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Lí luận biên dịch trong lĩnh vực kỹ thuật phân tích lỗi sai biên dịch của người học tiếng nhật

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ĐẠI HỌC QUỐC GIA HÀ NỘI TRƯỜNG ĐẠI HỌC NGOẠI NGỮ KHOA NGÔN NGỮ VÀ VĂN HÓA PHƯƠNG ĐÔNG KHÓA LUẬN TỐT NGHIỆP LÍ LUẬN BIÊN DỊCH TRONG LĨNH VỰC KỸ THUẬT – PHÂN TÍCH LỖI SAI BIÊN DỊCH CỦA NG

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ĐẠI HỌC QUỐC GIA HÀ NỘI TRƯỜNG ĐẠI HỌC NGOẠI NGỮ KHOA NGÔN NGỮ VÀ VĂN HÓA PHƯƠNG ĐÔNG

KHÓA LUẬN TỐT NGHIỆP

LÍ LUẬN BIÊN DỊCH TRONG LĨNH VỰC KỸ THUẬT – PHÂN TÍCH LỖI SAI BIÊN DỊCH CỦA NGƯỜI HỌC

TIẾNG NHẬT –

Giáo viên hướng dẫn : Trần Thị Minh Phương

Sinh viên thực hiện : Lê Thị Lanh

Khóa : QH2010

HÀ NỘI – NĂM 2014

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序章

1 研究背景・目的

私たちは言語学生として、将来だれでもプロ通訳者や翻訳者などになりたいと思う。グローバル化が進む現代では、言語の架け橋の役割を担当する通訳者及び翻訳者の職業チャンスもだんだん増えている。口頭のメッセージを訳す通訳者とともに、書かれた文章を書いて訳す人である翻訳者の役割も本当に大切である。けれど、通訳は話し言葉を対象として訳すことと違って、翻訳の特長は記述言語がすぐに消える事はなく、翻訳の起点となる言語(起点言語)も目標となる言語(目標言語)も残る。、翻訳者が訳した文章は、読者に何度も読み返されたり、長い間保留される。文学やノンフィクションなどのいわゆる出版翻訳だけではなく、技術翻訳、ニュース翻訳などさまざまな領域がある。本稿では、翻訳とは何か、翻訳に関する概念、それから翻訳の歴史及び社会での翻訳者の役割を研究したい。

一方で、翻訳の領域の中では、技術翻訳も大きな分野で、特に、最近ベトナムに進出する日系企業の多くはITを初めとしたテクニカル分野の企業である。オフショア開発における重要な条件の1つとして日本語によるコミュニケーション能力が挙げられる。それで、日本語学生達の将来のテクニカル分野で働く機会も多いだろう。専門的業界なので、専門的な言葉も多く、文章を訳し書く技術もいろいろ特長がある。それで、本研修を通じて、テクニカル分野での文章の留意点を研修したい。

そして、未経験の学生達がよく間違うポイントを分析して、改善提案を出す。本研究を通して、自分自身がいろいろ知識を身に付け、将来の仕事に活かすようにしたい。

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2 研究の対象

本稿は、翻訳理論及びテクニカル分野での翻訳をその研究対象とする。 翻訳理論については、「翻訳の定義」と「3種類の翻訳」及び「グローバリゼーションと翻訳」を研修する。また、翻訳の歴史及び種類と翻訳者の役割についても研修する。通訳理論は本稿の対象としない。

テクニカル分野での翻訳については、テクニカル文章の特徴及び翻訳の留意点を明らかにする。

3 研究方法と構成

本研究では4章で構成される。

第1章においては、翻訳の定義及び3種類の「翻訳」とグローバリゼーションと翻訳を述べる。

第2章においては、世界及び日本の翻訳歴史を明らかにすることとともに、翻訳の種類及び翻訳者の役割なども述べる。

第3章においては、テクニカル分野の文章の特徴を考察した上で、読みやすく、誤解させないように訳し書くための留意点を述べる。

第 4 章においては、実際に学生たちがテクニカル分野の文書をどのように訳すかを調査し、調査を分析することを通じて、翻訳者になるために必要な練習の方法を提案する。

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第 1 章 翻訳とは?

1.1 翻訳通訳と異文化コミュニケーション

1.1.1 翻訳とは何か

「翻訳」とは、一般的には「ある言語テキストを別の言語に移し換える」ことで、訳すという行為や過程を示すこともあれば、訳出物や作品をしめすこともある。英語では "translation" になる。

日本語で「翻訳」と言えば普通は、文字で書かれた文章を訳すことを意味する。しかし、英語の "translation" は、書き言葉と話し言葉の両方の訳出を意味するので、「思考や考えを一つの言語から別の言語へ移転することであり、その言葉が書かれたものか話された物かの形態は問わない」と言う定義もある。つまり日本語でいう「翻訳」は、英語の "translation" と完全に同じ意味ではないので、ここに言語を訳すことの難しさがあるわけである。

もっとも英語であっても、"translation" が書き言葉の訳出だけを指すこともあり、その場合は「ある言語で書かれたテキストを翻訳者が別の言語で書かれたテキストに変換すること」であるので、日本語の「翻訳」と同じ意味になる。同じ言葉であっても、コンテキストによって異なる意味で使われることがある、という点も翻訳を複雑な行為にしている。

1.1.2 異文化コミュニケーションとしての翻訳

「訳す」とは、「他の言語や文化において既に存在するメッセージと、類似した意味や効果をもつメッセージを産出すること」と説明できる。

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「文化コンテキスト」は、伝統や信条など言葉に埋め込まれている文化的要素を指す。そのような複雑なコンテキストの中で、行われるコミュニケーションを訳すのが普通であり翻訳なのである。つまり、翻訳にせよ通訳にせよ、言葉だけでなく、その言葉を支えている目に見えない「文化」も訳すのである。 では、「文化」とは何であろうか。もっとも古い定義によれば、文化とは「知識、信仰、芸術、道徳、法律、習慣、その他、社会の構成員としての人間によって習得されたすべての能力や習慣の複合総体」である。その他にも

「後天的.歴史的に形成された明示的および明示的な生活様式の体系」「人間が自らを守るために作り出し、周囲の自然環境と人間との間に位置させたものが文化であり、地理的な隔絶と歴史的な変化が特定のパターンをもった個別文化を作り出す」などの種々の定義がある。

「異文化コミュニケーション」という用語をつくったホールは、「文化とはコミュニケーションであり、コミュニケーションは文化である」と述べている。言葉を変えれば「私たちが何を話、どのように話すかは、私たちが暮らしてきた分かによって概ね決まる」ということになる。

文化は氷山にたとえて説明されることもある。海面から出ている部分は目に見える分かで、この部分を理解することは可能であるが、面倒なのは水面下に隠れている文化である。価値観や信条や規範などは見えないところか自分でも気づかないのであるが、コミュニケーションには、そのような深層の文化が大きく影響してくる。

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そのため、翻訳者は隠れた分かも考慮に入れながら、異なる文化と言語との間の橋渡しをすることになる。通訳は言語を訳しているように見えていながら、言語に潜む文化も「訳す」ことを余儀なくされるという大前提を理解する必要がある。翻訳者はまさに異文化コミュニケーションの最前線にいる存在であり、通訳と翻訳の問題は文化コミュニケーションの問題そのものなのである。

1.2 3 種類の「翻訳」

1.2.1「翻訳の定義」

私たちはふだん、翻訳されたコンテキストや翻訳をする行為なのを表す際に「翻訳」という語を作っている。考えるまでもなく、英語で書かれた文章を日本語に移し替えるなど、異なる言語の間での言葉の置き換えが「翻訳」に決まっていると認識している法が多いかもしれない。たしかにそういった行為

は 「 翻 訳 」 で あ る が 、 「 翻 訳 」 と は そ れ だ け で あ ろ う か 。 言 語 学 者 のJakobson.R は、翻訳には3種類あると定義し、それぞれを「言語内翻訳」「言語間翻訳」「記号法間翻訳」と読んでいる。Jakobson.R による「翻訳」の定義を学ぶことから、「翻訳」とは一体何であるか改めて考えろう。

1.2.2 言語内翻訳

Jakobson.R が示した1種類目の「翻訳」は、「言語内翻訳(intralingual translation)」である。言語内の翻訳というのはつまり、ある言語で書かれた語や文書を、同じ言語の中で、別の表現を用いて表すことである。Jakobson.R は、この行為は「言い換え」であると説明する。医師による専門用語にあふれる論文を一般の読者が読んで分かるようにやさしい言葉を用いたり、説明を加えたりしながら、書き換えることは、言語内翻訳の一例である。こういったことを

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私たちは日常的に行っている。例えば読んでいる本に「隘路」という言葉を見つけて意味が分からなかった時に、辞書をひいたり誰かに訪ねたりして、語の横に「細かくて歩きにくい道」と書き込むことも言語内翻訳の結果である。

1.2.3 言語間翻訳

2種類目の「翻訳」は「言語間翻訳 (interlingual translation)」と呼ばれる物である。異なる言語と言語の間で行われる「翻訳」であり、一般に「翻訳」といえばこの種のものを指すことが多いである。地球上にはさまざまな言語があるため、膨大な数の言語と言語の組み合わせを作り得る。日本語の小説を読み、フランス語で著すことや、ポルトガル語の歌詞を日本語で表現する事など、例をあげれば切りがない。それほどまでに、私たちの身のまわりには言語間翻訳があふれており、私たちの生活を支えている。また言語間翻訳は、プロの翻訳者によって行われることが多いが、専門家ではない学生も外国語学習の際などに行っている。外国語の文章を読み、日本語に翻訳し理解を深めたり、テストで外国語の文を日本語にするように指示する問題に挑戦したことがあるはずである。

起点テキストの意味を解釈し、目標言語において適切な訳語を選ぶことは単純なように思われるかもしれないが、実は大変難しい作業である。各言語間において語の意味はつねに一対一の対応をしているわけではないため、起点テキストの語の意味を適切に、もれなく異言語によって表すことは簡単な行為とはならないのだある。例えば、英語の "rice" という語はどのように日本語に言語間翻訳できるでしょうか。日本語において「米」「飯」、そして、「稲」の各語が指すものは別のものであるが、英語では "rice" という語が「米」も

「飯」っも「稲」も意味し得る。よって、"rice" を日本語に翻訳する際には、

「米」か「飯」か、あるいは「稲」という少なくとも三つの選択肢が考えられ

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る。従って言語間翻訳をする際には機械的に語を置き換えることはできず、前後の文脈を含めて "rice" などの語や、その語が含まれたメッセージ全体を解釈し、それを目標言語において表現する必要がある。

1.2.4 記号法間翻訳

最後の「翻訳」は、「記号法間翻訳 (intersemiotic translation)」と呼ばれる種類である。異なる記号の間の「移し換え」、つまり言語体系を別の記号の記号で解釈し表すことが、この3種類目の「翻訳」である。言語というのは記号体系の一つ種であり、言語以外にも、音楽や映画、絵画のような造形芸術や踊りなどの記号体系が存在している。例えば、詩という言語記号による芸術がある。一編の詩を読み、その内容を油絵によって表現することは、言語から絵画への記号法間翻訳となる。他にも小説を読み、その内容をピアノを弾いて表すことも一種の記号法間翻訳である。

1.2.5 翻訳学における「翻訳」

3種類の翻訳のうち、伝統的に翻訳研究の対象となってきたのは言語間翻訳である。異なる言語を用いる人たちの間のコミュニケーションを成り立たせるための言語間翻訳は、歴史を通し重要な役目をもし、またさまざまな問題も伴うため、多くの研究がなされている。しかし研究対象は言語間翻訳に限定されるわけではない。例えばローカリゼーションにおいてはアメリカで書かれた英語の文章をピボット言語としての英語の文章に言語内翻訳し、そのあとに各言語へと言語間翻訳としていくことが行われる。このような翻訳現象を扱う際には、言語内翻訳も考察対象となるのである。

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1.3 声と文字

1.3.1 「声の文化」と「文字の文化」

通訳と翻訳が言葉を介した実践である以上、言葉の声としての特徴、あるいは文字としての特徴について考える観点は不可欠であろう。

Ong.W.J は、その著書『声の文化と文字の文化』で、言葉の「声」としての特徴とそのような言葉の特徴の中心として作られる文化を「オラリティ」

(orality, 声の文化/声としての言葉)、一方、文字の獲得し、それを使いこ

な す 能 力 、 そ し て そ の 能 力 を 基 盤 と し て 発 展 し た 文 化 を 「 リ テ ラ シ ー 」(literacy, 文字の文化/文字を読み書きする能力)という用語で表し、両者の間には、コミュニケーションのしかただけでなく、根本的な思考のあり方や言語表現の違いがあることを論じた。Ong.W.J は、文字をもたず、またく書くことと無縁の文化を、「一次的な(primary)」声の文化とし、現代のようにテレビやラジオなど、電子メディアの出現によってもたらされた新たな文化を「二次

的な (secondary)」声の文化と呼び区分した。書くことの技術が、一次的な声の文化から文字の文化への移行をもたらし、さらにこの書くことから印刷技術が生まれ、現在の二次的な声の文化へといたり、人間の文化や思考を大きく変えてきたと言う。

文字をもたない声だけの文化では、話し手と聞き手が同じ時間と空間

(コンテキスト)を共有しているが、そこでの声や語りを文字として記録し残すことをしない。したがって、そのような文化では、記憶しやすいように韻やリズムを整えたり、反復表現や決まり切った言い回しを繰り返すと言う反復的で共同的な思考形式が発達した。

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「文字の文化」では、文字によって記録することが可能となるため、声の文化のように話し手と聞き手(あるいは書き手と読み手)が同じ時間と空間を共有していなくも、その語りを伝える術がある。その結果、言い換えや言葉を駆使した内省的で分析的な思考が発達したと言う。

1.3.2 声と文字の相互作用性

文字の文化においては、文字として記録するためには、声を聞き取り、それを書き取り、さらに書き写す作業が必要である。西洋で 15 世禄の活版印刷技術が普及する以前は、声は知の拠点である修道院でもっぱら筆写され、写本という形で人間の手に書かれ、読まれる時は音読された。その意味で文字と声は相互に響き会うものだった。その後、活版印刷技術に大量複製が可能となることによって、書く、読むという行為は声から徐々に切り離され、さらに

「書かれたもの(テキスト)」はそれだけで存在しているものとして捉えられるようになっていく。Ong.W.J の提起した電子メデイアの登場による第二次の声の文化は、その意味で文字の文化で切り離されていた声の文化の復権と言えるものである。

一見、「文字の文化」では声と文字は別々のもののように見えるかもしれません。しかし、上記でみてきたようにもともとこの二つは決して対いつするものではなく両者はともに深く関わりあっているのである。

通訳者は、基本的に「今.ここ」で発せられた声を基盤としている。したがって、そこにいる人々は声を取り巻くコンテクストを共有している。それに対し、翻訳は、通常「文字で書かれたもの」に対象とし、時間的地理的制約を超えた営みとなる。しかし、ここで忘れられがちなのは、そのような「書かれ

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「声」とつながっている。それは通訳も翻訳も、元々言葉を介した実践だからである。声を聞いて解釈し、それを別の言葉で発する通訳同様、「読む」「語る」という翻訳もまた、異なる言葉との出会い、解釈なのである。

1.3.3 翻訳における「声と文字」の探求

通訳者は「今.ここ」の発話者の声にひたすら耳を傾ける。しかし、文字に慣れた文化では、話し手はよく書かれたように話す。一方、多くの翻訳者は、翻訳とは、原著をよみながら、現著者の声に耳をひたすら傾けることだと語っている。ここでは話すように書かれたものもたくさんある。文字の書き手である現著者と読み手である翻訳者、そして翻訳テキストの書き手である翻訳者と読み手である読者のそれぞれにとっての「今.ここ」は異なる。ということは、翻訳する、読むという行為は、その行為が行われる「今.ここ」で、文字を通してその文字が核みこまれた時と場所で発せられた声との対話を繰り返す過程で新たなテキストが紬がれていくことと言える。音声と書記性はたしかに通訳と翻訳をそれぞれおもに特徴づけるものであり、そうした親点からの研究の深まりも期待される。しかし同時に声と文字は相互に反響し合うものであり、その意味で通訳も翻訳も両者の特徴をあわせもつという親点がその複雑な実践を考察するうえで必要だというないであろうか。

1.4 グローバリゼーションと翻訳

1.4.1 グローバリゼーションと現代社会

私たちが今生きている時代と社会を表す言葉として、「グローバリゼーション (globalization)」という語が幅広い分野で使用されている。今でこそ当たり前のように使われている語であるが、実はそれが日常的に使用されるよう

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になるのは比較的最近で、1990 年代以降のことである。では、グローバリゼーションとは何を意味しているのであろうか。社会学者の Giddens はこの語を

「世界規模の社会関係が強まっていくこと」と定義している。つまり、国境を越え、遠く隔たった地域間で、人、もの、情報、サービスが自由に行き来するようになり、地球規模で政治や経済、金融面での関係が緊密になるとともに、時とびとの移動によってさまざまな地域で多文化共生や多言語使用という直接的な社会的関係が強化されている状況を指している。実際、毎日のニュースでも伝えられるように、世界経済や国際金融情勢が日本経済に直接影響を与えたり、インターネットを介していることをみても、グローバリゼーションは現代の私たちの生活と切り離させない。

1.4.2 翻訳の拡大.多様化

グローバリゼーションの進展は、異なる言語や文化間を横断する過程でもあり、その意味で、翻訳の役割も拡大、多様化している。しかしながら、グローバリゼーションにおける言語の問題、そしてそれに関わる翻訳の重要性については、ほとんど顧みられてこなかった。みなさんは、外国の文学作品の翻訳以外でも、日常的な多くの活動に翻訳が関わっていることに気をとめてみたことがあるであろうか。異文化に触れ、異文化を理解する上で文学の翻訳ももちろん大切であるが、実はグローバリゼーションを支えているのは、むしろ科学や技術、政治、行政、法律、制度、経済活動などに関わる翻訳である。 たとえば、新しい科学技術の発見を地球規模で共有しようとする場合、

EU でやり取りされる膨大な文書を全加盟国の公用語に翻訳する場合、各国間で交わされる外交文書や多国籍企業間の契約文書を作成する場合、世界中に流通するさまざまな製品のマニュアルを現地の人々も読めるようその地の言葉に翻訳する場合、さらには従来型のテレビや新聞といったメデイアだけでなくイ

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ンターネットなど新しいメデイアによって発信される情報をさまざまな言語で読めるようにするためにも翻訳が必要である。

一方、日本でも外国から日本への留学や来訪、居住が増え、国や自治体の情報の発信、企業での非日本語母語話者の受け入れ、教育や医療面での支援などで、日本語から外国語への翻訳が必要とされている。

他方で近年は、翻訳メモリーや機械翻訳のテクノロジーの発展によって、翻訳という実践や翻訳者に求められる条件や役割も変化してきている。このように、翻訳を取り巻く環境は、グローバリゼーションの中で大きく変化している。

1.4.3 他言語共生と翻訳の重要性

ここで、ぜひ皆さんに考えていただきたいのは、現実のグローバリゼーション社会では、決してどの国、どの文化、どの言語も平等な力を持っているわけではないことである。つまり、現在のグローバル社会では、政治的、経済的に圧倒的に優位にある欧米先進諸国、中でもアメリカ、そして英語が大きな力と影響力をもっている点である。だれもが英語で話せれば、異なる文化の障壁が取り除かれ、人々の相互理解が容易になると考える人もいるかもしれません。しかし、英語の圧倒的な優位性を当然のものとして受け入れる事は、大きな問題を孕んでいるのである。なぜなら、英語を母語話者とする人々には最初から優位な地位や利益が与えられるのに対し非英語母語話者は不利な状況におかれ、英語が話せないことで差別や偏見の対象となったり、自らの言語を使用する権利を奪われたりしかねないからである。言葉と文化が深く結びついている以上、自らの言語を話せないことは、文化の喪失をもたらす危険性もある。

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一つの国や地域、たとえば日本の中に目を向けてみても、日本政府の推進する「グローバル人材の育成であることをみればわかるように、英語至上主義が闊歩している。そのような考えは、英語と日本語の関係の不均衡性を固定化するだけでなく、さらには日本における言語間の不平等性を助長し、地域に根差した方言、日本に住む外国人の母語、またろう者の手話言語などに対する不寛容ともつながる。

多文化.多言語共生を目指すならば言語間の不均衡な関係性を問い直していく視点が不可欠である。このように考えてみると、文化と言語の平等と多様性の確保にいかに翻訳という実践が重要であるか分かるであろう。翻訳という営みは、人々が異なる分野や異なる言語の存在を認識し、異なる他者をどう理解し、彼らとどう「共に」生きて行くかを自ら考える機会となるのである。そして翻訳者は、互いの言語.文化を知らない者同士の仲介者、懸け橋として大きな役割を担うのである。

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2.1.1.2 Luther によるドイツ語翻訳

ドイツの宗教改革者として著名な Luther は新薬聖書(1522)旧約聖書

(1534)をドイツ語に翻訳した。それまでのドイツの聖書翻訳の伝統は、起点テキストと目標テキストの単語を対応させる逐語訳を目指すものであったが、Luther は明瞭なドイツ語に翻訳することを重要視した。当時、ドイツ語への翻訳はラテン語訳を起点テキストとする重訳によって行われていた。しかしLuther は、そうではなく、ギリシャ語やヘブライ語の原典から翻訳をし、聖職者が重視していたラテン誤訳聖書の表現や語順に影響を受けないドイツ誤訳を生み出そうとしたのである。

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Luther の翻訳は神学者ら知識人のためではなく、一般の民衆のためのものであった。もし逐語訳をすると、起点言語に影響を受ける事から読みにくい目標テキストになってしまう。Luther は起点言語に影響を受けた不自然なドイツ語ではなく、同時代の市井の人々が用いていた地域方言の表現法を優先して、わかりやすい言葉を用いるようにした。ドイツの一般民衆のために、人々が生活の中で用いている言葉で聖書を読めるようにしたのである。Luther の訳した聖書は多くの人に読まれたことから影響力をもち、その後のドイツ語の基礎となった。

2.1.1.3 Rosenzweig によるドイツ語翻訳

時は進んで 20 世紀において、ユダヤ系哲学者の Rosenzweig と Buber は共同で旧約聖書をドイツ語に翻訳した。Rosenzweig は、Luther 訳は古くて忠実さに欠けるためため、一新させる必要があると考えました。二人の訳した聖書は、ドイツにおける聖書の規範であった Luther 訳とは異なり、人々に馴染みのない言葉を用いることから、聖書を活気づかせるものであった。すらすらと自然に読めてしまうと、原典は遠い昔に、遠い場所で、ヘブライ語によって書かれているものであることを読み手が意識しづらいであるが、遠和感のある文章であれば、原典の異質性を表せると考え、二人はヘブライ語風のドイツ語訳を目指したのである。例えば、起点言語であるヘブライ語の固有名詞の音を保持しようと人名を音訳し、その一見の言葉を忠実に再現することを目指す翻訳においては、ドイツ度.文化の習慣から外れることも辞さなかったのである。

2.1.1.4 Nida による「形式的等価」と「動的等価」

言語学者でありアメリカ聖書協会員として聖書翻訳に携わった Nida.E は、現代の翻訳理論家としても知られている。聖書翻訳を通し Nida は2種類の

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「等価」について考え、理論として発表した。起点テキストと目標テキスト間の対応関係を「形式的等価(formal equivalence)」と「動的等価(dynamic equivalence)」という用語をもって表している。形式的等価は、起点テキストにあるメッセージそのものに注目した考え方で、起点テキストの構想を重視した対応関係を意味する。例えば起点テキストにおいて用いられた語や表現、語順などを、目標テキストにおいて再現すると形式的等価がもたらされた翻訳となる。

もう一方の動的等価は目標テキスト読者を重要視し、受容者の期待に会わせた自然な表現を目指した訳出によってもたらされる。動的等価が達成された翻訳は、起点テキストと起点テキスト読者の間の関係と目標テキストと目標テキスト読者の間の関係を同じものにする。つまり、起点テキストの読者が理解し、感じ、イメージしたのと同じように、目標テキストは自然に読めなくてはならない。例えば感情や性格の中心的要素を表す際に、英語においては

“heart”(心、心臓)が用いられても、非西欧の言葉に翻訳する際には、各言語において感情や性格の中心を意味する “liver”(肝)、“abdomen”(腹)、

“gall”(胆のう)にあたる語を用いるとされる。

Nida の概念を用いて上述した二組の聖書翻訳について論じれば、Luther一訳は動的等価を目指し、Rosenzweig、Buber 一訳は形式的等価を目指すものであったといえる。Nida 自身は動的等価を重視していた。宗教家であったNida は布教のためには各地域において、翻訳した聖書が自然によまれ、理解され、受け入れられることが必要だと考えたのである。

2.1.2 中国翻訳史と仏典翻訳

2.1.2.1 中国の翻訳史

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中国における翻訳の歴史は、仏典の漢訳から始まる。中国ではこれまでに4度にわたる翻訳高揚期があった。それは、後漢から宋の時代に行われた仏典翻訳、明朝末期から清朝初期の科学技術翻訳、アヘン戦争以降から五四運動までの西洋学の翻訳、1978 年以降から現在にいたる中国改革開放時代以降の翻訳、の四つを指す。

中国の文学作家であり翻訳者でもある銭鍾書は、「仏典の漢語翻訳が始まったことで、中国に翻訳理論が誕生し、数千年後に西洋の翻訳者が直面することになった問題を当時から提起した」と指摘した。このように、仏典漢訳が行われた当時から古代中国では、意訳と直訳の問題や受容化と異質化にあたる問題などが議論されている。

2.1.2.2 仏典翻訳

「仏典」とはインドに生誕した釈迦が説いた教えのことを指す。釈迦が生きていたごろ、その教えは口伝、いわゆる口述で伝達され、兄子が暗記して心に核むものとされていた。現在する仏典は、兄子が口述で暗記していたものを、釈迦の死後になって文字に書起した記録である。

西暦 148 年の後漢末期時代、安世高により梵語の仏典が初めて漢語に訳された事が仏典漢訳の最初だと言われている。仏典漢訳は、その中心的存在の訳経僧が誰であったか、翻訳の傾向生、社会的コンテキストなどから、草創期

(148-316)、発展期(317-617)、全盛期(618−906)、終結期(954-1111)の四つの時期に分けられる。

草創期においては、外国人の僧によって漢訳が行われたことにより、起点言語であるサンスクリット語やバーリ語の口伝表現が内容重視、質実な文体に漢訳された。このような文体への訳出を「質訳」と中国では呼ぶ。

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仏典翻訳草創期の中国における為政者は、異国から伝わった仏教を必ずしも歓迎してはいなかった。仏教やそれを広める僧の存在が民衆に受け入れられることで、新たな勢力が生まれ、結果として為政者の地位が危うくなることを危惧していたと見られる。そのため、この時代では、統治者からの迫害を防ぐため、統治の社会ですでに受け入れられていた道教や儒教の概念、もしくは母語である漢語を応用し、翻訳を行ったとされている。

その後この発展期は仏教社会に徐々に受け入れられ、統治者の庇護も受けた時代であった。統治者が翻訳の場を設け、翻訳活動に参加する僧を募り選択し、仏典翻訳に従事させた。

発展期の中心経僧としては釈道安(314-385)、そして鳩摩羅什(クマラージヴィ:344-413)があげられる。道安は、仏典の漢訳を行ううえで規範となる「五失本、三不易」を主張した。五失本とは、梵語の仏典を漢訳する際に原文の形を失うことになる五つの事例、三不易とは原文の意味を伝えるために変えてはならない三つの要素のことを指す。

これは後に、道安の招きで長安入った鳩摩羅什は、全盛期に活躍した玄奘(600-664)と並び、二大訳経僧としてあげられる人物であるが、羅什は上述した質訳とは反対に、目標言語の典雅(文雅)さを重視しつつ、一般比とに分かりやすく受け入れやすい漢訳を行った。

その後、全盛期に入り、仏典翻訳は時の統治者の手厚い庇護を受け、さらに盛んになって行った。この時代に活躍した訳僧の代表としてげんそう

(557-610)と玄奘があげられる。玄奘は通称三蔵法師と呼ばれ、仏教原典を求め西域に赴き、大量の原典を携えて帰国、持ち帰った教典を 19 年の歳月をかけて翻訳した訳経僧である。玄奘は、親密的なものや概念自体が存在しない

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もの、とくに大切な仏教用語は、無理に漢訳せずに音訳するべきだあると主張し、そえまで儒教.道教などの用語を用いて漢訳されていた仏教用語を足正した。

2.1.2.3 仏典翻訳からみる中国翻訳の傾向

統治の訳経僧の翻訳は、庶民に仏教の根づく土台がない時代は主に直訳法で翻訳が行われ、その後、訳文が難解で、民衆に受け入れがたいとわかると、受け入れられやすい、漢語の言語習慣に寄り添った意訳法が行われた。翻訳の原則は、その時代の必要性と翻訳された仏典の受け手の反応に左右される形で、さまざまな論が生まれ、時には質派(原文.内容重視)そしてある時は文派

(訳文.文体重視)へと変化を続けていった。このことから、現代の翻訳を取り巻く直訳と意訳の問題、起点言語重視か目標言語重視か、という議論は西洋と同じく古代中国においてすでになされていたことが分かる。

その後、中国における仏典翻訳は、釈迦の意をいかに正しく伝えて行くかを強調しつつ、民衆によりわかりやすく伝えて行くことに重点が置かれ、最終的に「文雅な文体且つ教えを誤りなく伝える翻訳」という理想を目指すようになっていったのである。

2.2 日本の翻訳史

2.2.1 翻訳と明治の近代化①:近代化学の発展と翻訳

2.2.1.1 身斤な近代科学用語

19 世記、江戸時代後期にかけて、日本では膨大な量の西洋文献が翻訳され、それが日本の近代化に大きな役割を果たした。それは、西洋の法律、政治、経済、地理、歴史、思想、哲学、文学、美術から科学技術、医学、物理学、科

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近代諸科学の分野そのものを表す言葉をはじめ、私のすぐ身の周りにある「権利」「責任」「自由」「社会」『近代」「個人」「存在」「主観」「客観」などの用語としての「重力」「焦点」など近代諸科学の基礎となる語彙や概念も、この時代、翻訳のために漢語から借用したり、漢字を組み合わせてつくった造語や合成語だと聞けば皆さんは驚くであろう。

2.2.1.2 近代国家への道のりと翻訳

この時代に、なぜこれだけ精力的な翻訳が行われたかというと、それは何よりも必要であったからである。同時に、翻訳する能力がすでに培われていたからだと言われている。17 世紀半は、江戸幕府による鎖国令によって、日本では、外国との接触は中国とオランダに限定され、長崎の出島を通してのみ可能となった。たしかに、この時代、普通の人々が直接外国の文化や人と接する機会はほとんどなかった。しかし、外国についての情報が必ずしも乏しかったわけではない。

幕府はその内容を濃いかいこそしなかったが、長崎のオランダ商館を通して海外情報を得ていた。また新井白石の『西洋記聞』(1715)は、宣教師シドッ千を尋問した時に得た西洋事情を記したものであるが、密かに写本によって出周り、19 世紀はじめにはその内容が広く流布することになった。その間の18世紀前半には、中国語訳の西洋の文献が輸入されるように蘭学が興り、翻訳は、医学や、天文学、航海術などを中心に発展した。

1853 年、ペリー艦隊の黒船来航により、西洋列強が直接てきな脅威として日本の目の前に現れる。19 世紀の欧米諸国は、帝国主義の時代にあり海外への進出を続けていた。この脅威に対し、幕府は西洋についての情報入手を急務として、また明治維新後、明治政府は何よりも西洋と同等の近代国家確立を

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目指し、西洋諸制度を手本として導入するため国をあげ翻訳に取り組むことになった。

2.2.1.3 蘭学から洋学へ

もちろん、必要性だけでは当時行われたような膨大、かつ広範な翻訳は不可能だったといえるであろう。当時の蘭学は翻訳の学問といわれ、その翻訳の大変さは杉田玄白『蘭学事始』(1815)にも記録されているが、蘭学を通して明治初期までの約 100 年間に、医学を中心とした自然科学専門用語が増大、定着していった。それだけでなく、漢語の造語力を活用した翻訳技術が幕末から明治にかけての膨大な翻訳を遂行する基盤を提供することになった。明治維新を迎えると、西洋の書籍の輸入も可能となり、蘭学から徐々に英語、フランス語、ドイツ語などを介した洋学者たちであり、彼らはオランダ語の習得方法にならってこれらの言語を学んだ。こうした洋学者の中に、福沢論吉もいた。福沢が欧米に渡航した時の見聞をもとに欧米の歴史や地理の教本を抄訳したのが『西洋事情』(1866-1870)である。その初編は当時ベストセラーとなった。西洋科学系の用語にはこれまでに蓄積された蘭学者の訳語が借用されたが、人文社会科学系の西洋の新しい概念の翻訳は困難を極めた。その困難を乗り越えさせたのは、何よりも福沢をはじめとする当時の洋学者たちの情勢、使命感だったといえるであろう。ただし、翻訳の目的が「世界」の理解ではなく、もっぱら「西洋」の理解にあり、アジアへの視点を欠いていたことは、日本の近代化と翻訳を考えるうえで忘れてはならない点であろう。

2.2.1.4 文明開化と翻訳

福沢は、翻訳の目的を西洋近代国家を範として日本国民を一日も早く

「文明開化の間に」導くことだとしている。それは、日本の一般の人々を啓蒙

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することを目指したものであった。また福沢は翻訳では、できるだけ難しい漢字や漢字の使用を避け、平易な文章を心がけ、一字一句にこだわらず原文の意味を伝えようとしたといっている。これが、専門家を読者として想定し漢文で書かれた『解体新書』など蘭学の多くの対照的な点である。

明治初期に文明開化を目指して新たに翻訳導入された用語については、しばしばもともとの西洋の概念や現代の私たちの日常感覚とのずれが指摘されている。この点はさらなる検証が必要であるが、現在私たちが享受している近代科学の基礎は、幕末から明治にかけての翻訳を通した西洋文明理解と国民の啓蒙という目的のための飽くなき努力のうえに築かれたものなのである。

2.2.2 翻訳と明治の近代化②:欧文脈

2.2.2.1 欧文訓読

明治期には日本の社会に様々な変化があった中で、言語にも変革が起こった。翻訳を通じて英語などの西欧の言語から影響を受け、日本語がかわっていったのである。日本では古くから漢字を訓読する方法をとっていたが、この訓読の伝統は漢字だけではなくポルトガル語などの欧文を読む際にも使われた。英語の学習が盛んになると、英語の文章を読むためにも訓読法は用いられ、語学書の中で用いられた英語を訓読した文本は、やがて翻訳作品や一般の創作文学で用いられる日本語の文体に影響を与えるようになった。

まず漢字訓読について少し確認しておく。8世紀頃から、漢字、漢籍を読む際には、中国語の発音や日本語の漢字音読みによる音読をするのではなく、訓読する方法がとられてきた。外国語の単語それぞれに訳語を付し、さらにヲコト点をそえて文節化し、語順を示すため返り点をつけ、下記下して直訳の文

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をつくる方もいるかもしれないが、上に述べた通り、過去にはこの読み方を英文や他の欧文に対しても行っていた。

欧文の訓読はおよそ 1549 年から 1640 年頃とされるキリシタン時代に始まった。その頃にはラテン語やポルトガル語の宗教書の翻訳に、訓読が用いられるようになっていた。さらに蘭学の時代になると、訓読はオランダ語の書物を読むうえでも用いられ、19世紀半ば頃にはオランダ語の文法を訓読法によって解説する文法書が書かれた。その後英学の時代が始まると、英語学習用の語学書の中で、やはり訓読法が採用され、各英単語に訓読が振られ、数字によって返り点を示す方法が多く取られていた。

2.2.2.2 欧文直訳体

1語ずつに訳語を当て、それを返り点の順に並べ替える読み方は、一語一語を対応させて訳した文体を作り出す。よって英文訓読の書き下し文は英語の表現法が移入された日本語の文体となる。『ウィルソン氏第一リードル独案内』から引用したうち上段の例を考えてみる。英語の文にある"has" に対応する語として「モツ」を当てた事から、この例文を書き下し文にすると、「ヲヲジカニハ ツノガ アル」のような訳文にはならず「ヲヲジカニハ ツノガ アル」という英語の表現を活かした文になる。

このような語学書を発端とし、英語や他の欧文を日本語に翻訳する際にも書き下し文が使われるようになった。翻訳に用いられた書き下し文は「欧文直訳体」と呼ばれる。欧文直訳体は、起点テキストに対して高い逐悟性をもつ訳文体であり、可能な限り起点テキストの形式に類似させた翻訳が行われた結果である。この文体は、起点テキストの内容だけではなく、表現の仕方や語の用い方など形式面も重要視する翻訳作品において使われた。またそのような翻

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訳書や語学書を読んだ作家らが、欧文の表現形式や発送法を真似て、自身の日本語による作品で欧文直訳体のような文体を用いることもあった。このようにして日本語の文書の中に「欧文脈」が発生したのである。

2.2.2.3 欧文脈の発生

「欧文脈」とは、英語を中心とした西洋の言語の表現形式や文法から影響を受けた日本語の語の用法や文章法であり、日本語の慣用表現とは異なる。英語やほかの西欧語の表現法が、日本語の中に取り入れられたものなのである。欧文脈の形式の具体例の一つに、無生物主語の表現がある。英語では無生物主語が動作主となる表現は多く使われる。一例をあげると、“Her intelligence made her succeed.”という文は“her intelligence”(彼女の知性)という無生物主語

が“made her succeed”(彼女を成功させた)という行為を行ったこととして据えられている。この文を欧文直訳体を用いて日本語に翻訳すると、「彼女の知性は彼女を成功させた」となる。このおうな「知性」という抽象的なものが何かを行ったという表現は、明治の人々にとって新鮮であり、新しい表現法を求めていた人たちによって使われるようになった。そして現在でも、このような表現は少し文学的な雰囲気を持ちながら、日本語の中で使用されている。

これはほんの一例であり、明治期には翻訳を通して日本語の中にその他にも新しい表現が取り入れられた。一時の流行ではなく、日本語を変化させていったことは、私たちが現在用いる日本語の中に上述したような欧文脈が当たり前のものとして存在していることから分かる。はじめは異質性をもっていた、つまり日本語の表現の慣用から外れていた表現も、使用されていく中で日本語の表現として馴深み、日本語の一部となっていったのである。

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2.2.3 東京裁判

2.2.3.1 東京裁判における通訳の特徴

東京裁判は第二次世界大戦中の日本政府.軍部指導者を戦争犯罪人として裁く国際裁判として 1946 年5月に開廷し、1948年11月に開廷した。同裁判では複数の言語が使用され、通訳なしでは運営が成立しなかった。日本語.英語間の通訳が継続的に提供されたほか、必要に応じて、フランス語、ロシア語、中国語、オランダ語、モンゴル語などの通訳者が登場し、英語やロシア語を軸語としたリレー通訳も行われた。東京裁判における通訳の大きな特徴は、日本人が通訳を担当し、日系米人がモニターとして通訳をチェックし、自う2層構造が存在した事である。同裁判を実質的に運営したのは米国の占領軍であったが、有能な米国籍の通訳者が十分に確保できず、財戦国である日本の政府関係及び民間人に通訳を頼らざるを得ない状況があった。

2.2.3.2 証拠文書と判決分の翻訳

裁判所憲章に従い、証拠として提出された文書はすべて英語あるいは日本語に翻訳された。合計230名の翻訳者が3万ページにも及ぶ膨大な量の文書を翻訳した。米軍が派遣した日系二世米人の翻訳者だけではなく、多くの日本人が翻訳チームに参加し、判決文の翻訳では9名の米人二世と26名の日本人の翻訳者が30万語の文書を3ヶ月かけて翻訳した。

2.3 社会における翻訳及び翻訳の種類

2.3.1 翻訳者の役割

2.3.1.1 翻訳者の役割

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翻訳者の役割とは、起点言語から目標言語のテキストに変換することである。これは通訳と同じであるが、翻訳の場合は書記言語つまり書かれた言葉を訳す。書記言語は、通訳が対象とする話し言葉とは違って、すぐに消えることはなく、起点言語も目標言語も残る。翻訳者に課せられている役割で通訳者と根本的に異なる点は、読者が目標テキストを何度も読み返すような状況を想定し、翻訳を行うということであろう。

起点言語から目標言語にテキストを変換するという行為をもう少し考えてみよう。翻訳者の役割とは、起点言語で書かれた「内容」を読者に目標言語で伝えることだと言われる。しかし、「内容を読者に伝える」といっても、一筋縄にはいきません。翻訳は、異なる言葉的な置き換えだけでなく、起点と目標の二つの言語に関わる文化的な要素.テキストの種類、翻訳の目的など、様々な要素を考慮する必要がある、具体例を考えてみよう。

2.3.1.2 内容を読者に伝える事の複雑さ

ある広告のキャッチコピーに、“resolutionary”という単語が使われていた。これは、“resolution”(画面の解像度)と“revolutionary”(革命的)とを組み合わせた造語であある。新型タブレット端末機器が「解像度が鮮明で画面が美しく革命的な技術進化である。」という意味であるが、広告などのであるから造語のイメージも読者に伝えたいところである。ここで、翻訳者の役割が問われる。とのような翻訳にすべきかという判断は、何のために翻訳するかという目的、どのような分野の翻訳か、テキストの種類、翻訳規範といった多くの要素に基づいて決定される。上の例が、文学分野で小説という種類であれば、訳文に注釈をつけて説明することが可能であろう。技術翻訳の分野なら英語のままにするかもしれない。しかし広告分野のキャッチコピーという種類の翻訳なら、注釈を加えたり英語のままにするわけにはいかない。読者に訴えかけられるよ

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うな分かりやすい日本語に翻訳する必要がある。この事例は最終的に「目に見えて革命的」と訳された。広告であることを考えれば、人目をひくわかりやすいフレーズという翻訳の目的は達成されたといえる。このように「内容を読者に伝える」ために、さまざまな条件を勘案して翻訳の話題を解決するのが、翻訳者の中心的な役割である。

2.3.1.3 産業翻訳者の役割

翻訳者の役割を考える際にさけて通れないのは分野の違いである。文学の翻訳と産業/技術翻訳では、翻訳者の役割が相当に異なる。情報技術分野では、用語集や文体の手引きが翻訳者に支給されることも珍しくない。これらは翻訳上の規則集のようなもので、たとえば [Fax] の訳語は「ファクス」が正しく「ファックス」という記載は誤りという指示が書かれている。こういう条件下では、独創的な翻訳が受け入れられるわけではなく、できるだけルールに従った訳出をすることあ翻訳者の評価につながる。

さらに翻訳料金、納期などの要素も役割のうちである。英日翻訳者は1

日 2000 ワード翻訳できるといわれるが、4500 ワードをこなせる翻訳者もいる。急ぎの顧客にとっては、速度の速い翻訳者への満足度は高くなる。以上のような状況を包括的に理解し、つねに顧客の要求にあった翻訳を提供することが産業翻訳者の役割になる。

2.3.1.4 更新される言語、異質化

翻訳者には、目標文化.言語に新しい概念や変化を与えるという役割もある。明治期には、翻訳によって新しい概念が紹介され日本語も影響を受けた。例として、人物を表す「彼女」「彼」という代名詞は、当時の日本語の言語習慣からは違和感があった。しかし文学作品の翻訳で使われているうちに日本語

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として取り入れられるようになり、結果的に、翻訳の文体が日本語そのものを変化させる契機となったと考えられる。

文化の違いへの認識を高めることを目的に、原文の異質性をあえて前面に出すような翻訳方略もある。「異質化」は、読みやすさを犠牲にしてでも原文の異質性を残して訳すという考えである。目標言語の社会に変化や気づきを促そうとすることも、翻訳者の役割の一つと考えられる。

2.3.1.5 これからの翻訳者の役割

このような翻訳者の役割も、産業翻訳の分野では機械翻訳の台頭により変化している。機械翻訳の性能が飛躍的に向上し、人間の翻訳者は、機械翻訳を修正する「ポストエディター」に役割が移りつつある。翻訳者がゼロから翻訳するのではなく、機械に翻訳させたものを見直す「校正者」のような役割へと変わってきているのである。これは、翻訳が楽になるという技術的な利点だけではなく、そもそも「翻訳者」の役割とは何かのか、編集者や校正者との違いは何なのか、という問いかけでもあるのである。

2.3.2 翻訳者の倫理規定

職務倫理規定とは、職務において適切な行動をするための指針である。専門職の職能団体が倫理規定を設け、それに従うことを構成員に求めるのは、職務の質を維持し、会社的な信用を得て、専門職としての地位を守るためといえる。世界の翻訳者団体の多くも倫理規定を決めており、構成員が規定をまもるように研修や啓蒙活動を行っている。翻訳者の倫理規定といってもさまざまで、地域や分野によって含まれる項目が異なる場合や、同じ項目でも異なる指針が示されることがある。「正確性」や「中立性」がその例である。その一方で、「守秘義務」はほとんどすべての本や翻訳者倫理規定に共通する項目であ

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る。守秘義務については、翻訳者を対象とした倫理規定で、口頭・手話・文書、また会議・司法・医療を問わず必ず含まれるのが守秘義務である。これは、翻訳の義務上知り得た情報は他に漏らしてはならないというものである。しかし、顧客が同意したり、情報提出を法的に求められたりした場合は例外扱いするという規定をもつ団体もある。訳の「正確性」は翻訳者の倫理規定に当然含まれるべきだとかんがえる人がいるかもしれない。実際、多くの倫理規定には「正確性」が含まれておる。さらに、職務上関わるコミニュケーションの参加者に対して公平.中立であること、また参加者の誰とも利益の衝突がないことを、翻訳者に求める倫理規定は少なくない。

2.3.3 翻訳者の透明性

翻訳者については透明性に焦点を絞り考えてみよう。通訳者の場合は訳した言葉を受容する人に自身の声を聞かれ、姿を見られることもあるが、翻訳者は多くの場合、訳した言葉を受容する人に顔や声を見聞きされることはない。この違いから、翻訳者本人が自身を透明とみなすかどうか以前に、目標テキストの読み手にとって翻訳者は透明なのではないか、言い換えると翻訳者の存在や職業は充分に確認されていないのではないかという点を考える事が必要となる。

翻訳者がどんなに工夫を凝らし、個性的な訳し方をしても、翻訳者の名前が目標テキストと一緒に記載されていなければ、読み手は誰が訳したか分からないし、それが翻訳されたテキストだと気づくことさえないかもしれない。例えばコンピュータのマニュアルは翻訳文であることが多いのであるが、読む際に、そらが翻訳者によって訳されたものだと強く意識する人はそれほどいないであろう。見えない(透明な不可視の)存在となっている、つまり制限にその存在が認識されていない翻訳者が数多くいるのである。そのように現実的に

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見えないと言う意外に、翻訳者が介入して読みやすい訳文にすればするほど読者には翻訳者の存在が見えなくなる、というパラドックスもある。

2.3.4 翻訳とテクノロジー

2.3.4.1 ローカリゼーション

ローカリゼーションとは、もともと貿易業者や宣教師が自分たちの製品や書籍を現地で広めるために翻訳して現地化してきた活動を指していたが、現代のローカリゼーションはデジタルコンテンツの翻訳を意味することもあるし、ソフトウェアやウェブサイトなどの製品を外国市場で販売する際に、その地域の言語や文化に製品を適合させることも意味する。今日、ローカリゼーションの概念が再生された背景には、コンピュータなどテクノロジーの普及によって大量のデジタル素材が世界各地で扱われるようになった状況がある。

1980年代半ばから90年代にかけて、米国の大手ソフトウェアメーカーは、ワープロ、表計算ソフト、OS(オペレーションシステム)など基本ソフトの新たな市場獲得を目指して、ソフトウェアの他言語化に努めていた。米国以外の地域での製品販売を行うために、それぞれの言語に翻訳することが必要だったのである。

しかし当初のローカリゼーションは困難を極めた。初期のソフトウェアは、翻訳対象となる文字列を膨大なデータからいちいち抜き出しては、翻訳後に元に戻すという作業が必要で、これには多大な費用と時間を要した。そこで作業のコスト削減のために生まれたのが、次に説明するインターナショナリゼーション(国際化)という概念であり、別項目で詳しく解説する翻訳のリサイクルである。

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ローカリゼーションの分野で使われる国際化という概念は、一般的に使われる国際化という言葉とはまったく意味が違う。ローカリゼーション工程を簡単にして効率化するためのソフトウェアの設計をさすのである。どういうことか具体的に説明すると、初期のソフトウェアでは翻訳をするための文字列を選び出す作業だけでも膨大なコストがかかっていた。しかし、「国際化」の概念に基づいて設計したソフトウェアでは、翻訳対象となる文字列をひとくくりに集約する。これによりいちいち文字列を抜き出す作業が不要になった。そのほかにも、いくつか作業の効率化を目指したプロセスがある。例えば、文字コードの統一を実現することで、他言語を使用した際の「文字化け」を解消する。また特定の文化に固有の特殊記号を排除することなどがある。このように、ローカリゼーションでは、製品を販売する対象の地域に対して、均一の製品設計を行い、効率的な適合を試みるために、まずは標準化する「国際化」という作業を行う。国際化は、技術的な側面にとどまらず、翻訳プロセスそのものにも応用されているので、その点を次に説明する。

ローカリゼーションでは、英語を軸として他言語に翻訳されるのが普通である。これも国際化の一つと考えられる。例えば、日本語の製品が世界各国の市場で展開される場合、多くの言語に翻訳するが、日本語=>各言語のように翻訳されるのではなく、日本語から英語に翻訳し、それから各言語に翻訳する。というように、英語を軸をして2段階で翻訳する。

起点言語は一度英語に翻訳されてから、各言語に翻訳される。従来も、たとえば聖書翻訳などで、ギリシャ語を軸として各国の言語に翻訳したが、現代のローカリゼーションの特徴は「国際化」をするために、元となる英語をやさしくするよう制限をかけることによって、翻訳しやすい言語にするという点にある。やさしくするためには、使える文法や語彙などが制限されるので、英

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語を母語としない人たちにとっても分かりやすくなる。 Simplified English, Technical English などと呼ばれる英語は、この一種である。もともとは、機械工場などで働く人々の作業指示書に使われていた「優しい英語」をローカリゼーションに応用することで、翻訳者にとっても翻訳しやすくなるような英語を提供することが可能になった。

また、実際のプロジェクトでは、翻訳者からの意見を参考にして、翻訳しにくい箇所や誤読が起きてしまうような部分については、軸となる言語のテキストを修正することもある。これまでの翻訳では、翻訳される元のテキストが修正されることは稀であったが、ローカリゼーション分野のピボット言語は、翻訳されるための言語であるから、テキスト変更が可能なのである。さらに最近では、翻訳作業に機械翻訳などを使うこともあるため、起点言語そのものが、機械で翻訳しやすいような言語を目指して改変される。

2.3.4.2 翻訳メモリ

翻訳メモリとは過去の翻訳を蓄積したデータベースで、翻訳を支援するツールの一種である。翻訳の分野の中でもとくにパソコンなど IT 分野で、広範に使われている。

翻訳支援ツールとは、文字通り翻訳の手助けをしてくる道具のことである。この意味では、辞書やワープロ、また最近ではインターネットでの調査なども翻訳支援ツールと考えることもできるが、翻訳メモリは、翻訳支援用に開発された翻訳専用のツールなので、一般的な支援ツールとは違う。また翻訳メモリは、機械翻訳や自動翻訳と異なり、翻訳作業そのものは人間が行う。あくまで人間の翻訳作業を手助けするだけなのが翻訳メモリである。

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翻訳メモリは、起点テキストと目標テキストを一体としてデータベースに保存する。新規に翻訳する際に、データベースにその起点テキスト(あるいは類似テキスト)が登録されていれば、それが自動的に検察され表示される。翻訳者はそれらを参照しながら作業を行うことができる。似たような文章を繰り返し翻訳する手間が省けるし、目標言語での訳語や表現がまちまちにならないよう統一できる利点がある。取扱説明書の文章のように単純な構文で繰り返しの多い文章の翻訳では、その勢力が発揮される。

最近は、翻訳メモリで蓄積されたデータが注目されている。その理由は、蓄積されたメモリデータが、統計的機械翻訳に再利用できるからである。統計的機械翻訳は新しいタイプの機械翻訳で、翻訳メモリのように原文と訳文のデータベースを基に、訳文を産出する。そのため、人間の翻訳者の翻訳データは、非常に貴重な資源となる。

2.3.4.3 機械翻訳

機械翻訳とは、ある言語を入力すると、自動的に違う言語に翻訳してくれるシステムのことである。みなさんもインターネットなどで、無料の機械翻訳サービスを使ったことがあるかもしれない。機械翻訳による訳文は、品質があまりよくないことがまだ多くある。そのため、機械翻訳だけで翻訳が完成するというわけにはいかない。そこで、プロの人間翻訳者による翻訳と同じ品質基準を達成させるためには、「プリエディット(pre-edit)」(起点言語を事前に修正する)、または「ポストエディット(post-edit)」(機械翻訳の訳文を後で編集する)という手法を加える必要がある。

「プリエディット」とは、原文を事前に編集することである。機械翻訳にかける前の起点言語テキストを修正し、簡単で分かりやすい文章にしておく。

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長文で複雑な文法構造の起点言語テキストよりは、簡潔で短い文のほうが機械翻訳にとっても理解しやすくなるので、事前の編集で機械翻訳の精度が高まる。

「ポストエディット」は、機械翻訳が訳した目標テキストを人間の翻訳者もしくはポストエディターと呼ばれる人が、後から編集することである。機械翻訳の誤訳やエラーを後で修正するので、校正や推敲の作業と似ている。ポストエディットには、機械翻訳が訳した目標テキストの意味が最低限わかる程度に修正する「ラピッドポストエディット(rapid post- edit)」と、通常の翻訳で求められる品質ラベルにまで修正する「プルポストエディット(full post-edit)」の二種類がある。

ポストエディットの研究と実践は、近年、非常に盛んである。欧州では、たとえば英語からスペイン語の翻訳において、翻訳の分野を限定すれば、ゼロから人間が翻訳をするよりもポストエディットの方が効率的で品質がよいとも言われている。このように、今までの人間による翻訳という行為は、機械翻訳とポストエディットの登場により、機械翻訳の修正を行うという形に移りつつある。

翻訳者の役割、または翻訳者教育の観点からも、こういった状況をふまえた指導や考察が必要になってきている。今後さらなる発展が期待される分野であることは間違いない。

2.3.5 職業としての翻訳

2.3.5.1 文学翻訳

「文学翻訳」とは、翻訳の一つの範疇であり、その名の通り詩や小説、戯曲などの文学作品の翻訳を指す。文学作品の翻訳テキストは、「翻訳文学」と呼ばれ、文学の一ジャンルとして成り立っている。ある地域の文学界には、

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創作文学(初めからその地域の言語で書かれた作品)とは別に、翻訳文学(他言語からその地域の言語に翻訳された作品)というジャンルが存在するのである。日本では明治 10 年代頃から海外の文学作品の芸術性を意職しながら翻訳することが盛んに行われ、翻訳学は人気を得てきた。古曲作品から、現代のファンタジーやミステリー、児童向け作品など多様なジャンルの作品が翻訳されるため、翻訳文学には、種々の文学ジャンルの翻訳作品が含まれる。

文学翻訳者においては、起点言語は外国語で、目標言語が母語という組み合わせの翻訳を行う場合が多い。ほかの分野の翻訳についても同様のことがいえるが、文学翻訳者として成功するためには、外国語の誤解力だけではなく、母語において芸術的な文章を表す力も必要である。

翻訳文学の発表方法は、多くの場合、書籍として、あるいは雑誌に掲載されて出版されるというものである。出版されるまでの道筋は一様ではないが、大きく分けて二つの可能性が考えられる。一つは出版社から仕事の依頼を、翻訳する作品が決まった状態で受ける場合である。このようなケースは、翻訳者としてすでに成功している場合に当てはまるであろう。もう一つは、翻訳者自身が翻訳したい作品をみつけて、それがどのような作品であって、翻訳した際に売れる見込みはあるかなどの文書にまとめて、出版社に売り込む場合である。簡単なことではないが、まだ充分な経験がない翻訳者は、このような方法によって仕事を得られる可能性がある。

2.3.5.2 産業翻訳

「産業翻訳」の厳密な定義はなく、企業などに依頼されて行う翻訳の総称で、「実務翻訳」「ビジネス翻訳」と呼ばれることもある。産業翻訳は企業

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内の文書などを主な対象にする。一般にはあまりなじみがないかもしれないが、実は日本で行われている翻訳のほとんどは産業翻訳である。

日本の翻訳市場の売り上げの取扱分野比率については、コンピュータ関連翻訳が一番多く、翻訳市場全体の34%を占めている。次に、科学.工業技

術が 22%、ビジネス文書が 17%である。これらが代表産業翻訳である。

産業翻訳の仕事を行っているのは、主に、翻訳会社、フリーランス翻訳者、社内翻訳者である。ある会社で翻訳の必要が発生したとする。もし、者にに語学の得意な人がいれば依頼することもできるであろうが、その人は翻訳の専門家ではなく他の仕事で時間がとれないこともしばしばである。このような場合、通常は二つの選択肢が考えられる。

まず一つ目は、翻訳会社にその仕事を依頼する。翻訳会社は翻訳専門に行うので、いつも必要に応じて、翻訳することができる。もう一つは会社翻訳者を採用することである。企業内に翻訳を専門に行う社員がいれば翻訳会社に依頼する手間が省ける。ただ翻訳業務がそれほど多くない場合は、企業にとって会社翻訳者の雇用は経済的に得策ではない。そのため実際には、一つ目の選択肢である翻訳会社に依頼する選択肢が大半である。それで、翻訳会社が発展している。

産業翻訳はビジネスのニーズに応じた翻訳であると同時に、翻訳そのものもビジネスであるという側面を持ち合わせる。ボランティアや趣味で行う翻訳と違い、産業翻訳は有償サービスで、つまり翻訳の依頼者が翻訳に対して翻訳料金を支払うことという点を忘れてはならない。このことから、産業翻訳を行う際には、翻訳作業だけではなく、翻訳の仕事を受注してから納品までのプロセスも大切になる。

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このプロセスは、翻訳前、翻訳、翻訳後の3段階に分けて説明できる。翻訳前の段階は、翻訳発注者との交渉、条件合意、翻訳目的.素材の確認などが含まれる。これは、実際に翻訳作業をはじめる前に翻訳者には、翻訳の依頼者や翻訳会社と打ち合わせ、それを通して翻訳の仕事の内容を理解しておく必要があることを意味する。その翻訳がどのような目的で使われるのか、翻訳の読者は誰なのか、報酬はいくらか、納期はいつなのかなどの事柄を把握しなければならない。翻訳後には、納品準備、顧客との品質チェックやフィードバックなどが伴う。このようなコミュニケーションや行為が、産業翻訳者にとっては大事なことである。

産業翻訳では、上に述べたうち、顧客から要求される重要事項の一つとして納期がある。決められた期日内に翻訳を提出することも、広義での「翻訳品質」である。納期を守らなければ、たとえ翻訳の品質が良くてもその翻訳者は評価されないということになる。このように、産業翻訳では、直接的な翻訳行為のみならず、顧客や翻訳会社とのコミュニケーションのような間接的な行為、すなわち「翻訳的行為」が重視されるのである。

2.3.5.3 法務/特許/医学/行政翻訳

翻訳は、公共サービスに関してもなされている。もっとも、翻訳と通訳では状況が異なる。医療などのコミュニケーション通訳や裁判における法廷通訳は会議通訳やビジネス通訳とは異なる種類の通訳として扱われているが、

「コミュニティ通訳」と「コミュニティ翻訳」とは、全く別であることに留意してください。

ここで取り上げる法務/特許/医学/行政の四つの分野は、公共性と専門性が高いと言う共通点はあるが、実際には別々の分野だと考えられている。

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「法務翻訳」は、法律や契約に関する文書が翻訳の対象となり、契約書、法令文書の翻訳を行う。翻訳技能として、法務文書独特の文体や専門用語への対応力が問われる。

「特許翻訳」は、個人や企業が特許申請を行う際に発生する文書の翻訳である。特許よう明細書、優先権証、広報などが対象である。特許は文体が独特なので専門的な翻訳技能が要求される。知的財産制度や国際法制度などの知識も必要である。

「医学翻訳」は、医学.薬学に関する翻訳である。新薬治験関連文書、医療機器の取扱説明書、学術論文が翻訳対象で、最近は薬品関連の需要が多い状況である。医薬に関する知識は必要であるが、得意とする医薬の専門分野をもっていると、翻訳者に有利である。

「行政翻訳」は、国の機関や役所が発行する白書や報告書の翻訳が主である。行政に関する専門知識も重要であるし、行政機関特有の言葉遣いに慣れておくことも大切である。

このように、どの分野も専門知識と翻訳技能が不可欠である。文体という点からは、法務と特許は特に独特であるが、文体の制約が厳しいということは、翻訳のパターン化が可能だということにもなり、この分野で翻訳メモリや機械翻訳の導入が進んでいる事にもつながる。

医薬系分野のうち、医療機器の取扱説明書を翻訳する場合は、機械やソフトウェアを使った操作が多いため、工業.IT 系の翻訳と共通する部分もあるが、薬品の実験報告書など治験関連文書や医学論文の翻訳には、的を絞った専門知識を身につける必要がある。

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2.3.5.4 コミュニティ翻訳/クラウンドソーシング翻訳

2000 年代に登場したウェブ 2.0 以降、インターネット上で情報の送り手と受けてが双方面に情報を発信できるようになった。SNS では複数のユーザーがつながり双方面のコミュニケーションが可能である。ネット上にコミュニティが形成され議論する場できた。このようなインターネット環境により、企業は社外の業者に依頼していた業務を、「不特定多数」の群衆に業務委託することが可能になった。これを「クラウンドソーシング」と呼ぶ。

クラウンドソーシング翻訳とは、これを翻訳の仕事に応用したもので、翻訳という課題を中心にインターネット上に集う群衆翻訳者のことを示す。 クラウンドソーシング翻訳を行うのはプロ翻訳者とは限らない。コミュニティ翻訳のように、プロではない翻訳者の集団もある。例として、Facebookサイトがある。Facebook 内にはユーザなら誰でも参加できる「翻訳」コミュニティが用意され、翻訳が必要な文字列と翻訳環境を Facebook が提供し、ユーザーがサイト内の文字列を無償で翻訳する。

翻訳者がプロではないので翻訳の質が問題になるが、Facebook の場合は、投票システムによってこれを解決している。翻訳コミュニティ内のユーザーが

複 数 の 訳 文 か ら 最 良 の 訳 に 投 票 し 、 要 数 を 一 番 多 く 獲 得 し た 翻 訳 文 がFacebook のサイトで採用される仕組みになっている。

欧州委員会翻訳総局は、「翻訳」を税金で賄われる公共サービスにして、私たちの生活の「標準機能」にするべきだと提案している。必要な時にいつでも好きな言語で情報を入手できるようにしようという提案である。たとえばインターネットや携帯電話、スマートフォンで使うアプリすべてに、「翻訳ボタンがつていれば、すぐに翻訳文が手に入る。このような発想が現実となった背

Ngày đăng: 16/03/2021, 09:39

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