iii はしがきは し が き 日本語の音声と聞いて何を思い浮かべるでしょうか 。歯医者にでもあるような口の中の図や見たこ ともない発音記号 、わけのわからない専門用語など 、覚えることが多そうでちょっと敬遠したくなる かもしれません 。 でも 、音を聞いて 、その聞いた音がどんな音かわかるとステキだと思いませんか 。それはソムリエ がワインを飲んで匂いや色 、味からそ
Trang 2究
社
蘋
Trang 3編者のことば
編 者 の こ と ば
日本語および日本語教育に対する関心の高まりとともに
、日本語のしくみそのものを深く追求しよ
うという試みも
、これまでにも増してさかんに行われるようになりました
。従来の日本語研究は
、ど
ちらかと言えば日本語の歴史に重点が置かれる傾向にありましたし
、現代日本語についても
、英語を
はじめとする欧米の諸言語をもとにして開発された考え方を
、そのまま日本語に当てはめようとする
姿勢が強かったことは否めません
。
しかし最近では
、言語学や情報科学の進展に伴って
、人間が使っていることばとは一体どんな性質
をもつものであって
、そのような性質が日本語という個別の言語にどんな形で現れているのかという
、
一般的な視点からの分析が行われるようになりつつあります
。このような見方は
、日本語の特殊性を
いたずらに強調したり
、逆に欧米の言語だけからことばの一般性を引き出してそれを日本語に対して
無批判に適用したりするという
、人間のことばの本質を無視した方法を鋭く批判するものでもありま
す
。そしてそのことによって
、人間のことばとしての日本語の正体がより鮮明に浮かび上がってくる
ことが期待されるのです
Trang 4iii はしがき
は し が き
日本語の音声と聞いて何を思い浮かべるでしょうか
。歯医者にでもあるような口の中の図や見たこ
ともない発音記号
、わけのわからない専門用語など
、覚えることが多そうでちょっと敬遠したくなる
かもしれません
。
でも
、音を聞いて
、その聞いた音がどんな音かわかるとステキだと思いませんか
。それはソムリエ
がワインを飲んで匂いや色
、味からそのワインがどこの何年のものかを指摘するようなものであり
、
またシェフが料理から使われている材料
、調味料
、調理法を見抜くのに似ています
。ソムリエやシェ
フのように
、聞いた音からその音がどうやって作られたのかを判断するというのはたしかに難しそう
です
。でも
、もしできたらステキだと思いませんか
。
ただ料理と違って
、日本語の音声は普段私たちが無意識に発音しているさまざまな音そのものです
。
それでも
、普段やっていることをきちんと整理していけば
、思ったより簡単に音声のソムリエになれ
るのです
。
本書では日本語の音声に関する興味深いテーマを多く取り上げました
。ただし
、そのおのおのの問
いに
、たんに答えをあげるような薀蓄話にとどめるつもりはありません
。なぜそうなるかを皆さんが
Trang 5はしがき
の代わりのようなものです
。残念ながら本書では実際の発音をお聞かせしたり
、皆さんの発音を聞い
たりすることができません
。でもその代わりに
、かなり詳しく音をどう作るか
、アクセントをどう発
音し分けるかなどを
、皆さんが自分の口を動かしながら試し
、それを通じて発音を観察する耳を養い
ながら
、一歩一歩
︵ 一 舌 一 舌
?
︶
練習できるよう案内しています
。
第一章では音についての基本的な事項を学びます
。とくに
、誰でも知っている五十音図や仮名文字
が
、日本語の音声を考える上で音声記号以上にすばらしいものであることを知ることになるでしょう
。
この章を読み終えれば
、ソムリエがワインの種類を指摘するようにかなりの音について
、聞けばそれ
がどんな音かを指摘することができることでしょう
。
ワインに精通するには実際に飲んでみなければ
、いくら本で種類や知識を学んでも仕方がありませ
ん
。本書でもかなり多くの
﹁やってみましょう
﹂が出てきます
。指示にしたがってぜひ自分でもやっ
てみてください
。頭の中の知識だけでは何にもならないのです
。
第二章から第四章ではその基本的な知識をもとに
、さまざまな音声の現象を観察していきます
。こ
れが終れば日本語のどんな音を聞いても
、慌てずに対処できることでしょう
。
第五章はその音にさらに加えられるアクセントなどについての問題を扱います
。どの料理にどのワ
Trang 6v はしがき
出していることになります
。
本文中で練習を数多く行なっているので
、各章末の練習問題は厳選した少数のものになっています
。
本文の対応個所を読んで
、よく考えれば解答できる内容です
。ソムリエ試験のつもりで挑戦してみて
ください
。念のため巻末に簡単な解答を添えています
。
最後になりましたが
、本書を執筆する機会を与えてくださった名古屋大学の町田健先生と研究社出
版部の佐藤陽二さんに心から御礼申し上げます
。本書の場合
、とくに執筆が遅れたことによって多大
なご迷惑をおかけしたのにもかかわらず
、暖かく励ましてくださったお二人なしにはこの本の完成は
なかったことと思います
。
二
○
○三年四月猪塚元
、猪塚恵美子
Trang 7目次
第 一 章 五 十 音 図 と 仮 名 文
字 ···
001
Q 1 日 本 語 の 発 音 の 単 位 は 仮 名 文 字 で は な い で し ょ う か
?
002
Q 2 指 で 唇 を 左 右 に 引 っ 張 る と
、 ガ ッ キ ュ ウ ブ ン コ
﹂ っ て 言 え な い の は な ぜ で す か
?
006
Q 3
﹁ 母 音
﹂ 子 音
﹂ は あ る の に
﹁ 父 音
﹂ は な ぜ な い の で す か
?
012
Q 4 五 十 音 図 の 順 番 に は 何 か 意 味 が あ る の で す か
?
017
Q 5 濁 音 と 清 音 は 何 が 違 う の で す か
。 半 濁 音 っ て ど っ ち な の で す か
Trang 8vii 目次
第 二 章 音 声 現 象 を 理 解 す
る ···
051
Q 9 な ぜ 拗 音 は
﹁ シ ャ
﹂ の よ う に 二 つ の 文 字 で 表 記 す る の で す か
?
052
Q 10 ジ と ヂ
、 ズ と ヅ を 発 音 し 分 け る こ と が あ り ま す か
?
058
Q 11 仮 名 文 字 を 発 音 記 号 と し て 使 え る っ て 本 当 で す か
?
061
Q 12 結 局
、 日 本 語 に は い く つ の 音 が あ る の で す か
?
072
Q 13 ど ん な 場 合 で も 同 じ 仮 名 の 音 は 同 じ 音 で 発 音 さ れ ま す か
?
075
Q 14 日 本 語 の [e]
と 英 語 の [e]
は 同 じ で す か
?
086
■ 章 末 問 題
092
第 三 章 比 較 し て 考 え る
093
Q 15 英 語 で お 皿 を 頼 ん だ ら パ ン が 来 ま し た
。 何 が 悪 か っ た の で し ょ う か
Trang 9目次
Q 19
﹁ ー
﹂ は カ タ カ ナ に し か あ り ま せ ん が
、 ど う 発 音 す る の で す か
?
123
■ 章 末 問 題
127
第 四 章 発 音 の 変 化 と 変
遷 ···
129
Q 20
﹁ ニ ッ ポ ン チ ャ チ ャ チ ャ
﹂ の 数 え 方 は
、 七 つ
? 五 つ
?
130
Q 21
﹁ 洗 濯 機
﹂ の 発 音 は
﹁ せ ん た っ き
﹂ で い い の で す か
?
133
Q 22
﹁ す み ま せ ん
﹂ は
﹁ す い ま せ ん
﹂ と 発 音 さ れ る こ と が 多 い の で は
?
137
Q 23 外 国 語 が 日 本 語 に 入 る と き
、 特 別 な 規 則 が あ り ま す か
?
143
Q 24 韓 国 の 友 人 が 食 べ に 行 こ う と 言 う
﹁ ヘ ン ボ コ
﹂ と は 何 で す か
?
149
■ 章 末 問 題
Trang 10ix 目次
Q 27
﹁ 男 が
﹂ と
﹁ 桜 が
﹂ で は な ぜ ア ク セ ン ト が 変 わ る の で す か
?
163
Q 28 辞 典 で 数 字 で ア ク セ ン ト が 示 さ れ て い る 場 合 ど う 読 め ば い い の で す か
?
165
Q 29
﹁ パ ン ツ
﹂ は ズ ボ ン で す か
? 下 着 で す か
?
170
Q 30 東 京 と 大 阪 で ア ク セ ン ト が 逆 に な る と い う の は 本 当 で す か
?
173
Q 31
﹁ の こ ぎ り
﹂ の 前 に
﹁ こ の
﹂ を つ け る と ア ク セ ン ト が 変 わ る よ う で す が
?
175
Q 32
﹁ 語 尾 を 上 げ て 読 む な
﹂ は ア ク セ ン ト に 関 す る 注 意 で す か
?
179
■ 章 末 問 題
181
付録
182
さらに勉強したい人のための参考文献
Trang 13第1章 五十音図と仮名文字
Q 1 日 本 語 の 発 音 の 単 位 は 仮 名 文 字 で は な い で し ょ う か
?
﹁しりとり
﹂では
﹁かぶ
﹂蝸
﹁ぶた
﹂蝸
﹁たこ
﹂のように
、最後の一文字を
﹁しり
﹂ と
してゲームを続けていきます
。もし音としての
﹁しり
﹂をとったら
﹁かぶ
﹂蝸
﹁うま
﹂
蝸
﹁あめ
﹂のように
、最初の人以外は
﹁あいうえお
﹂で始まる言葉を選び続けることに
なってゲームにならないでしょう
。
★
逆さことば
、いわゆる回文も
﹁トマト
﹂や
﹁シンブンシ
﹂などの短いものから
﹁軽い
機敏な子猫何匹いるか
﹂などのように長いものも
、文字を逆さにします
。これなら短い
ものなら頭で考えれば作れますし
、長いものも紙に書けば簡単に作ることができるで
しょう
。仮名の単位ならこれでいいとして
、では音を逆さにする場合はどうでしょう
か
。完全に逆さにするには録音して逆回転にするしかありませんが
、逆にした感じを大ま
かにつかみたいだけなら
、ローマ字で表記したものを逆さに読む方法もあります
。東京
あ さ
の地名の
﹁赤坂
﹂は文字で反対にすると
﹁かさかあ
﹂ですが
、ローマ字で
﹄ 角 川 文 庫
︶ り 引
用
。 お も し ろ い 回 文 が た く さ ん の っ て
い ま す
。
Trang 14003 Q1 日本語の発音の単位は仮名文字ではないでしょうか?
仮 名 と い う こ と に な り ま す
。 私 た ち は
、 こ の 日 本 語 に 共 通 す る 意 識 を フ ル に 活 用 し て
﹁ 日 本 語 の 音 声
﹂ に つ い て 考 え て い き ま す
。 そ の 前 に と り あ え ず
、 音 の 基 本 単 位 と し て
意 識 し て い る 五 十 音 図 に 関 す る
、 行
・ 段
・ 清 音
・ 濁 音
・ 拗 音
・ 撥 音
・ 促 音
・ 引 く 音
︵ 長
音
︶
な ど の 仮 名 に 関 す る 基 本 的 な 言 葉 を 復 習 し な が ら 音 声 の 話 を 始 め ま し ょ う
。
表 1
・ 1 に カ タ カ ナ で 五 十 音 図 を 示 し ま す
。 歴 史 的 仮 名 遣 い
︵ 旧 仮 名 遣 い
︶
で 本 来 の
﹁ 五 十
﹂ を 埋 め て い ま す
。
縦 の 五 字 の 組 を
﹁ 行
﹂ と 呼 び
、 先 頭 の 文 字 を と っ て
﹁ ア 行
﹂ カ 行
﹂ の よ う に 呼 ぶ の
で し た
。 ま た
、 横 の 十 字 の 組 を
﹁ 段
﹂ と
呼 び
、 そ れ ぞ れ 先 頭 の 文 字 を と っ
て
﹁ ア
の 段
﹂
﹁ イ の 段
﹂ の よ う に 呼 び ま す
。 こ
れ が 日 本 語 の 仮 名 文 字 の 基 礎 を な し ま
す
。 こ の う ち ワ 行 の
﹁ ヰ ヱ ヲ
﹂ の 文 字 が
違 う の は
、 昔 は
﹁ イ エ オ
﹂ と 音 の 区 別 が
あ っ た か ら で す
。 し か し 現 在 で は
﹁ イ
エ
オ
﹂
と
同
音
に
な
っ
て
、
発
音
は
﹁
オ
﹂
と
同
じ
﹁
ヲ
﹂
が
助
詞
を
表
記
す
る
の
に
残
さ
れ
て
い
る
だ
け
で
す
。
ま
た
﹁
イ
ウ
エ
﹂
は
歴
ア の 段 イ の 段 ウ の 段 エ の 段 オ の 段
ア 行 ア イ ウ エ オ
カ 行 カ キ ク ケ コ
サ 行 サ シ ス セ ソ
タ 行 タ チ ツ テ ト
ナ 行 ナ ニ ヌ ネ ノ
ハ 行 ハ ヒ フ ヘ ホ
マ 行 マ ミ ム メ モ
ヤ
行
ヤ
イ
ユ
エ
ヨ
ラ
行
ラ
リ
ル
レ
ロ
ワ
行
ワ
ヰ
ウ
ヱ
ヲ
表 1・1 五十音図(文字数五十)
Trang 15
第1章 五十音図と仮名文字
史的仮名遣いでも重複します
。傍線の部分が重複して出てくる音です
。
結局
、文字だけで考えれば
﹁イウエ
﹂の重複を除いた四十七文字になります
。これは
﹁伊呂波
︵ イ ロ ハ
︶
四十七文字
﹂と同じです
。
さらに音声的には発音の同じ
﹁ヰヱヲ
﹂を除いて
﹁四十四
﹂ということになります
。
こうすると小学校で習った五十音図になります
。ここで
、ヲ
﹂は表記用で発音上は
﹁ヲ
﹂
﹁オ
﹂であるのに注意してください
。
これ以外にも
、濁点
︵ 濁 音 符
︶
﹁
゛
﹂のついた文字で作られる濁音の
﹁ガ行
﹂ザ行
﹂
﹁ダ行
﹂バ行
﹂があり
、半濁点
︵ 半 濁 音 符
︶
﹁
゜
﹂のついた半濁音の
﹁パ行
﹂もあります
。
さらにそれぞれの行に小さい
﹁ャ
、ュ
、ョ
﹂を伴った
﹁キャキュキョ
﹂ビャビュビョ
﹂
よ お
★
のような
﹁拗音
﹂もあります
。結局
、五十音図は直音の清音だけを並べた表ということ
は お
になります
。さらに学校では撥音
︵ は ね る 音
︶
﹁ン
﹂促音
︵ つ め る 音
︶
﹁ッ
﹂引く音
︵ 長 音
︶
﹁ー
﹂を加えることもあります
。これらの音も入れた拡大された五十音図を書いてみま
す
︵ 表 1
・ 2
︶
。
これらのうち
、発音では
﹁ヲ
﹂は
﹁オ
﹂と同じ
、さらに
﹁ヂ
、ヅ
、ヂャ
、ヂュ
、ヂョ
点
・ 半 濁 点 の つ か な い 仮 名 す べ て を 指
し て い ま す
。 清 音 の 意 味 を 狭 く と れ
ば
、 濁 音 の
﹁ ガ ザ ダ バ
﹂ 行 に 対 応 す る
﹁ カ サ タ ハ
﹂ 行 の み を 指 し ま す
。 直
音
﹂ に つ い て
はp.
の 表 を 参 照 し て く
だ さ い
。
★ 外 来 語 な ど に は こ こ に 使 わ れ て い な
Trang 16005 Q1 日本語の発音の単位は仮名文字ではないでしょうか?
本的な単位となっています
。サッカーは雨で
審判終了へ
﹂はいちおう
﹁五七五
﹂ になって
いますが
、ッ
﹂ー
﹂ン
﹂シュ
﹂リョ
﹂も上
の五十音図表にあった単位はすべて一つに数え
ます
。
直音は一つの文字が一拍に相当しますから
、
文字の数と拍の数は一致します
。しかし拗音で
は原稿用紙に書くときには小さい
﹁ャ
、ュ
、ョ
﹂
も一文字分使いますが
、拍を数えるときは
、小
さく添えられている
﹁ャ
、ュ
、ョ
﹂を含めた大
小二つの文字で一拍になるのに注意しましょう
。
さらに
﹁ン
﹂ッ
﹂ー
﹂も発音すると前の文字
と一緒になっている感じがするかもしれません
が
、拍を数えるときは一つの文字で一つの拍で
★
す
。これらをまとめて特別扱いし
﹁特殊拍
﹂と言うこともあります
拗 音
清 音 ア イ ウ エ オ
カ キ ク ケ コ
キ ャ キ ュ キ ョ
サ シ ス セ ソ
シ ャ シ ュ シ ョ
タ チ ツ テ ト
チ ャ チ ュ チ ョ
ナ ニ ヌ ネ ノ
ニ ャ ニ ュ ニ ョ
ハ ヒ フ ヘ ホ
ヒ ャ ヒ ュ ヒ ョ
マ ミ ム メ モ
ミ ャ ミ ュ ミ ョ
ヤ ユ ヨ
ラ リ ル レ ロ
リ ャ リ ュ リ ョ
ワ ヲ
濁 音 ガ ギ グ ゲ ゴ
ギ ャ ギ ュ ギ ョ
ザ ジ ズ ゼ ゾ
ジ ャ ジ ュ ジ ョ
ダ ヂ ヅ デ ド
ヂ ャ ヂ ュ ヂ ョ
バ ビ ブ ベ ボ
ビ ャ ビ ュ ビ ョ
半 濁 音 パ ピ プ ペ ポ
ピ ャ ピ ュ ピ ョ
ン 撥 音
︶ ツ 促 音
︶ ー 引 く 音
︶
表 1・2 拡大五十音図 (100 音)
-★ 第 二 章 で は こ れ を
﹁ 特 殊 音 素
﹂ と 呼
ん で 説 明 し て い ま す
。
Trang 17第1章 五十音図と仮名文字
キで勝てば
﹁チョコレート
﹂の五拍になるはずですが
、少しでも多く進みたいからか
、
拍ではなく文字数で数えて
﹁チ
・ヨ
・コ
・レ
・イ
・ト
﹂と
、六歩進んでいた覚えがあり
ます
。数えながらなんとなく違和感があったのは
、進む数と拍数が違ったせいでしょ
う
。丁寧に発音すると拍はだいたい同じ時間で発音される傾向があります
。これを
﹁拍
の等時性
﹂と言います
。
ところでここで重要なのは実際使われている文字の種類です
。小さく書かれている点
では違いますが
、ャュョ
﹂は
﹁ヤユヨ
﹂と同じ文字だと考えれば
、ン
、ッ
、ー
﹂を除
けばすべて基本的な五十音図の文字が使われています
。結局これらが日本語の発音の鍵
を握っているのです
。次に
、これらの基本的な五十音図をもとに発音のしくみを探って
いきましょう
。
Q 2 指 で 唇 を 左 右 に 引 っ 張 る と
、 ガ ッ キ ュ ウ ブ ン コ
﹂ っ て 言 え な い
の は な ぜ で す か
Trang 18007 Q2 指で唇を左右に引っ張ると、 「ガッキュウブンコ」って言えないのはなぜですか?
﹁ブ
﹂が含まれているバ行の
﹁バビブベボ
﹂を発音してみましょう
。唇を横に引っ張っ
たままでは
﹁ブ
﹂が
﹁ウ
﹂になったように
、バビブベボ
﹂は
﹁アイウエオ
﹂のように
なってしまいます
。
★
★
馬鹿にしないでぜひ実際にやってみてください
。これから
﹁発音してみましょう
﹂
﹁やってみましょう
﹂がたくさん出てくるので
、これらはぜひ実際にやってみてくださ
い
。というのも
、音声
︵ 学
︶
が親しみにくいという人の多くは
、音声の本を読んでいるうち
にいつのまにか
﹁机上の音声学
﹂音のない音声学
﹂発音記号学
﹂をやっていることが
多いからです
。それを避けるため
、本書では徹底的に自分の口を動かしてもらうように
心がけています
。口を動かし
、その動きがわかってしまえば
、あとは楽です
。なぜな
ら
、もし日本語の音に関して誰かに聞かれたら
、実際に発音して見せればすむからで
す
。自分の口を生きた
﹁音声参考書
﹂にするためにも
、くどいようですが必ず発音して
みてください
。音声について考える際に
、頭
﹂だけ使っても半分しか考えたことにな
らないのです
。残りの半分は
﹁口
﹂を使って考えるからです
。
ところで
、今やってもらった簡単な実験
︵ 遊 び
?
︶
で日本語の音声に関して何かわかっ
方 は
、 家 に 帰 っ て か ら や る こ と を お す
す め し ま す
。 大 の お と な や 若 者 が 口 に
指 を 突 っ 込 ん で 左 右 に 引 っ 張 り
﹁ ア ー
﹂ な ど と 言 っ て い る 光 景 は
、 勉
強 の た め に 大 事 な 実 験 だ と 知 ら な い 人
た ち か ら 見 れ ば
、 ち ょ っ と マ ヌ ケ か も
し れ ま せ ん
。
★ こ の 本 の タ イ ト ル を 本 当 は
﹃ 注 文 の
多 い 日 本 語 音 声 学
﹄ に し よ う か と 思 っ
て い ま し た
。
Trang 19第1章 五十音図と仮名文字
て含まれているということもわかります
。
ではほかに発音できない行があるでしょうか
。同じように唇を引っ張ったまま清音
だけでなく
、濁音
・半濁音の行も混ぜた
﹁アの段
﹂の
﹁アカガサザタダナハバパマヤラ
ワ
﹂を発音してみましょう
。バ
﹂と同じように
﹁マ
﹂パ
﹂が発音できないのがわかり
★
ます
。さらにさきほどバ行を発音したようにマ行とパ行をすべて発音してみると
、マ
ミムメモ
﹂も
﹁パピプペポ
﹂も
﹁アイウエオ
﹂になるでしょう
。
では考えてみましょう
。今度は頭を使います
。唇を引っ張って妨害されるのは唇の動
きです
。これらの音を作るのには唇を動かす必要があります
。たしかに唇を横に強く
引っ張っているのですから
、上下の唇を合わせることはできなくなっています
。
今度は鏡を見ながら
、バ行
・マ行
・パ行をゆっくり発音してみましょう
。それぞれ音
★
の最初の部分で唇が閉じるのがわかるでしょうか
。これらの音を発音するには唇を閉じ
る必要があります
。
次に
﹁ブ
﹂をブーフーウーの長男
︵ 長 豚
?
︶
の
﹁ブー
﹂のように長く伸ばして発音して
みましょう
。まず唇が閉じ
、そして唇が開いて
﹁ブ
﹂と聞こえ
、そのあと開いた口から
、 こ の
﹁ バ パ マ
﹂ が 五 十 音 の
順 で 並 ん で ま と ま っ た 場 所 に あ る と 気
が つ い た 方 は カ ン の 鋭 い 人 で す
。 こ の
こ と は 日 本 語 の 音 声 を つ か む 上 で 非 常
に 重 要 で す
。 詳 し く は
﹁ Q 4 五 十 音
図 の 順 番 に は 何 か 意 味 が あ る の で す
か
?
﹂ を ご 覧 く だ さ い
。
★ も ち ろ ん こ れ は 人 間 が 発 音 し て 作 る
場 合 で す
。 機 械 が 合 成 し て 作 る と き は
人 間 が 出 す 音 と 同 じ よ う に 聞 こ え る 音
を 作 る わ け で す
。
Trang 20009 Q2 指で唇を左右に引っ張ると、 「ガッキュウブンコ」って言えないのはなぜですか?
説明できそうです
。要点をまとめてみましょう
。
1バ行
・マ行
・パ行の行は発音するときに唇を閉じなければならないが
、指で唇
を左右に引っ張ると唇を閉じることができない
。
2
﹁ガッキュウブンコ
﹂には
﹁ブ
﹂の音が含まれている
。
3唇を左右に引っ張って発音すると
、ブ
﹂は唇が閉じられず
﹁ウ
﹂になってし
まう
。
これが大まかな説明ですが
、いちいち
﹁発音するときに唇を閉じなければならない
﹂
などと言うのは面倒です
。この説明を
、音を研究する学問である音声学の用語を使って
簡潔に翻訳してみましょう
。
調音点が両唇である日本語の
﹁ブ
﹂の子音は
、指で唇を左右に引っ張ると唇での
調音ができなくなるので発音できず
、母音の
﹁ウ
﹂だけが発音される
。
ここで使われている音声学の用語には
、子音
﹂や
﹁母音
﹂のように一般的に使われ
ているもの以外に
、調音
﹂調音点
﹂など普段使わない用語もあり
、わかりにくかった
Trang 21第1章 五十音図と仮名文字
語を当たり前のように使っています
。テンプラにする
﹂という調理法を例にしましょ
う
。料理をまったく知らない人に
﹁テンプラにするって
、具体的にどうやるの
?
﹂と聞
かれて説明することを考えてみてください
。
たとえば
﹁材料に衣をつけて油で揚げる
﹂と説明したとしましょう
。これで説明でき
たと安心していると
、料理音痴の人なら
﹁コロモって何
?どうやって作るの
?
﹂と
か
、
﹁焼くのじゃなくって油で揚げるってどうやるの
?
﹂などと質問してくるかもしれ
ません
。こんな人に
﹁テンプラにする
﹂を簡単に説明するなら
、次のようになるでしょ
うか
。水に小麦粉を混ぜて作った衣を材料につける
。それを熱した油の中に材料が完全
★
に浸るように入れ
、加熱する調理法
。
これでも簡略化して書いてあるわけですから
、テンプラ
﹂という言葉の代わりにメ
ニューや料理のレシピにいちいちこう書いていたら大変です
。テンプラにする方法を一
度覚えてしまえば
、私たちはその作業を以後
﹁テンプラにする
﹂のひと言ですませるこ
﹂ 油 の 温 度
﹂ な ど
、
お い し い テ ン プ ラ の 作 り 方 を お 教 え し
た い の は 山 々 で す が
、 こ れ に つ い て は
料 理 の 本 を ご 覧 く だ さ い
。
Trang 22011 Q2 指で唇を左右に引っ張ると、 「ガッキュウブンコ」って言えないのはなぜですか?
率先して使ったほうがむしろもっと楽に説明できる道具になります
。もちろんまだ慣れ
ていなければ専門用語を使わずにわかるような説明でもいいのですが
、意味が一度わ
かってしまえば
、それ以降は専門用語を用いることでかえって簡潔でわかりやすくなる
のです
。
さっそく
﹁ガッキュウブンコ
﹂の発音に関してさきほどやった
﹁実験
﹂を思い出しな
がら音声を観察していきましょう
。
音を作るとき
、口を動かしてさまざまな音を作ることを
﹁調音する
﹂と言います
。料
理することを
﹁調理する
﹂と言うのと同様です
。調音
﹂という言葉は音声ではこのよ
★
うに定義されます
。さっそく使ってみましょう
。
唇を左右に引っ張ったまま
﹁ブ
﹂を調音するとき
、うまく調音できなかったのは
﹁ブ
﹂の中でも最初の部分でした
。ブ
﹂の後ろの部分
﹁ウ
﹂は調音できたわけです
。こ
し い
ぼ い
の
﹁ブ
﹂の最初の調音できなかった部分は
﹁子音
﹂発音できた部分は
﹁母音
﹂と呼ば
れています
。
﹁母音
﹂と
﹁子音
﹂くらい知っているという声が聞こえそうです
。では
、母音と子音
を定義してください
﹂と言われたら
、どのように答えればいいのでしょうか
。たしかに
、 料
理 で い え ば
﹁ こ の よ う な 調 理 法 を 以 下
﹃ テ ン プ ラ に す る
﹄ と 呼 ぶ
﹂ と い っ た
共 通 の 約 束 事 の こ と で す
。
Trang 23第1章 五十音図と仮名文字
さきほどの実験でもわかるように
、ブ
﹂の子音の部分を調音するには上下の唇を合
わせて息を妨害しなければなりません
。音声の中でこのように
﹁息が口の中のどこかで
妨害されて出される音
﹂が
﹁子音
﹂です
。その反対に
﹁息が口の中で妨害を受けずに出
される音
﹂が
﹁母音
﹂になります
。そのために母音は唇の動きに関係なく発音できたわ
けです
。
﹁口の中での呼気
︵ 肺 か ら 吐 く 息
︶
の妨害の有無
﹂が
、子音と母音の音声学的な違いです
。
★
子音は
﹁呼気の妨害のある音
﹂母音は
﹁呼気の妨害のない音
﹂と定義されます
。
私たちが
﹁ブ
﹂を発音するとき
、唇を閉じることによって息を妨害する子音と
、ウ
﹂
という母音を発音しています
。その子音が唇を横に引っ張られると
、子音の発音に必要
な息の妨害が得られないために発音できなかったことがわかります
。
Q 3
﹁ 母 音
﹂ 子 音
﹂ は あ る の に
﹁ 父 音
﹂ は な ぜ な い の で す か
?
Q2で
、口の中での息の妨害の有無
﹂で音を分類して
、呼気の妨害のある音を
﹁子
で す が
、 吸 う 息 を 使 っ た り
、 他 人 の 口
と 近 づ け て 他 人 の 吐 く 息 を 使 っ た り す
る 言 語 も あ り ま す
。 世 界 は 広 し
﹂ で
す ね
。
Trang 24013 Q3 「母音」 「子音」はあるのに「父音」はなぜないのですか?
す
。本によって使われ方に違いはあるのですが
、今でいう
﹁子音
﹂のことを
﹁父音
﹂と
呼んでいることも多いのです
。つまり
、今でいえば子音にあたる
﹁父音
﹂と
﹁母音
﹂と
に分類されていたわけです
。このとき
﹁母音
﹂は
﹁母韻
﹂と書かれていることが多く
、
﹁父音
﹂も時には
﹁父韻
﹂と書かれています
。母音
﹂子音
﹂の
﹁音
﹂は
﹁いん
﹂と読
まれていました
。子音
﹂という用語も
﹁父音
︵ 韻
︶
﹂の代わりに現在と同じ使われ方を
されていたこともありましたから
、現在では
﹁子音
︵ 韻
︶
﹂という用語に統一されたわけ
です
。
ただし
﹁子音
﹂には別の使われ方もありました
。それは表1
・3
﹁父
音︵
韻
︶
﹂と
﹁母音
︵ 韻
︶
﹂が合わさった単位を指す用法です
。すなわ
ち
、さきほど見たような子音と母音が合わさった
﹁ブ
﹂のような音
、
まさに日本の仮名が示す音を指して
﹁子音
﹂と呼ぶ用法です
。この場
合はまさに
﹁父
﹂と
﹁母
﹂の音から
﹁子
﹂の音ができあがっているこ
とになります
。この単位は
﹁熟音
﹂ とも呼ばれていました
。
今日の音声学ではこのような単位を示す用語として
﹁子音
﹂は使わ
れません
。日本語の音声を考える際に拍を基本的な単位として意識し
Trang 25第1章 五十音図と仮名文字
ところで
、子音を調音するには
﹁呼気を妨害する
﹂必要があります
。ガッキュウブ
ンコ
﹂の実験で
、ブ
﹂は
﹁上下の唇を閉じる
﹂ことによって呼気を妨害しているのが
わかりました
。この時の
﹁上下の唇
﹂のように子音の調音に際して呼気を妨害している
ち う ん ん
位置
︵ 場 所
︶
のことを
、調音する場所という意味で
﹁調音点
﹂と呼びます
。調音場所や
調音位置ではなく調音点と呼ぶのは
、この
﹁点
﹂が英語
の point
の訳だからでしょう
。
とくに
﹁ブ
﹂の子音のように上下の唇を妨害場所として使う場合
、調音点は
﹁上唇と下
り う ん
★
唇
﹂と言わずに
﹁両唇
﹂と言います
。これでさきほどの説明
、
調音点が両唇である日本語の
﹁ブ
﹂の子音は
、指で唇を左右に引っ張ると唇での
調音ができなくなるので発音できず
、母音の
﹁ウ
﹂だけが発音される
。
というのが苦もなく理解でき
、用語を使わない説明に比べて
、いかに簡潔に要点をつい
た説明になっているかがわかります
。
ほかの音はどこを使って作っているのでしょうか
。これはなかなか観察するのが難し
いのです
。なぜならば
、残りの音は
、すべて唇より内側の口の中で作られているからで
。
Trang 26015 Q3 「母音」 「子音」はあるのに「父音」はなぜないのですか?
★
ここはひとつ
、実際に口の中に何かを入れて
、調音点を観察してみましょう
。口の中
に指とか箸などを入れて発音してみます
。
○ッキーや
○リッツのような棒状のお菓子な
ら
、あとで食べて始末すればいいので
、ぴったりな上においしい思いができそうです
。
とりあえず棒状のお菓子を口に入れて実験を始めたことにしましょう
。できるだけ奥ま
で水平に入れたいのですが
、奥まで入れすぎると
﹁ゲッ
﹂となるのでほどほどにしま
★
しょう
。
まず
﹁ブ
﹂と発音してみましょう
。唇が閉じるので
、唇のところでお菓子をはさむよ
うになります
。ここが呼気を妨害する場所
、調音点です
。両唇と言いましたね
。
では
、さきほどの実験のように五十音図の
﹁アの段
﹂を濁音
・半濁音も含めて
﹁アカ
ガサザタダナハバパマヤラワ
﹂と順に発音してみましょう
。ゆっくりと丁寧に発音して
みてください
。
﹁ア
﹂は母音ですから
、口に入れたお菓子は舌などに押されないでしょう
。つまり
、
口の中に妨害がない
﹁母音
﹂であることがわかります
。
﹁カ
﹂と
﹁ガ
﹂はどうでしょうか
。じゅうぶん奥まで入れていないと
﹁ア
﹂と同様に
舌などに押されないかもしれませんが
、奥まで入れるとお菓子の先のほう
、口の奥のほ
、 舌 が ど の へ ん に あ る
か な ど わ か る よ う に な り ま す
。
★ 口 内 を 傷 つ け な い よ う に 気 を つ け て
や っ て く だ さ い
。
Trang 27第1章 五十音図と仮名文字
歯の裏から歯茎にかけたあたりで舌先がお菓子に触れるのがわかります
。ここが調音点
です
。
﹁ハ
﹂はお菓子のどこにも舌が触れないようです
。ということは
、ア
﹂と同じように
★母音でしょうか
。もし子音ならば口のもっと奥
、お菓子が届かないところに調音点があ
ることになります
。
﹁パ
﹂バ
﹂マ
﹂はすでに実験ずみです
。唇が閉じるので
、唇のところでお菓子をは
さむようになります
。この調音点を両唇と言うのでした
。パ行
、バ行
、マ行の子音は調
音点から見ると
﹁両唇音
﹂ということになります
。
﹁ヤ
﹂では
、お菓子の中ほどが
﹁カ
﹂や
﹁ガ
﹂よりは前
、サザタダナ
﹂よりは奥の舌
の中ほどで持ち上げられます
。ここが調音点です
。
﹁ラ
﹂はなんとなく当たり方が少し違うと感じるかもしれませんが
、サザタダナ
﹂の
★
ときよりはもっと舌の先のほうが歯茎のあたりでお菓子に触れます
。ここが調音点にな
ります
。
﹁ワ
﹂は人によって判定が難しく
、すごく丁寧に強く発音すると
、人によっては唇が
﹁ ハ
﹂ の
子 音 は
、 妨 害 の な さ か ら
﹁ 母 音 類
﹂ と
す る こ と も あ り ま す
。 た だ 通 常 は 音 の
役 割 の 上 か ら 子 音 と し て 扱 い ま す
。
★ 日 本 学 術 振 興 会 の
﹃ 学 術 用 語 集 言
語 学 編
﹄ で は
﹁ は ぐ き
﹂ と な っ て い ま
す が
、 し け い
﹂ と 読 む の が 通 例 な の
で
、 本 書 で は
﹁ し け い
﹂ と し て お き ま す
。
Trang 28017 Q4 五十音図の順番には何か意味があるのですか?
★
ここで気がつく人も多いでしょうが
、母音の
﹁ア
﹂と
﹁ハ
﹂を別にすれば
、マ
﹂ま
で調音点は五十音図の順に
﹁カガ
﹂サザタダナ
﹂パバマ
﹂とまとまって出てくること
がわかります
。
Q 4 五 十 音 図 の 順 番 に は 何 か 意 味 が あ る の で す か
?
Q3でやった調音点の観察の実験結果を整理してみましょう
。母音の
﹁ア
﹂
と
﹁ハ
﹂
を除いた
﹁マ
﹂までで
、それぞれの拍に含まれる子音の調音点は次のようになります
。
し け
カ
ガ:口の奥
サザタダ
ナ:歯茎
パバ
マ:両唇
調音点が口の奥から前に進んでいくのがわかります
。つまり五十音図の順番はそれぞ
れの拍に含まれる子音の
﹁調音点
﹂の順になります
。残りはどうでしょうか
。
ヤ:口の奥と歯茎のあいだ
ラ:歯茎
ワ:両唇と口の奥
ここでも
﹁ワ
﹂の調音点を両唇と考えれば
、これも口の奥から順に並んでいるといえ
﹂ を 別 扱 い す る こ と に 関 し て は
﹁ Q 5 濁 音 と 清 音 は 何 が 違 う の で す
か
。 半 濁 音 っ て ど っ ち な の で す か
?
﹂
を 見 て く だ さ い
。
Trang 29第1章 五十音図と仮名文字
ところで
、いつまでも
﹁口の奥
﹂などと言っているわけにもいかないので
、ここで調
音点の名前を整理しておきます
。歯茎から後ろ
、いわゆるノドチンコまでの上顎の部分
こ が
は
﹁口蓋
﹂と呼ばれます
。口蓋のうち歯茎から後ろで奥歯のあたりまでの徐々に持ち上
がっていく部分は
、舌などで触れるとツルツルした感触の
、骨がある硬い部分なので
こ こ が
﹁硬口蓋
﹂と呼ばれています
。それより奥のノドチンコまでの骨がなく筋肉で軟らかい
な こ が
こ が す
部分は
﹁軟口蓋
﹂と呼びます
。いわゆるノドチンコのあたりは
﹁口蓋垂
﹂と言います
。
これを使えば
﹁カガ
﹂の調音点は軟口蓋
、ヤ
﹂の調音点は
﹁硬口蓋
﹂ということにな
ります
。付録の図Bで口の中の位置を確認してみてください
。
英語の発音を習ったときのことを思い出してください
。日本語の
﹁ファッション
﹂と
違い
、英語
の fashion
のfは
﹁上の歯を下唇に軽く触れるようにして息を通して発音す
★
る
﹂日本語の
﹁サンキュー
﹂と違って英語
の thank you
のthは
、歯と歯のあいだに舌
先を当て
て︵
入 れ て
︶
息をして発音する
﹂\のように教わったことと思います
。今ではこう
★
いう発音指導で教わったのが
、日本語にない子音の
﹁調音点
﹂だと指摘できるはずで
す
。発音を教えるときに
﹁上の歯を下唇へ
﹂とか
﹁歯と歯のあいだに舌先
﹂あるいは
、 f
を 発 音 す る と き は
﹁ 下 唇 を 上 の 歯 で 思
い 切 り 噛 め
﹂ と か
、 th は
﹁ 歯 と 歯 の あ
い だ か ら ち ゃ ん と ベ ロ を 出 せ
﹂ と 言 わ
れ て 一 生 懸 命 練 習 し た も の で す
。 あ と
で 英 語 圏 の 国 の 人 々 が 話 す の を 見 た
ら
、 歯 を む き 出 し て ギ リ ギ リ と 下 唇 を
噛 ん で い る 人 も
、 を 2 セ ン チ 以 上 も
出 し て い る 人 も い な か っ た の で
、 少 し
控 え め に す る こ と に し ま し た
。 th は 必
ず し も 歯 と 歯 の あ い だ か ら 舌 を 出 さ な
く て も よ い の だ と い う こ と を 音 声 学 を
勉 強 し て 初 め て 知 り ま し た
。 た だ
、 こ
の 発 音 は 英 語 以 外 を 母 国 語 と す る 国 の
人 々 に と っ て は 日 本 人 と 同 様 に 特 異 な
発 音 と 感 じ ら れ る ら し く
、 イ ツ 人 の
学 生 や お と な た ち が 学 校 で 習 っ た と
言 っ て
、 日 本 人 と 同 じ よ う に 盛 大 に 舌
を 歯 と 歯 の あ い だ か ら 出 し て い る の を
目 撃 し ま し た
Trang 30019 Q4 五十音図の順番には何か意味があるのですか?
し し
害する位置であれば調音点は
﹁唇歯
﹂と言い
、わざわざ
﹁上歯
・下唇
﹂と言う必要あり
ません
。というのも
、逆の
﹁下歯
・上唇
﹂という調音のやり方が存在しないからです
。
やってみるとわかりますが
、下歯
・上唇
﹂の調音をしている様子は
、人がサルの顔を
マネしているときの表情になります
。下顎が上顎より下がっている人間にはやりにくい
調音なので
、言語音として採用されていないのでしょう
。調音点を説明する際は
、動か
せない上顎より
、調音の際に積極的に働きかける下顎
︵ 唇 と 舌
︶
を優先します
。この積極
的に働きかけるという観点から
、下顎の部分は調音体とも呼ば
れています
。
★
thのように
﹁歯と舌先
﹂が妨害の位置ならば
﹁歯
﹂と言いま
す
。舌先
・歯
﹂と言うのが正式ですが
、上顎の調音点に対して
積極的に働きかける調音体が舌の場合
、省略することも多いの
でここでもそうしています
。基本的に調音点に対して向かい
合っている舌の部分が使われるので
、言わなくてもわかるから
★
ま じ
です
。舌の細く丸まっている部分を舌先
、その後ろを前舌と
あ じ
後舌の二つの部分に分ければ
、歯や歯茎に対して働きかけるの
、
歯 茎 に 舌 の 根 っ こ の 部 分 を く っ つ け る
の は 常 人 に は 無 理 で す
。 普 通 は 意 識 し
﹁ は
﹂ と 読 み ま す が
、 学 術
用 語 集
﹄ で は
﹁ し
﹂ と な っ て い ま す
。
Trang 31第1章 五十音図と仮名文字
から喉の奥へと並べてみると
、両唇
・唇歯
・歯
・歯茎
・硬口蓋
・軟口蓋
、そしてまだこ
こ が す
この調音点の音は出てきていませんが
、口蓋垂
︵ ノ ド チ ン コ
︶
となります
。それぞれの調
音点を持つ子音を含んだ行のアの拍も添えておきましょう
。英語のf
、v
、thも参考に
添えます
。
これで調音点が変われば別の音を発音しているということがわかりました
。でも調音
点だけでは
﹁カ
﹂と
﹁ガ
﹂などの音の区別はできません
。ほかに何が違っているので
しょうか
。次に仮名文字の表記に使われる記号に注目してみましょう
。
Q 5 濁 音 と 清 音 は 何 が 違 う の で す か
。 半 濁 音 っ て ど っ ち な の で す か
?
せ お だ お
まず清音と濁音という用語を確認しておきましょう
。清音と濁音の区別があるのは清
音
﹁カサタハ
﹂の行だけで
、対応する濁音符
﹁
゛
﹂のついた
﹁ガザダバ
﹂の行がありま
す
。この場合
、清音はカサタハ行
、濁音はガザダバ行ということになります
。
それに対して濁音符
﹁
゛
﹂のついているものが濁音
、つかないものはすべて清音とす
Trang 32021 Q5 濁音と清音は何が違うのですか。半濁音ってどっちなのですか?
がわかります
。ア行の残りの音も同様にやってみてください
。アイウエオ
﹂すべて同
じような振動を手に感じます
。母音はすべてこの振動を伴っています
。
このような振動が起きるためには何かが震えていなければなりません
。この場合
、振
動するものは喉にあり
、振動させているのは息ということになります
。残念ながらそれ
★
以上この振動が何なのかは医学
・生理学的に見ていくしかありませんが
、レントゲンや
ファイバースコープで見た観察結果によると
、このとき震えているのは喉仏のところに
ある
﹁声帯
﹂という器官です
。この声帯は肺からの呼気の通り道である気管からつな
こ と
がった喉仏のところにある
﹁喉頭
﹂の中にあります
。いわゆる耳鼻科の正式名称
﹁耳鼻
い と
咽喉科
﹂の
﹁喉
﹂です
。ちなみに
﹁咽
﹂は
﹁咽頭
﹂と言い
、喉頭の上から口蓋垂
︵ ノ ド
★
チ ン コ
︶
の裏の空間です
。これらのだいたいの位置や声帯の形状は付録の図Aを参考に
してください
。
この声帯の振動は何の役割をしているのでしょうか
。母音は
﹁息の妨害のない音
﹂で
すから
、口を開けてとくに息を妨害せずに出すとすべて母音になってしまいます
。息を
吐くたびに
﹁アイウエオ
﹂では
、うるさくて安心して呼吸もできません
。
縦笛
︵ リ コ ー ダ
︶
を思い出してください
。二つの部分に分かれています
。ピー
﹂という
際 ど う な の か は
、 こ こ で 図 を 示 し て 説
明 し て も ピ ン と こ な い で し ょ う か ら 指
摘 す る に と ど め て お き ま す
。 機 会 が あ
れ ば
、 声 帯 の 様 子 を 映 し た ビ デ オ な ど
で ご 覧 に な っ て く だ さ い
。
★ p
を 参 照 の こ と
。
Trang 33第1章 五十音図と仮名文字
物が振動すれば音が出ます
。声帯が振動しても音が出ます
。母音においてはこの声帯
振動の音が
、笛でいえば基本的な
﹁ピー
﹂という音の役割を果していることになります
。
声帯が振動して出る音を
、音声学で
﹁声
﹂と呼びます
。母音のように声帯が振動して
あ
いる場合は
﹁声が有る
﹂ので
、母音は
﹁声帯の振動の音である声を伴った息で作られて
いる音
﹂であり
、母音は
﹁有声
︵ 音
︶
﹂であると言います
。
では
﹁声
﹂のない音はどんな音でしょうか
。実験してみましょう
。
うるさい子供を静かにさせるつもりで
、シー
!
﹂と言ってみましょう
。ここで注意
してほしいのは
、この
﹁シー
﹂というのはあくまでも実際にこのような場面で出る音を
日本語の仮名で表記したものです
。ですから
﹁シ
ー︵
サ イ ド
︶
﹂などの単語を発音する際
の
﹁シー
﹂とは違います
。実際に
﹁静かにしろ
!
﹂と伝えるつもりで
、喉に手を当てる
のを忘れずに発音してみてください
。今度は手に振動が伝わってきません
。
もうひとつやってみましょう
。ろうそくを吹き消すつもりで
﹁フー
﹂と息を出してみ
てください
。フー
︵ リ ガ ン
︶
﹂の
﹁フー
﹂ではなく
、実際にろうそくを吹き消すように
やってみてください
。今度も
﹁シー
!
﹂と同じように喉に触れた手に振動が伝わってこ
Trang 34023 Q5 濁音と清音は何が違うのですか。半濁音ってどっちなのですか?
今度は喉に手を当てて
﹁シーサイド
﹂のように文字どおり
﹁シー
﹂とできる限りゆっ
くりと丁寧に発音して
、観察してみてください
。比較のために
﹁ジー
﹂でもやってみて
ください
。
﹁シー
﹂は最初に子音があって
、そのあと
﹁イ
﹂の母音を伸ばして発音しています
。
母音の
﹁イ
﹂の部分は有声音ですから
、手に振動が伝わるはずです
。気がつきにくいか
もしれませんが
、シ
﹂の最初の子音の部分
、ちょうど
﹁静かにしろ
!
﹂の
﹁シー
!
﹂と
同じ部分では声帯の振動がないので
、耳に
﹁シ
﹂と聞こえるよりも
、手が声帯の振動を
感じるのが遅れると思います
。比較のために発音した
﹁ジー
﹂ではこの遅れがありませ
ん
。ということは
、シ
﹂と違い
﹁ジ
﹂は最初の子音の部分も声帯の振動を伴う
﹁有声
音
﹂であるということになります
。
日本語は子音だけを単独で発音することが少ないので
、さきほど見たように英語の発
音でも試してみましょう
。fとvの発音の違いです
。
fは上の歯を下唇に軽く触れるようにして息を通す音
、調音点が唇歯の音でした
。喉
に手を当て
、fを伸ばして
﹁f
︱
︱
﹂と発音してみてください
。手に振動が伝わらず
、
﹁無声音
﹂であることが確認できます
Trang 35第1章 五十音図と仮名文字
音が出ていれば
、手に振動の伝わる
﹁有声音
﹂であることがわかります
。
母音は有声音だけでしたが
、子音には
﹁有声音
﹂と
﹁無声音
﹂があることがわかります
。
ではこの区別を日本語で見てみましょう
。ア行を除けば
、それぞれの拍の最初は子
音
、後ろは母音です
。母音に関しては有声音であることがわかっていますから
、それぞ
れの拍の子音の部分の有声
・無声の区別がわかればいいことになります
。
さっそくやってみましょうと言いたいところですが
、残念ながら子音は母音に比べて
短いため
、これ以上の判定を実際に喉に手を当てて一つひとつやっていくのは難しいの
です
。そこで
、五十音図の出番です
。この順番が調音点の順だったくらいですから
、こ
の表記には有声と無声の違いが隠れているはずです
。
もうお気づきだと思いますが
、濁点
﹂をつけると
、その仮名に含まれている無声音
の子音が有声になります
。つまり濁点はその仮名の子音の発音に際して
﹁声帯振動を加
えて有声音として発音しろ
﹂という記号なのです
。
ですから
、清音と濁音の区別がある行
﹁カサタハ
﹂という
﹁清音
﹂の子音は無声音
、
濁音の子音は有声音ということになります
Trang 36025 Q5 濁音と清音は何が違うのですか。半濁音ってどっちなのですか?
では清濁の区別がない行の子音はどうでしょうか
。これらの行には
﹁濁点
﹂がつきま
せんが
、そのことをどう考えるかによって次の二つの可能性があります
。
1濁点がないのだから
﹁カサタハ
﹂の行と同じ無声音である
。
2有声音なので
、これらの行は濁点がつけられない
。
濁点は無声音に声帯振動を加えて有声音として発音しろという符号でした
。もともと
これらの行の子音は有声音であり
、濁点がない状態ですでに声帯は振動しているので
、
さらに濁点をつけて声帯振動を加える指示ができないのです
。正解は2です
。
有声音である母音のア行に濁点がつけられないように
、濁点のつけられない行の子音
は有声音なのです
︵ 表 1
・ 5
︶
。これらの音は通常
、有声音しか使われない音であるため
、
清音と濁音の両方がある必要がないわけです
。
声帯振動の有無によって音の違いを生み出すことを
﹁発声
﹂と言います
。発声は
、お
せ も
おまかにいえば喉頭の中にある声帯の隙間である声門の変化によってもたらされます
。
声門が開いていれば
、空気は声帯を震わすことなく喉頭を素通りし無声音を作ります
。
声門が閉じ
、軽く二枚の声
・ 5 声 帯 振 動 の 有 無 に よ る 清 濁 行 の 区 分 け
Trang 37第1章 五十音図と仮名文字
を伴った有声音が作られるわけです
。
母音の
﹁アイウエオ
﹂にも濁点がつけられませんから
﹁有声音
﹂であることがわかり
ます
。母音は
﹁呼気の妨害のない音
﹂ですから
、もし無声音だったらたんなる息になっ
てしまって音が出ないことでしょう
。
アルファベットにも
、濁点とは異なりますが
、声帯振動の有無を文字が表している例
が見られます
。大文字のPとB
、C
︵
= K の 音
︶
とGを比べてみましょう
。
無声音P蝸P
+
D
︵ 右 下 に つ け る 部 分
︶
=B有声音
無声音C蝸C
+
T
︵ 右 下 に つ け る 部 分
︶
=G有声音
このように無声音のアルファベットに何かがつけ加えられて有声音のアルファベット
ができている場合もあります
。しかし
、もしアルファベットでも濁点が使えたらもっと
簡単に書けますし
、アルファベットの文字数を減らすことができそうです
。
無声音P蝸P
+
゛
﹂
︵ 濁 点
︶
=
″P
︵ 濁 点 付
︶
︵
= B
Trang 38・ 7 ハ 行 と パ 行 の 謎
調 音 点 発 声
パ
︰
両 唇
・ 8 子 音 の 調 音 点 と 清 濁 に よ る 拍 の 分 類
清 濁 の 区 別 あ り
清 濁 の 区 別 な し
清 音 半 濁 音 濁 音
無 声
有 声
有 声
軟 口 蓋 カ
。
この表には
﹁パ
﹂と
﹁ハ
﹂が抜けています
。パ
﹂は調音点が両唇ということがわ
かっていますが
、半濁音ですから
、有声音か無声音かさきほどの決まりからはわかりま
せん
。また清音の
﹁ハ
﹂は濁音
﹁バ
﹂があるので無声音であるこ
とはわかりますが
、調音点はまだ調べていません
。なぜハ行だけ
にこんなことが起こっているのでしょうか
︵ 表 1
・ 7
︶
。
さきほど五十音の順が調音点の順だということに気がついたと
き
、ハ
﹂行だけは仲間はずれになっていました
。もう一度アの段
の拍を子音の調音点別に並べてみましょう
。
表1
・8を見ると
、パ
﹂が
﹁タ
﹂の
﹁横
﹂に入れば都合がいい
Trang 39第1章 五十音図と仮名文字
ことに気がつくでしょう
。つまり
、バ
﹂の清音を
﹁パ
﹂とすればいいのです
。
日本語の歴史をたどると
、このことは事実だったようです
。十六世紀頃の文献に伝え
られるなぞなぞに
﹁母にはふたたび会ひたれど
、父には一度も会はずくちびる
﹂とい
うものがあります
。母
︵ は は
︶
では二度合わさるけれども
、父では合わさらない
﹂のが
﹁くちびる
﹂だといっているわけです
。つまり
、その頃
﹁ハ
﹂の子音は両唇音だったこ
とになります
。今でも沖縄の一部の方言で
﹁花
﹂を
﹁パナ
﹂のように発音する形で残っ
ているように
、古くは
﹁ハ
﹂行を今の
﹁パ
﹂行の音で発音していたと推定されていま
★
す
。その後
、唇が緩み
、完全に塞がずに隙間が開いた発音になりました
。さらに唇を用
いないでたんなる息の音になってしまったのが
、現在の
﹁ハヘホ
﹂などの子音です
。
五十音図で発音を考える際は昔の音を基準にするのが望ましいので
、音声的な五十音
図は
﹁アカサタナパマヤラ
ワ
﹂にして
、これにハ行をあ
とから加えると整合性がとれ
ます
。つまり半濁音の
﹁パ
・ 9
﹁ パ
﹂ を 清 音 と し た 子 音 の 調 音 点 と 清 濁 に よ る 拍 の 分 類
清 濁 の 区 別 あ り
清 濁 の 区 別 な し
清 音
濁 音
★ 唇 音 退 化 と 言 い ま す
。 Q 22
﹁ す み
ま せ ん
﹂ は
﹁ す い ま せ ん
﹂ と 発 音 さ れ
る こ と が 多 い の で は
?
﹂ を 参 照 の こ と
。
Trang 40029 Q5 濁音と清音は何が違うのですか。半濁音ってどっちなのですか?
しょうか
。ゆっくり
﹁ハヒフヘホ
﹂と発音してみましょう
。でき
れば鏡を見ながらやってください
。まっさきに気がつくのは
﹁フ
﹂
を発音するときだけ
、唇が近づき
、バースデーケーキのろうそく
の火を吹き消すときのように唇のあいだから息を出していること
です
。これはまさに
﹁プ
﹂の唇の接触が緩んで
、ほんの少し隙間
が開いた状態です
。そのあいだを息が通るとき
、狭いので息が妨
害されて音が出ています
。ですから
﹁フ
﹂の調音点は
﹁両唇
﹂で
す
。さて残りはどうでしょう
。ハヘホ
﹂など
、寒いとき
、手に息を
かける際は
﹁ハー
﹂感心したときには
﹁ヘー
﹂や
﹁ホー
﹂と言い
ますが
、ただ息が出ているだけのようです
。実際
、たんなる息な
ので口の中には調音点はないのです
。調音点がまったくないので
は子音の定義に反しますから
、通常は息が音になる入り口である
★
声帯の隙間である
﹁声門
﹂が調音点ということになっています
。
﹁ハヘホ
﹂の子音の調音点は
﹁声門
﹂です
。ヒ
﹂はかなり様子
﹁ 声 道
﹂ と 考 え る
場 合 も あ り ま す