 似 て い ま す

、 高 品 位 の 録 音 が 可 能 で す

。 た だ

、 録 音 機 器 も テ ー プ も 非 常 に 高 価 だ

と い う 難 点 が あ り ま す

★ 調 査 の 予 算 に は 限 り が あ る の で

、 高

価 な お 礼 は 用 意 し ま せ ん

。 筆 記 用 具 や

石 け ん な ど の 日 用 品 で

、 協 力 者 に 使 っ

て も ら え る 廉 価 な も の を 用 意 す る の が

ふ つ う で す

。 海 外 で の 現 地 調 査 で は

拘 束 時 間 を 時 間 給 で 計 算 し て 現 金 で 払

Trang 33

調査票は

、インフォーマントの氏名

・生年月日

・年齢

・性別

・住所

・職業

・出身地

学歴などの個人情報を記入するフェイスシートと

、調査で調べたい項目を連ねた調査項

目の二つの部分から成り立っています

調査項目には

、調査対象に応じて調べたい内容が

、必要かつ十分に配列されていて

目的に応じて

﹁なぞなぞ式

﹂選択式

﹂翻訳式

﹂読み上げ式

﹂などの質問方法を選び

ながら配列されます

なぞなぞ式は語彙や音声を調査するのに適しています

。調査で確認したい方言語形や

方言音を含む語をなぞなぞの答えとなるように質問文を作成するのですが

、質問文が適

切でないと目的とする答えを得られないことも少なくありません

。初心者には予想語形

についての使用の有無やいくつかの予想語形のなかから使用する語形を回答する

﹁選択

﹂が適当かもしれません

。これは

、事前に可能性のある形式を予測して網羅的に選択

肢を準備しなくてはならないので

、調査票の作成は手間がかかりますが

、データの収集

や分析の手間は軽減されます

。選択式は

、日本の言語調査ではもっともポピュラーな方

法です

、 近 年 で は 個 人 情 報 の 管 理 と 公

開 の 観 点 か ら イ ン フ ォ ー マ ン ト に

、 調

査 デ ー タ の 利 用 と 公 開 に つ い て の

﹁ 承

諾 書

﹂ を 含 め る こ と が 多 く な っ て い ま

。 個 人 情 報 保 護 の 法 令 の 遵 守 は 当 然

の こ と で す が

、 継 続 的 に 調 査 を 行 う 際

に は

、 協 力 者 の 信 頼 を 損 な わ な い よ う

に 配 慮 す る こ と が 重 要 で す

Trang 34

027 Q4 研究に必要なデータの収集はどのように行われますか ?

要があります

読み上げ式は

、音声

、とくにアクセントの調査などで用いる方法で

、調査項目をイン

フォーマントに読み上げてもらう方法をとります

。この調査では

、文字や文章を

﹁読

﹂行為をとおして

﹁方言音声

﹂の収集を目的としているため

、できるだけ本来の話し

言葉に近くなるような配慮が必要です

方言はまず話しことばであって書きことばではありませんから

、本来方言を

﹁読んだ

、書いたり

﹂することはないわけです

。仮名などの文字だけでは

、十分に方言の音声

を表現しきれないのがふつうです

。このことは十分に踏まえておかなければなりませ

。読み上げてもらうと

、学校の国語の時間での音読のように標準語ふうの発音になっ

てしまうことが珍しくありませんが

、調査の趣旨を理解してもらって

、必要とするデー

タが収集できるようにしなければならないのです

フィールドワークの実際

富山大学人文学部日本語学研究室で行った

﹁富山県方言の総合研究

﹂を例に

、フィー

ルドワークの実際を一例として紹介することにします

Trang 35

地理的な観点から検討する

滷調査地域

⋮富山県内三百地点

澆調査の方法

⋮現地に出向いて行う臨地面接調査

潺調査対象者

⋮現地

﹁生え抜き

﹂の七十歳以上の人

潸調査スケジュール

⋮調査は一九九九年二月

∼十二月の約十ヶ月間に随時実施する

調査参加者は中井が担当していた富山大学の日本語学演習

、日本語学概論

、教養原

﹁言語と文化

﹂の受講生が実施

。富山県内各市町村の教育委員会に照会し

、その

紹介を受けた話者に調査

準備作業として次のような指示を出しました

蠢調査の役割分担

⋮スケジュール調整

、調査票の印刷

、機材の準備

、消耗品の準備

交通手段の確認

、インフォーマントへの連絡調整などを分担

蠡調査票の作製や印刷

⋮調査票は日本語学演

習︵

授 業

にて検討して作製し

、受講生に

Trang 36

029 Q4 研究に必要なデータの収集はどのように行われますか ?

意:調査をはじめるにあたって

一インフォーマントは

、必ず生え抜きの七十歳以上の人であること

二調査にあたっては

、必ず自分の身分と調査の目的を名乗り

、富山大学の学生で

あることを自覚してください

三調査中は

、絶えずインフォーマントに注意と配慮を払い

、相手によろこんでも

らえるような調査態度をとるようがんばってください

四共に行動する他のメンバーと連絡を密にとること

五その他

漓フェイスシートと調査承諾書は調査終了時に記入

滷調査開始時に

、調査地点

・日時

・氏名をテープのあたまに録音し

、動作確認

をしてから調査を開始すること

澆調査終了後

、調査票

・録音テープの整理を行うこと

以下に掲げるのは

、調査の基本情報を記入するフェイスシートです

Trang 37

030第1章 社会言語学の枠組と方法

Trang 38

以下は

、調査の質問内容を記した調査票です

語彙編盧頭のてっぺんで

、ぐるぐる巻いているものです

。これを何と言いますか

︵ つ む

回答形

予 想 回

答 :

ギ ジ ギ ジ

、 ゲ ジ ゲ ジ

、 ギ リ ギ リ

、 ギ シ ギ シ

、 ギ ス ギ ス

、 ギ ズ ギ ズ

、 ギ ジ マ エ

、 ヅ ギ

ナ カ

、 サ ラ

、 サ ラ マ イ

、 キ ク ザ ラ

盪運動会の

﹁かけっこ

﹂で

、最後を走っている人をどう言いますか

。︵

び り

回答形

予 想 回

答 :

ビ リ

、 ゲ ッ ト

、 ゲ ッ ト ク ソ

、 ゲ ス

、 ゲ ス ッ ポ

、 ゲ ク

、 ゲ ク ソ

、 ケ ツ

、 ゲ シ ッ ポ

ゲ ッ ポ

、 ビ リ ケ ツ

蘯ふくろうの鳴き声はどのようなものですか

。教えてください

回答形

予 想 回

答 :

ホ ー

、 ホ ー ホ ー

、 ノ リ ツ ケ

、 ノ リ ツ ケ ホ ー ホ ー ノ リ ツ ケ ホ ー セ

、 ノ リ ツ ケ ホ ー

Trang 39

回答形

予 想 回

答 :

ク ド イ

、 カ ラ イ

、 シ ョ オ カ ラ イ

、 シ オ ガ ラ イ

、 シ ョ ッ カ ラ イ

、 シ ョ ッ パ イ

眈冬

、軒先に垂れ下がる氷のことを何といいますか

︵ つ ら ら

回答形

予 想 回

答 :

タ ル キ

、 カ ネ コ ロ

、 カ ネ コ リ

、 タ ン タ ル キ

、 カ ネ コ ー リ

、 ツ ラ ラ

語法編

﹁早く起きろ

﹂と言うとき

、起きろ

﹂の部分をどう言いますか

回答形

予 想 回

答 :

オ キ ラ レ

、 オ キ ラ レ ン カ

、 オ キ ラ レ マ

、 オ キ ラ レ ヨ

、 オ キ ヨ

、 オ キ ロ マ

、 オ キ テ マ

﹁雨が降っているから

、出かけたくない

﹂と言うとき

、降っているから

﹂の部分

をどう言いますか

回答形

予 想 回

答 :

フ ッ ト ッ ケ デ

、 フ ッ ト ル サ カ イ ニ

、 フ ッ ト ル サ カ イ

、 フ ッ ト ル サ カ ラ イ

、 フ ッ ト ッ

Trang 40

の接触地域である富山県方言の現状について

、地理的な観点から検討する

﹂ことを調査

目的に掲げています

富山県音声言語地図

・調査票

次のことばを

、ふだんの調子で言ってみてください

︵ 単 純 な 読 み 上 げ に な ら な い よ う に し

て 発 声 し て も ら う

1各地の母音や子音の特徴ならぶにイントネーションを調べる綱目

●あいうえお

︵ 三 回 ず つ

●123456789

︵ ひ ふ み よ い つ む な な や こ こ

●246810

●土をかぶせる

●四国と関西

●獅子舞をみる

●ガスと電気

●窓をあける

●旗をかかげる

●図画と工作

●囲碁と将棋

Ngày đăng: 25/02/2023, 18:22

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