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中・上級ベトナム人日本語学習者による敬語の誤用 = Những lỗi sai khi sử dụng kính ngữ thường gặp ở người Việt Nam học tiếng Nhật trình độ trung cấp và trên trung cấp

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ハノイ国家大学 外国語大学 大学院科 チャン・ティ・ミー 中・上級ベトナム人日本語学習者による敬語の誤用 NHỮNG LỖI SAI KHI SỬ DỤNG KÍNH NGỮ THƯỜNG GẶP Ở NGƯỜI VIỆT NAM HỌC TIẾNG NHẬT TRÌNH ĐỘ TRUNG CẤP VÀ TRÊN TRUNG CẤP 修士論文 専攻:日本語学

Trang 1

ハノイ国家大学 外国語大学 大学院科

チャン・ティ・ミー

中・上級ベトナム人日本語学習者による敬語の誤用

NHỮNG LỖI SAI KHI SỬ DỤNG KÍNH NGỮ THƯỜNG GẶP Ở NGƯỜI VIỆT NAM HỌC TIẾNG NHẬT TRÌNH ĐỘ TRUNG CẤP VÀ TRÊN TRUNG CẤP

修士論文

専攻:日本語学

ハノイ - 2012 年

Trang 2

ハノイ国家大学 外国語大学 大学院科

TRẦN THỊ MỸ

中・上級ベトナム人日本語学習者による敬語の誤用

NHỮNG LỖI SAI KHI SỬ DỤNG KÍNH NGỮ THƯỜNG GẶP Ở NGƯỜI VIỆT NAM HỌC TIẾNG NHẬT TRÌNH ĐỘ TRUNG CẤP VÀ TRÊN TRUNG CẤP

Trang 3

誓言

本稿においては、まず、日本語における敬語表現の概念、分類を解説してから、その概念、分類を借用して、ベトナム語における敬語表現を解説する。次に、筆者が行った調査の結果(付録 A 調査票を参照)に基づいて、中・上級ベトナム人日本語学習者が常にどんな敬語の誤用をするかを挙げ、日本とベトナムとの言語・文化の特徴の面から誤用する理由及び敬語使用ポイントを取り上げる。

参考文献リストに載せてある文献以外の資料を引用したり、参考したりしないこと、調査結果は事実であることおよび本研究は筆者独自研究であることを誓う。

Trang 4

修士論文要約

本稿では、日本語及びベトナム語における敬語表現について解説した上、中・上級ベトナム人日本語学習者による文法上の敬語の誤用、場面での敬語の誤用、誤用の原因を分析し、敬語使用ポイントを打ち出してきた。

今後の研究は、こうした中・上級日本語学習者による敬語の誤用に留まらず、ベトナム人学習者向けのもっと効果的かつ実用的な敬語指導法に付けて行きたいと思う。また

、日本語母語話者には誤用が見られるが、ベトナム人学習者には見られない誤用などについての考察も進めたいと思う。本研究は筆者の未熟さによりまだ触れていない問題が多くあると思うが、ベトナム人学習者の敬語学習に幾つかでも寄与できれば幸いである

Trang 5

目次

序論……… ……… 1

第 1 章 日本語における敬語表現及び誤用の概念と分類 … ……… 5

第 1 節 敬語の概念・誤用の概念……… ……… 5

1.敬語の概念……… ……… ……… 5

2.誤用の概念……… ……… ……… 7

第 2 節 日本語における敬語表現……… ……. 10

1.尊敬語……… ……… ………. 11

1.1 尊敬語とは……… ……… …. 11

1.2 尊敬語の形……… ……… ……. 11

1.2.1 動詞の尊敬語……… ……… ………… 11

1.2.2 名詞の尊敬語……… ……… 13

1.2.3 形容詞などの尊敬語……… ……… 13

1.2.4 「名詞+だ」に相当する尊敬語……… ………. 14

1.2.5 その他……… ……… …… 14

2 謙譲語 I……… ……… ………… 14

2.1 謙譲語 I とは……… ……… …… 14

2.2 謙譲語 I の形……… ……… ……… 15

2.2.1 動詞の謙譲語 I……… ……… ……… 15

2.2.2 名詞の謙譲語 I……… ……… …… 17

3 謙譲語 II……… ……… ………. 17

3.1 謙譲語 II とは……… ……… ……. 17

3.2 謙譲語 II の形……… ……… ………. 18

3.2.1 動詞の謙譲語 II……… ……… …… 18

3.2.2 名詞の謙譲語 II……… ……… 19

4 丁寧語……… …… 20

Trang 6

4.1 丁寧語とは……… ……… ……. 20

4.2 丁寧語の形……… ……… 21

5 美化語……… ……… ……… 22

5.1 美化語とは……… ……… ………. 22

5.2 美化語の形……… ……… ……. 23

6 敬語以外の待遇表現……… ……… ……… 23

6.1 尊大語……… ……… ……… 23

6.2 侮蔑語……… ……… …… 24

第2章 ベトナム語における敬語に相当する表現 ……… 26

1 「ベトナム語において敬語に相当する表現がある」という観点… ………. 26

2 ベトナム語における敬語に相当する表現……… ……… 27

2.1 ベトナム語における敬語の特定の動詞……… ……… 28

2.2 ベトナム語における人称代名詞……… … 31

2.2.1 人称代名詞の一覧表……… …… 31

2.2.2 人称代名詞の用法……… ……… ………… 33

2.2.3 人称代名詞の選定ポイント……… ……… 34

2.3 ベトナム語における敬語的成分……… ……… 35

2.3.1 「ạ」について……… ……… ……… 35

2.3.2 「dạ」について……… ……… ……… 36

2.3.3 「xin」について……… ……… ……… 36

2.3.4 「kính」について……… ……… …… 37

第 3 章 中・上級ベトナム人日本語学習者による敬語の誤用 ……… ……… ……… 38

第1節 中・上級ベトナム人日本語学習者による文法上の敬語の誤用……… 38

1 種類・構成・文脈からみた敬語の誤用……… ……… 38

1.1 種類から見た誤用……… ……… ………. 38

1.1.1 常体と敬体の混同による誤用……… 39

1.1.2 尊敬語と謙譲語 I の混同による誤用……… …… 39

Trang 7

1.1.3 尊敬語と謙譲語 II の混同による誤用……… ………. 41

1.1.4 謙譲語 I と謙譲語 II の混同による誤語……… … 43

1.2 構成から見た誤用……… ……… …. 46

1.2.1 「ご~される」という尊敬語の誤用パターン……… …………. 46

1.2.2 「ご~できません」という可能形の尊敬語の誤用パターン……… …. 47

1.2.3 「お~やすい」「お~にくい」という敬語の誤用パターン……… 48

1.2.4 「お(ご)」を言い落とした敬語の誤用パターン……… ………… 49

1.3 文脈から見た誤用……… ……… …………. 50

2 過度の敬語使用……… ……… 51

2.1 二重敬語……… ……… …… 51

2.2 乱用……… ……… ………. 54

2.2.1 「お(ご)」に関する乱用……… …… 54

2.2.2 本来の言葉を変える乱用……… …………. 55

3 敬語の不足……… ……… ……… 56

4 話し手側の動作や物事に付ける「お(ご)」……… 57

第2節 中・上級ベトナム人日本語学習者による場面での敬語の誤用……… …… 59

1 自分や相手の呼び方の敬語の誤用……… ……. 59

2 「ウチ・ソト」の関係における敬語の誤用……… … 62

3 褒めることにおける敬語の誤用……… … 65

4 能力などを尋ねることにおける敬語の誤用……… … 67

5 依頼の仕方における敬語の誤用……… …… 68

第 3 節 敬語の誤用の原因解説及び使用ポイント……… 70

1 敬語の誤用の原因解説……… 70

1.1 学習者の心理……… …………. 70

1.2 日越間における言語特徴的な相違……… …. 71

1.3 日越間における国民意識の相違……… ………… 72

2 敬語使用ポイント……… ………… 74

Trang 8

2.1 日本語の活用形・敬語の形・「お(ご)」の付け方を身に付けること…… 74

2.1.1 日本語の活用形……… …… 74

2.1.2 「お(ご)」の使い分け……… ……… 75

2.2 敬語のシステムを理解すること……… 76

2.3 人間関係や場面を的確に把握すること……… ……… 82

結論……… ……… 85

謝辞……… …… 86

参考文献……… … 87

Trang 9

序論

1 研究背景・目的

日本語には精密な敬語体系がある。日本人は話し相手との社会的上下関係や親疎関係などによって、言葉遣いを変えている。特に、意志や心情を効果的に伝え、よい対人関係を築く言語行動の中核に敬語がある。

日本人は家庭・学校教育、社会経験など、いくつかの学習段階及び社会生活の訓練を積むことによって、敬語がどんなものか、どういう人に、どのような場面で用いるべきものなのか、ということを自然のうちに身に付けることが可能であり、敬語を使いこなす能力を獲得する。

ところが、日本語を学ぶベトナム人学習者にとって、敬語はなかなかうまく身に付けられない難題である。ベトナム人学習者にとって、文化・習慣の違い、生育環境の相違

、母語に敬語表現が体系化されていないこと、及び日本語の敬語用法の難しさなどは、敬語の理解や学習に不利なことである。まだ敬語に触れない段階にいる日本語初級レベル学習者が誤用をすることは避けられないことであるが、敬語がどんなものか、敬語の基本となる上下関係、親疎関係、「ウチ・ソト」関係についての知識を持っている中・上級(日本語能力試験 1 級、2 級あるいは N1、N2 レベルに相当)日本語学習者にとっても、いくらうまく敬語の用法を身に付けても、実際の言語行動の中では、必ずしも適切に敬語を使い分けられるとは限らない。日本語において、敬語が一番難しいと考えるベトナム人学習者が少なくない。

筆者は 2007 年 4 月から 2008 年の 3 月まで日本に留学した経験がある。留学期間中に日本人をはじめ、アメリカ、カナダ、中国、韓国などの国から来た留学生と日本語で話す機会が多かった。留学生同士の会話においても、日本人との会話おいても、敬語を使う場面がしばしばあった。そして、2009 年より現在まで 3 年間教壇に立ち、気づいたことが二点あった。一点目は日本語能力が比較的に高いとされる中・上級ベトナム人日本語学習者でも必ず適切に敬語を使い分けられる訳ではないことである。具体的に言えば筆者自分自身が少なくとも7年間日本語を学習し、日本語中上級レベルに相当する上、実際に日本人の上下関係・親疎関係・「ウチ・ソト」関係に触れたことが少なからずある。しかし、それにもかかわらず、文法上の敬語の誤用も場面での敬語の誤用も度々経験したことがあり、上手に使えるかといえばある程度使えるが、自信があるとはい

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えない。もう一点はベトナム人日本語学習者によく見られる敬語の誤用は他の国の日本語学習者には余り見られないことである。例えば、筆者を含むベトナム人留学生は自分側の人物について他人側・外部に属する相手と話すときに、自分側の人物が目上の人でも、敬語を使うべきではないと勉強したが、つい使ってしまう傾向にある。同一場面であるが、トルコ人留学生、アメリカ人留学生等日本語初級レベルにもかかわらず、そういう誤用をしたことがない。

以上の気づいたことをきっかけに、中・上級ベトナム人日本語学習者にとって多く見られる敬語の誤用はどんなものか、なぜそのような誤用をするか、誤用を起こさない指導のポイントがないか研究したいという気持ちが沸いてきた。それが中・上級ベトナム人日本語学習者による敬語の誤用を研究課題とした理由である。

2 先行研究

敬語は古代から現在に至る日本語の歴史の中で、一貫して重要な役割を担い続けている。それとともに、敬語についての研究は多いようであるが、筆者の管見の限りでは、

「中・上級ベトナム人日本語学習者による敬語の誤用」を中心に述べる先行研究は極めて少ないのが現実である。筆者は主に日本人言語学者による敬語の種類、敬語の形、敬語の使い方等に関する現代敬語研究を参考しながら、調査を行って本稿を作成した。 現代敬語の分類を伝統的かつ古典的な3分類で済ませている研究者は、日本には、もはやいない。明治時代の初期から、敬語には尊敬・謙譲・丁寧の3種類があると言われ

、この3つは、全ての研究者が賛成していて、小学校の段階から教育に採り入れているので、日本の国民の常識のようになってしまったようである。

辻村(1963)は、敬語を従来の3分類から、4分類にした。辻村の4分類では、尊敬語も謙譲語も「絶対・関係」の2種類ずつに分けている。その中の「絶対下位主体語」は

、名称が違うだけで、実は後述する宮地の「丁重語」と同じものである。

宮地(1965、1968)は、謙譲語から「丁重語」という分類を独立させ、敬語を、①尊敬語、②謙譲語、③美化語、④丁重語、⑤丁寧語というように、5分類にした。これは

、特徴的な分類である。

宮地の5分類によって、初めて「丁重語」という名称が広く認知されるようになった

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宮地の言う「丁重語」とは、何か。いわゆる「いたす・まいる・申す・存じる」と言われたものである。この丁重語(伝統的にはもっとも普通の謙譲語動詞)は、もはや「~ます」の形でないと、使えなくなっている。つまり、他の謙譲語動詞は、「~ます」の形でなくても使える。これが文法上の顕著な特徴である。

菊地(1980)の敬語研究を見逃しては、ならない。菊地の研究は、敬語の分類ではなく、文法の研究であって、謙譲語を3種に分類して、その違いを説明した。つまり、菊地は、辻村、宮地の先行研究の価値を文法の面から証明したことになる。

様々な見解があるが、本稿においては、文化審議会が2007年に公開した「敬語の指針

」に提起された区分け方法を基にして進める。「敬語の指針」では、敬語を「尊敬語・謙譲語I・謙譲語II・丁寧語・美化語」の5種類に分けて解説した。謙譲語IIは丁重語とも呼ばれているが、上記の宮地が提起した丁重語とは異なる。宮地の丁重語は文法の面から区分けしたのに対して、本稿の第1章で述べるように、「敬語の指針」の区分け方法は性質の違いに基づくものである。本稿は、この違いを理解することが、それぞれの敬語をより的確に使用するために必要であると考える立場に立つ。

3 研究方法

本稿においては、中・上級ベトナム人日本語学習者が敬語を使う際に常にどんな誤用をするか、なぜそのような誤用をするかを中心に分析し、誤用を減らすため、ポイントを打ち出すことを目指している。それで、まず、日本語における敬語表現の概念、分類を解説してから、その概念、分類を借用して、ベトナム語における敬語表現を解説する

。次に、筆者が行った調査の結果(付録 A 調査票を参照)に基づいて、中・上級ベトナム人日本語学習者が常にどんな敬語の誤用をするかを挙げ、日本とベトナムとの言語・文化の特徴の面から誤用する理由及び敬語使用ポイントを取り上げる。

調査項目は文法上の敬語の誤用及び場面での敬語の誤用を中心に合計 44 問の設問を用意した。調査対象は日本語中・上級(日本語能力試験 1 級、2 級あるいは N1、N2 レベルに相当)に当たるベトナム国家大学ハノイ校附属外国語大学 東洋言語文化学部日本語学科の 4 年生、3 年生及び日本留学経験者である。有効データになる調査回答は

100 部を得た。誤用率が 30%以上の項目は高い誤用率と認め、それを絞って分析を行った。

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4 本稿の構成

本稿は三章に分けられる:

第 1 章では、文化審議会が 2007 年に公開した「敬語の指針」に提起された区分けし方を基にして、敬語を「尊敬語・謙譲語 I・謙譲語 II・丁寧語・美化語」の 5 種類に分け、日本語における敬語表現とその概念・形態を解説する。

第 2 章では、日本語の謙譲語 I と謙譲語 II を謙譲語に一括し、日本語の尊敬語・謙譲語(謙譲語 I・謙譲語 II)・丁寧語・美化語の分類形式を借用し、典型的なベトナム語の敬語表現を考察する。

第 3 章では、調査の結果に基づき、中・上級ベトナム人日本語学習者による文法上の敬語の誤用、場面での敬語の誤用を分析した上、敬語の誤用の原因を解説し、敬語使用ポイントを打ち出す。

Trang 13

第 1 章 日本語における敬語表現及び誤用の概念・分類

第1節 敬語の概念・誤用の概念

1.敬語の概念

敬語は日本語などで発達しているが、ヨーロッパ近代語では日本語ほど体系的には使われていない。ヨーロッパ近代語に敬語があるかないかは敬語の定義次第である。敬語の指針(2007)によると、「敬語表現とは、コミュニケーションにおいて、相互尊重の精神に基づき、相手や場面に配慮して使い分けている言葉遣いを意味する。」(p.2)

。また、敬語について、Jack C Richards, Richard Schmidt(2002)が次のように定義した。「Honorifics: Politeness formulas in a particular language which may be specific affixes, words, or sentence structures (略)(【日本語訳】敬語表現:特定の文法接辞

(接頭辞・接尾辞など)、言葉あるいは文構造などある言語に存在するポライトネスフォーミュラ」)(p.242)。敬語を広く「人物間の上下関係や親疎関係を 反映した言語表現」と定義すれば、英語で丁寧な命令文に please を付ける例を始め、学校や軍隊で生徒や兵士の教師、上官に対する応答の文末に sir/madam を付ける例、2 人称代名詞の敬称(動詞の活用も 3 人称など本来の二人称形と異なる形を用いる)が存在する例などヨーロッパ近代語にも敬語がある。英語の二人称代名詞である you も、もともとは敬称であったものが、敬称でない thou が全くといっていいほど使われなくなった結果、敬称として意味を成さなくなったものである。つまり、かつての英語話者が家族であろうと親しい友人であろうと常に敬称のみを使っていたために、敬称でない形の thou が忘れ去られるに至ったわけである。 しかし、日本語のように「人物間の上下関係を反映した言語表現が体系的に文法化された形式」をもつものに限って定義すればヨーロッパ近代語には敬語はないことになる。また、敬語は現代においては主に第三者等との会話で使用され、見知らぬ相手との円滑なコミュニケーションを促す役割も持つ。

ここでいう上下関係とは年齢や地位といった社会的な関係に固定されたものではなく、相手が商売上の客であったり見知らぬ人であったりする場合にも使われ、場面によって変化する。親しさ、疎遠さとも関係している。また、暗に相手を見下したりするために用いられることもある。

Trang 14

ベトナム語においても、日本語においても、敬語というと、一般には上下関係のある場合に使われる言葉遣いだと思われがちである。確かに、上司と部下、先生と生徒、年上と年下など、上下関係に基づいて敬語が使われることは多い。

しかし、話し手と聞き手との間に上下関係が無いにもかかわらず、知らない人物に対しては敬語を使う。また、知っている人の場合でも、親しい人には敬語を使わないが、あまり親しくない人物に対しては敬語を使うだろう。つまり、敬語は、相手との親疎関係に基づいても使用されるのである。一般に、親しさの度合いが低い相手ほど丁寧で、敬意の高い表現を用いる傾向がある。

かつての日本語における敬語は、主として、絶対的・固定的な身分の上下に基づいて使われる上下の敬語であった。しかし、現在では敬語の使用を選択する要因としては、上下関係よりも親疎関係の方が大きな意味を持ち始めている。このことを上下の敬語に対して「左右の敬語」と呼ぶ人もいる。

さて、そうすると、敬語は「敬意を示すための」表現である、という言い方に違和感を覚えるベトナム人学習者が出てくるかもしれない。通りすがりの人や親しくない人に尊敬や敬いの気持ちを抱いて敬語を使っているとは考えにくいからである。

しかし、敬意を持つということは、それに対して近寄りがたい気持ちを持つことに通じる。尊敬している人には簡単に近づけないという気持ちを持ったことは誰にでもあるだろう。このことを言い換えれば、敬意を示すことは、その人に対する心理的な距離を示すことだとも言えよう。

したがって、親しくない人に対して敬意を示すのは、それだけの心理的距離があることを示しているといえる。つまり、親疎関係による敬語は、相手を立てる表現をすることで、相手との心理的な距離を調整する(一定の距離をとり、必要以上に近づかない)という働きをしていることになると考えられる。

このように、敬語とは、コミュニケーションにおいて、相手や場面に配慮し、相手との社会的、心理的距離を調節する言語的手段である。本稿ではこの定義に従う。

2.誤用の概念

誤用(error)については、Jack C Richards, Richard Schmidt(2002)が次のように定義した。「Error: in the speech or writing of a second or foreign language learner, the use of a linguistic item (e.g a word, a grammatical item, a SPEECH ACT, etc.) in a way

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which a fluent or native speaker of the language regards as showing faulty or incomplete learning A distinction is sometimes made between an error, which results from incomplete knowledge, and a mistake made by a learner when writing or speaking and which is caused by lack of attention, fatigue, carelessness, or some other aspect of performance Errors are sometimes classified according to vocabulary (lexical error), pronunciation (phonological error), grammar (syntactic error), misunderstanding of a speaker’s intention or meaning (interpretive error), production of the wrong communicative effect, e.g through the faulty use of a speech act or one of the RULE OF SPEAKING (pragmatic error).」(【日本語訳】誤用:第二言語あるいは外国語学習者によるスピーチまたは文書において、ある言語に堪能なスピーカーもしくはその言語母語話者が誤りまたは不完全なものとみなす言語アイテムの用法(例:単語、文法アイテム、発言行為等)。不十分な知識が原因の誤用(error)と区別し、間違い (mistake)は学習者が文書を作成中あるいは会話中に、不用意、疲労、不注意か他の言語学言語運用中のアスペクトなどが原因で生じる。誤用は発話行為あるいはある発話のルールを反した用法により、時々語彙(lexical error)、発音 (phonological error)、文法(syntactic error)、発話者による意図、意味の誤解(interpretive error)、間違った伝達の効果などに分類されている。)

各言語は自分自身の一般的なルールがある。そのルールはその言語のネイティブ・スピーカーの言語活動、言語使用の中から一般化させるものである。Jack C Richards, Richard Schmidt(2002)の定義からすると、そのルールに違反する言語使用を誤用という。

さらに、吉川(1982)は次のような誤用の定義を扱っている。「近代言語学は、ネイティブ・スピーカーの発言するものはすべて正しい、というたてまえから出発している。(中略)したがって、ネイティブ・スピーカーの発話には、(原理的に)誤用はないわけである。誤用が課題になるのは、その言語を第二言語として学習するときである。」(p.120)また、吉川(1982)にとって、誤用とはもっぱら第二言語学習者が目標言語を使うときに犯す誤りをさしている。

本稿は上に述べた吉川(1982)が扱っている誤用の定義に従うため、中上級ベトナム人日本語学習者を対象とし、助詞などの基本的な誤りは本稿では扱わない。

Trang 16

また、筆者が行った調査の結果によると、ベトナム人留学生計 23 名を含む 54 名は「方言における敬語表現が誤用ではない」と答えた一方、残った 46 名は「方言における敬語表現は敬語の誤用である」という誤った批判を持つことが分かる。それゆえに、ここでは方言における敬語表現について解説していくことにする。

単に共通語の敬語とは異なる表現をしただけでは、敬語の誤用と判断すべきでなない

。標準語や共通語では誤用とされる表現も、ある方言において正用法ならば誤用ではない。

例えば、関西地方では「~はる」が、日本全国共通語の「~れる・~られる」と似た意味の尊敬語として広く用いられる。これは例えば「うちのお父さん、家にいてはります。」というように、日本全国共通語の尊敬語とは異なり、自分側の人物について述べる場合にも用いられる。

また、日本全国共通語の尊敬語・謙譲語等に当たる言語形式を備えず、敬語が希薄だとされる地域もある。例えば、東北地方南部や関東地方北部などである。しかし、この地域においても、例えば「そだなし・そだのう」などの文末表現やそれらの抑揚(イントネーション)が、相手への丁寧な気持ちや改まった気持ち(全国共通語の「そうでしょうねえ・そうですね」のような意味)を表す言語表現として用いられる。敬語表現の一つの姿である。

上記の例のように、方言の敬語は、日本全国共通語の敬語とは異なる場合も多く、それらは、言語表現の形や意味の上での多様性だけでなく、それらの使い方の上での多様性も持っている。方言における敬語は敬語の誤用であるどころか日本語をより多様で豊かな言語を作り上げると言える。

本稿の筆者がベトナム人留学生 23 名について調べた結果によると、23 名全員が通常現地の方言における敬語を使うことが分かる。また、全員は方言における敬語表現が誤用ではないと答えた。

日本国内各地には、それぞれ固有の方言がある。そして、多くの方言には、それぞれ独特の敬語がある。こういうわけで、大部分のベトナム人留学生は現地の方言における敬語を使うが、そのベトナム人留学生による敬語の運用に関しては地域差があると考えられる。方言における敬語及び敬語の運用に関する地域差はベトナム人留学生の言語生活に欠くことができなく、現地人とコミュニケーションの潤滑油の役割を果たすと言えるだろう。

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第 2 節 日本語における敬語表現

一般的には敬語を尊敬語・謙譲語・丁寧語の三つに分類する。日本語学においてはさらに丁重語・美化語を立てた 5 分類が多く使われている。文部科学大臣及び文化庁長官の諮問機関である文化審議会も、2007 年に、尊敬語・謙譲語Ⅰ・謙譲語Ⅱ(丁重語)・丁寧語・美化語の 5 分類にするという敬語の指針を答申した。

敬語にはその性質上、話題中の人物を高めるもの(素材敬語)と話し手が対面している聞き手を高めるもの(対者敬語)があるが、5 分類は、従来の 3 分類を元に、両者を区別することで定義されたものである。また、本来丁寧語の一部である美化語は「敬語」からは外されることが多い。 中学校では、3分類で敬語の学習をしているほか、常体・敬体についても学習している。

謙譲語

謙譲語 I

自分側から相手側又は第三者に向かう行為

・物事などについて、その向かう先の人物を立てて述べるもの。

謙譲語 II (丁重語)

対者敬語

自分側の行為・物事などを、語や文章の相手に対して丁重に述べるもの。

丁寧語 丁寧語

語や文章の相手に対して丁寧に述べるもの

。 美化語 - 物事を、美化して述べるもの。

(表 1)

(注)上記の表での「立てる」は「敬語の指針」(文化審議会、2007)で「言葉

の上で高く位置付けて述べる」という表現として用いられている。本論での「立てる」は、そのような意味で理解されたい。

Trang 18

1. 尊敬語

1.1尊敬語とは

尊敬語は相手側又は第三者の行為・物事・状態などについて、その人物を立てて述べるもの。

「先生は来週海外へいらっしゃるんでしたね。」と述べる場合、「先生は来週海外へ行くんでしたね。」と同じ内容であるが、「行く」の代わりに「いらっしゃる」を使うことで、「先生」を立てる述べ方になる。このように、「いらっしゃる」は行為者に対する敬語として働く。この種の敬語は、一般に「尊敬語」と呼ばれている。「先生のお導き」なども、行為者を立てる尊敬語である。

「お名前」「お忙しい」のように、行為ではなく、物事や状態を表す語にも、尊敬語と呼ばれるものがある。例えば「先生のお名前」は「名前」の所有者である「先生」を、また「先生はお忙しいようですね。」は「忙しい」状態にある「先生」を、それぞれ立てることになる。

1.2 尊敬語の形

1.2.1 動詞の尊敬語

① 動詞の尊敬語の形

「行く→いらっしゃる」のように特定の語形(特定形)による場合と、「お(ご)…になる」(例、読む→お読みになる、利用する→御利用になる)のように広く色々な語に適用できる一般的な語形(一般形)を使う場合とがある。

Trang 19

・ (ら)れる(例:読む→読まれる、利用する→利用される、始める→始められる、来る→来られる)

・ なさる(例:利用する→利用なさる)

・ご なさる(例:利用する→御利用なさる)

・お(ご) だ(例:読む→お読みだ、利用する→ご利用だ)

・お(ご) くださる(例:読む→お読みくださる、指導する→ご指導くださる)

【「お(ご) になる」を作る上での留意点】

ア.「お」「御」の使い分け

一般に、動詞が和語の場合は「読む→お読みになる」「出掛ける→お出掛けになる」のように「お になる」となり、漢語サ変動詞の場合は「利用する

→御利用になる」「出席する→御出席になる」のように「ご になる」となる。 イ. 変則的な「お(ご) になる」

例:召し上がる →召し上がれる、

お読みになる →お読みになれる

ご利用になる →ご利用になれる

Trang 20

1.2.2 名詞の尊敬語

一般には、「お名前」「御住所」のように、「お」又は「御」を付ける。通常和語には「お」を、漢語には「ご」を付けることが多い。「お」「ご」の 2 つは美化語としても用いられる。

このほか、「御地(おんち)」「貴信(きしん)」「玉稿(ぎょっこう)」のように、「御」「貴」「玉」などを付けたり、「御高配(ごこうはい)」「御尊父(ごそんぷ)」「御令室(ごれいしつ)」のように、「御」とともに「高」「尊」「令」などを加えたりして、尊敬語として使うものがある。「み心(表記は「御心」で同一)」のように、「み」を付けるものもあるが、「み」以降は付けられる名詞が決まっており、造語力が低い。

1.2.3 形容詞などの尊敬語

形容詞や形容動詞(日本語教育ではい形容詞やな形容詞とも呼ばれる)の場合は、語によっては「お忙しい」「御立派」のように、「お」「御」を付けて尊敬語にすることが出来る。

また、「お」「御」のなじまない語でも、「(指)が細くていらっしゃる」

「積極的でいらっしゃる」のように、「…くていらっしゃる」「…でいらっしゃる」の形で尊敬語にすることが出来る。「お」「御」を付けられる語の場合は、「お忙しくていらっしゃる」「御立派でいらっしゃる」のように「お」「御」を付けた上で、

「…くていらっしゃる」「…でいらっしゃる」の形と併用することも出来る。

1.2.4 「名詞+だ」に相当する尊敬語

「名詞+だ」に相当する内容を尊敬語で述べる場合は、「先生は努力家でいらっしゃる」のように「名詞+でいらっしゃる」とする。

1.2.5 その他

尊敬語はその昔、階級によりその用い方が決められていたものがある。今日においても皇室典範などや慣習によって、それらの用い方も残っているケース もある。ただ、日常ではあまり耳慣れない言葉のため、崩御なども単に「死去」や「お亡くなりになる」などと表現することもある。

o ご誕生が一般的だが、古くは皇族の誕生を降誕といった。

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「先生のところに伺いたいんですが…。」と述べる場合、「先生のところに行きたいんですが(先生のところを訪ねたいんですが) 。」と同じ内容であるが、「行く(訪ねる)」の代わりに「伺う」を使うことで、「先生」を立てる述べ方になる。このように、「伺う」は「向かう先」に対する敬語として働く。この種の敬語は、一般に「謙譲語」と呼ばれてきたが、「敬語の指針」(文化審議会、2007)では 3 の「謙譲語 II 」と区別して、特に「謙譲語 I」と呼ぶ。

2.2 謙譲語 I の形

2.2.1 動詞の謙譲語 I

① 動詞の謙譲語 I の形

「訪ねる→伺う」のように特定の語形(特定形)による場合と、「お(ご)…する」(例:届ける→お届けする、案内する→御案内する)のように広く色々な語に適用できる一般的な語形(一般形)を使う場合とがある。

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ア.「お(ご)…する」「お(ご)…申し上げる」を作るための基本的条件

これらの語は「向かう先」を立てる謙譲語 I なので、「向かう先」の人物がある動詞に限って、これらの形を作ることが出来る。例えば「届ける」や「案内する」は「向かう先」の人物があるので、「お届けする(お届け申し上げる)」「御案内する(御案内申し上げる)」という形を作ることが出来るが、例えば「食べる」や「乗車する」は「向かう先」の人物が想定できないので、「お食べする(お食べ申し上げる)」「御乗車する

(御乗車申し上げる)」という形を作ることは出来ない。

なお、「向かう先」の人物があっても、例えば「お憧れする(お憧れ申上げる)」「御賛成する(御賛成申し上げる)」とは言わない、というように、慣習上「お(ご)…する」「お(ご)…申し上げる」の形が作れない場合もある。

イ.「お」「御」の使い分け

一般に、動詞が和語の場合は「届ける→お届けする」「誘う→お誘いする」のように「お…する」となり、漢語サ変動詞の場合は、「案内する→御案内する(御案内申し上げる)」「説明する→御説明する(御説明申し上げる)」のように「ご…する」となる。

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② 可能の意味を添える場合

動詞に可能の意味を添えて、かつ謙譲語Ⅰにするには、まず謙譲語Ⅰの形にした上で可能の形にする。

例:伺う→伺える

お届けする→お届けできる 御報告する→御報告できる

• 手紙→お手紙を差し上げる。辞退→ご辞退を申し上げる。ご連絡を差し上げる。

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「明日から海外へ参ります。」と述べる場合、「明日から海外へ行きます。」と同じ内容であるが、「行く」の代わりに「参る」を使うことで、自分の行為を、話や文章の相手に対して改まった述べ方で述べることになり、これが、丁重さをもたらすことになる。このように、「参る」は「相手」に対する敬語として働く。

この種の敬語は、一般に「謙譲語」と呼ばれてきたが、「敬語の指針」(文化審議会、2007)では、2の「謙譲語Ⅰ」と区別して、特に「謙譲語Ⅱ(丁重語)」と呼ぶ。

3.2 謙譲語Ⅱの形

3.2.1 動詞の謙譲語Ⅱ

「参る」などのいくつかの特定の語形のほかには、一般的な語形としては、「 いたす」があるだけである。

【「謙譲語Ⅰ」兼「謙譲語Ⅱ」の一般形】

上述の「謙譲語Ⅰ」兼「謙譲語Ⅱ」の一般的な語形として「お(ご) いたす」がある。

3.2.2 名詞の謙譲語Ⅱ

「愚見」「小社」「拙著」「弊社」のように、「愚」「小」「拙」「弊」を付けて、謙譲語Ⅱとして使うものがある。書き言葉の際に使用されることがほとんどである。

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※ 謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱとの違い-「向かう先」に対する敬語と、「相手」に対する

敬語

2の謙譲語Ⅰと3の謙譲語Ⅱは、類似している点もあるため、どちらも「謙譲語」と呼ばれてきたが、謙譲語Ⅰは「向かう先」(相手側である場合も、第三者である場合もある)に対する敬語、謙譲語Ⅱは「相手」に対する敬語であり、性質が異なる。この点に関係して、次のような違いもある。

ア.立てるのに相応しい「向かう先」の有無についての違い

謙譲語Ⅰの場合、例えば「先生のところに伺います。」とは言えるが、「弟のところに伺います。」は不自然である。これは、初めの例では「向かう先」である「先生」が「立てるのに相応しい」対象となるのに対し、後の例の「弟」は

「立てるのに相応しい」対象とはならないためである。謙譲語Ⅰは、「向かう先」に対する敬語であるため、このように立てるのに相応しい「向かう先」がある場合に限って使う。

一方、謙譲語Ⅱの場合は、例えば「先生のところに参ります。」とも言えるし、

「弟のところに参ります。」とも言える。謙譲語Ⅱは「相手」に対する敬語であるため、このように、立てるのに相応しい「向かう先」があってもなくても使うことが出来るのである。

イ. どちらも使える場合の、敬語としての働きの違い

相応しい「向かう先」がある場合は、謙譲語Ⅰを使って「先生のところに伺います。」のように述べることも、謙譲語Ⅱを使って「先生のところに参ります。」のように述べることも出来る。

ただし、前者が「先生」に対する敬語であるのに対して、後者は話や文章の

「相手」に対する敬語であることに注意したい。つまり、「先生」以外の人に対してこれらの文を述べる場合、「先生のところに参ります。」の方は、「先生」ではなく、「相手」に対する敬語として働くことになる。

なお、「先生」に対してこれらの文を述べる場合には、「先生」=「相手」という関係が成立しているので、結果として、どちらの文も同じように働くことになる。このように、行為の「向かう先」と、話や文章の「相手」が一致する場合に限っては謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱはどちらも事実上同じように使うことが出来る。謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱとが似ているように映るのはこのためであるが、「向かう

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先」と「相手」とが一致しない場合には、謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱの働きの違いに留意して使う必要がある。

ウ. 「ます」との関係についての違い

謙譲語Ⅰは、「ます」を伴わずに使うことも出来る。例えば、「明日先生のところに伺うよ。」などと、「先生」以外の人に述べることがある。

一方、謙譲語Ⅱは、一般に「ます」を伴って使う。例えば、「明日先生のところに参るよ。」などと述べるのは不自然である。

以上、ア、イ、ウのような謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱの違いは要するに、謙譲語Ⅰは

「向かう先」(相手側又は第三者)に対する敬語、謙譲語Ⅱは「相手」に対する敬語であるということに基づくものである。

「です」「ます」は「相手」に対する敬語として働く。この種の敬語は、一般に「丁寧語」と呼ばれている。

なお、これらと同じタイプで、更に丁寧さの度合いが高い敬語として「(で)ございます」がある。

4.2 丁寧語の形

【「です」「ます」を付けるもの】

聞き手が上位の場合の「です・ます」で終わる文体を敬体、同等や下位にある場合に使われる「だ」や動詞・形容詞の終止形で終わる文体を常体と呼ぶ。 丁寧を表す語形変化は以下の通りであるが、文法カテゴリーに応じて語彙を変える場合があり、文法的には丁寧語というよりも丁寧体として分析される。

●ます - 見る→見ます(意志)/見た→見ました(過去)/見ない→見ません

(否定)/見よう→見ましょう(勧誘)…

●です

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・形容詞 - 忙しい→忙しいです(現在)/忙しかった→忙しかったです(過去)/忙しくない→忙しくありません(否定)/忙しいだろう→忙しいでしょう(推測)…

▪ ウ音便を用いて「ございます」に接続させる形(例:忙しゅうございます

)が正しい丁寧体とされてきたが、現在は非主流となりつつある。

・形容動詞 - きれいだ→きれいです(現在)/きれいだった→きれいでした

(過去)/きれいではない→きれいではありません(否定)/きれいだろう→きれいでしょう(推測)…

・名詞 + コピュラ - 学生だ→学生です(現在)/学生だった→学生でした

(過去)/学生ではない→学生ではありません/学生だろう→学生でしょう(推測)…

「向かう先」を立てるものでもない。更に、3,4 の謙譲語Ⅱや丁寧語とも違って、

「相手」に丁重に、或いは丁寧に述べているということでもない。

すなわち、上記の例文に用いられているような「お酒」は「酒」という言い方と比較して、「物事を、美化して述べている」のだと見られる。

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この「お酒」のような言い方は、この意味で、前述の1~4で述べた狭い意味での敬語とは、性質の異なるものである。だが、「行為者」「向かう先」「相手」などに配慮して述べる時には、このような言い方が表れやすくなる。例えば、「先生は酒を召し上がりますか。」や「先生、酒をお注ぎしましょう。」の代わりに、「先生はお酒を召し上がりますか。」や「先生、お酒をお注ぎしましょう。」と述べる方が相応しい。こうした点から、広い意味では、敬語と位置付けることが出来るものである。この種の語は、一般に「美化語」と呼ばれている。

5.2 美化語の形

美化語のほとんどは名詞或いは「名詞+する」型の動詞であり、一般に「お酒」「お料理(する)」のように、「お」を付ける。なお、一部には「御祝儀」のように、

「御」による美化語も語彙を変えて作られるものもある。

●「お・ご」をつける

店→お店 茶→お茶 菓子→お菓子 食事→お食事 飲み物→お飲み物 下劣→お下劣 下品→お下品 。。。

●語彙を変える

めし→ごはん 腹→おなか 便所→お手洗い

6 敬語以外の待遇表現

敬語以外の待遇表現も 話題中の人物に関する素材待遇表現と、聞き手に対する対者待遇表現に分けられる。素材待遇表現には、尊大語・侮蔑語がある。対者待遇表現は丁寧語である 「です・ます」をつけないぞんざいな語を用いることで聞き手が同等あるいは下位であることが表現される。また、特に聞き手を卑下し、罵倒する表現を卑罵語 として分類することがある。

6.1 尊大語

通常の敬語表現とは逆に、相手の側に謙譲語を、自分の側に尊敬語を使う表現。万葉集の頃から見られる表現だが、絶対的な身分の違いを前提とした表現なので、そのような身分関係のない近年では日常会話に冗談以外で用いられることは無い。

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「正しい敬語」が体系づけられる前からあるものなので昔の人はそのようには意識していなかっただろうが、現代の学校教育を受けた者にとっては、敬語の使い方をわざと間違えることで相手に対する軽蔑や自らの身分の高さを表すものだと考えると分かりやすいかもしれない。

今日、尊大語が見られるのはフィクションの中が主である。時代劇において殿様が使ったり、ファンタジーの魔王クラスの悪役や SF において人類を見下す悪魔のような存在が使ったりする。キャラの強さや魅力の演出、あるいは一種のギャグとして使われることも多い。

• 貴様を倒すのはこの○○様だ。(自らに尊敬語の「様」を付加)

• 馬車を用意致せ(時代劇によく見られる例)

• 人間どもよ、崇め奉るがよい(ファンタジーや SF に現れそうな例。私どもに見られる謙譲語の「ども」を相手への呼びかけに用いると同時に、謙譲語「奉る」を相手の動作に付している)

また天皇家は現代の日本において唯一絶対的な身分の違いを有していると(歴史的経緯から)みなされることも少なくないため、自敬表現が用いられることがある。

• (かぐや姫を帝の妃として入内させたなら) 翁に冠を、などか賜はせざらん (竹取物語五、帝の求婚。帝が自ら尊敬語の「賜はす」を用いている)

6.2 侮蔑語

尊大語が通常の尊敬語と謙譲語を逆用することによって話題中の人物が下位であることを示すものであるのに対し、尊敬語とは逆の機能をもち、話題中の 人物が話し手よりも下位であることを示すために用いられる語彙や言語形式がある。これを侮蔑語あるいは軽卑語という。ある種の下品な表現のためあまり注目 されないが、日本語の待遇表現の一角を成すものではある。

謙譲語とは動作の主を低めるという機能は同じだが、謙譲語が動作の受け手を相対的に高めることに主眼があるのに対し、侮蔑語はもっぱら動作主を低めるために用いられる。

動詞には「~やがる」「~くさる」「~よる」など侮蔑の助動詞を接続するほか、

「死ぬ-くたばる」「食べる-食らう」「言う-ぬかす/ほざく/こく」など、特別の形をもつものもある。

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名詞には「糞」「腐れ」などを前置する。

人名に関しては、呼び捨てにすること自体が軽蔑表現になる他、「~の野郎」「~のガキ」のような表現がある。

以上日本語における敬語表現について概説してきた。敬語の用法は文化によって異なる上下関係に依存しているため、非母語話者にとっては学習上の難点となることがある

。日本語の場合は、外国人でも教科書を丸暗記すれば「正しい敬語」が使えるので、むしろ学習が容易だとする意見もある。

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第 2 章 ベトナム語における敬語に相当する表現

日本語には高度な体系化された敬語がある。日本語は非常に間接的な言い方を好む特殊な言語であると言われている。また多くの場合、これと対照的にベトナム語は直接にものを言う言語であると言われてきた。

確かにベトナム語が日本語に比べ直接的である面は多い。しかし、すべての面においてそうであるわけではない。ベトナム語でもさまざまな場面で直接さは避けられる。そしてベトナム語で直接さを避ける目的は日本語の場合と同じく、主として人間関係を良好に保つことにある。つまり、「和」が狙いである。

しかし、「和」とは具体的に何であるのかを詳細に見ていくと、ベトナム文化と日本文化ではいくつかの著しい違いが見られる。人を丁寧に待遇したいという動機が同じでも、何を丁寧に考えるかは同じではない。日本文化で丁寧と考えられることがベトナム文化でも丁寧と考えられるとは限らない。日本語での丁寧さを直訳的にベトナム語に翻訳すると、それがベトナム語では無礼にあたることもある。そして、それがまったく不本意な誤解を招くこともある。その共通点及び相違点が誤用の種になる可能性がある。それゆえ、本稿では日本語における敬語表現の概念・分類を解説した上、ベトナムにおける敬語に相当する表現についても解説していく。

1.「ベトナム語において敬語に相当する表現がある」という観点

大野晋(1977)は「敬語は、相手との社会的、心理的距離を調節する言語的手段である。この意味では、敬語は世界中のすべての言語にあるはずの普遍的現象である。それがいかにも日本語にしかない特殊な現象と見られることがあるのは、その言語的手段が言語表現としてだけではなく、特定の社会的、心理的距離に対応する特定の言語形式が組織的に整備されているからである(p.66)」と述べているように、敬語表現は世界諸言語のいずれにも存在するはずであるが、その表れ方が言語によって異なるのみであると思われる。

本来、日本語を軸に世界諸言語の敬語は大きく二種類に分けられるといわれる(南1987)。

①日本語型:日本語と同様に敬語が組織的に整備されて、特定の「言語形式」「特定の動詞・人称代名詞」の形で表現されるものである。韓国語、ジャワ語などを始め東南アジアの数多くの言語がこのグループに属していると考えられる。

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、敬語は主に「言語表現・表現形式」の形で表れる。英語を含め、印欧諸言語のほとんどの言語はこのグループに属していると思われる。ある言語の敬語表現が「日本語型」に属する指標となるのは、「特定の動詞・特定の人称代名詞」という言語形式であると思われる。例えば、「行く」という動詞を示す尊敬語の「いらっしゃる、・お越しくださる・おみえになる等」や、その謙譲語として用いられる「伺う・参る・参上する」はその例である。英語を含め、ほとんどの印欧諸語の敬語にはこのような特定の動詞が存在していないといえる。あるいは、人称代名詞に関しても、例えば、日本語型である日本語には一人称代名詞のみを考えても「わたくし・わたし・おれ・僕・拙者・小生・うち」など様々なニュアンスを伝える人称代名詞が存在するが、このような特定なものは英語などの印欧諸語には存在しない。

一方、ベトナム語で文末に敬語的成分の ạ を付けることなどベトナム語を学習し始めた者でも知っている例を始め、学校や軍隊で生徒や兵士の教師や上官に対する応答の文

頭にthưa (thưa thầy, thưa cô, thưa thủ trưởng) を付ける「相手との社会的、心理的距離を調節する言語的手段」がある。そして、敬語の人称代名詞もあり、「Ăn(食べる)」という動詞を示す尊敬語の「 Xơi, dùng(召し上がる)」という特定の動詞も存在する。このように、ベトナム語にも敬語に相当する表現があり、「日本語型」のグループに属していると言える。ただし、日本語ほど高度に体系化された敬語ではない。

2 ベトナム語における敬語に相当する表現表現

日本語の敬語表現においては謙譲語 I と謙譲語 II が区分されている。謙譲語 I は自分側から相手側又は第三者に向かう行為・物事などについて、その向かう先の人物を立てて述べるものである。謙譲語 II は自分側の行為・物事などを、話や文章の相手に対して丁重に述べるものである。しかし、ベトナム語の敬語表現においてはそのように謙譲語

I と謙譲語 II が区分されず、同一の言葉が謙譲語 I であれば、謙譲語 II の用法や働きも持つのが一般である。従って、本章では、謙譲語 I と謙譲語 II を謙譲語の一つにまとめ

、日本語の尊敬語・謙譲語(謙譲語 I・謙譲語 II)・丁寧語・美化語の分類形式を借用し、典型的なベトナム語の敬語表現を考察していく。

また、ベトナム語において「Mồm(口)」という名詞を示す尊敬語と謙譲語 II のいずれにも属する「Miệng(お口)」のような敬語の特定の名詞は非常に少ない。それ故

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、それを除き、ここでは、ベトナム語の上述のような特定の動詞、人称代名詞及びベトナム語の特徴である敬語的成分(ạ, dạ, xin, kính)を中心に述べていく。

2.1 ベトナム語における敬語の特定の動詞

日本語に比べると、ベトナム語における敬語の特定の動詞の量は比較的に少ないと考えられる。日本語とベトナム語には共通する敬語表現の特定の動詞が存在する。「Ăn

(食べる)、Ngủ(寝る)、Nghe(聴く)、Xem(見る)、Cho(あげる)、Nhận(もらう)」等といった動詞はその一例であるが、それはそれらの動詞が昔から日常会話に最も頻繁に用いられてきたからであろう。一方、ベトナム語においては「Dạy(教える

)」という動詞を示す尊敬語の「Dạy dỗ, chỉ bảo(お教えくださる)」という特定の動詞があるが、日本語においては「教える」という動詞を示す尊敬語の「お教えになる」

「お教えなさる」はあるが、特定の動詞はないように、日本語の敬語にない特定の動詞はベトナム語にあるものもある。

以下にベトナム語における代表的な敬語の特定の動詞を表に示す。ただし、封建時代や殖民地時代の敬語は、現在用いられなくなっているので、ここでは、ベトナム近代語のみに留めてある。

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2.2 ベトナム語における人称代名詞

2.2.1 人称代名詞の一覧表

ベトナム語には人を指す代名詞が数多くあり、それらは相手との関係(親族関係の有無、性別、年齢、地位の上下関係、親疎の度合いなど)や場面によって使い分けられる

。親族名称が親族関係の有無に関係なく、また全ての人称で広く用いられるのがベトナム語の特徴である。

Anh Chị Tôi Em trai Em gái

(兄) (姉) (私) (弟) (妹)

(図 1)

日本語でも相手によって「あなた」「君」「お前」などを使い分けるが、ベトナム語でも性別、年齢、人間関係(上下関係、親しさの程度等)を総合的に考慮し、複数ある

「あなた」に当たる言葉の中から一つを選び出す。上述のベトナム語の特徴であるが、ベトナム語では「兄」「姉」等家族内の関係を示す言葉が、その元々の意味(兄や姉等

Bà Chị

Em

Các ông Các anh Các cô

Các bà Các chị Các em

3人称 Ông ấy Bà ấy Các ông ấy Các bà ấy

Trang 37

Các chị ấy Các em ấy

(表 5)

2.2.2 人称代名詞の用法

❖ 1人称について

単数の Tôi(私)は男女を問わず、又、改まった場面でも使うことができ、丁寧度の高い言葉である。複数の Chúng tôi は「聞き手を含まない私達」、 Chúng ta は「聞き手を含む私達」を表す。

❖ 3人称について

上記2人称の後ろに ấy を付けたもの他に、丁寧ではない nó(単数)、chúng nó(複数)や中立的な họ(複数)等がある。

❖ 人を指す言葉の整理

表 5 には基本的な人称代名詞が載せてあるが、ベトナム人の間では、実に多様な代名詞が使い分けられる。取り分けて1人称は日常生活では Tôi 以外の代名詞が好まれる

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。以下の表 6 では斜線は男性(左)と女性(右)を区別し、( )内は自分から見た相手の年代を表す。

• 恋人や夫婦の間では、男性は自分を Anh、相手の女性を Em、逆に女性は自分を Em、相手の男性を Anh と呼ぶ。だだし、夫婦も歳をとり、孫ができる頃になると、自分を Tôi、相手を Ông/bà と呼ぶようになる。

2.2.3 人称代名詞の選定ポイント

ベトナム語に人称代名詞が多くあると言われている。どの人称代名詞を選択するかは相手との関係(親族関係の有無、性別、年齢、地位の上下関係、親疎の度合いなど)や場面によるが、基本的には年齢により決める。又、一般的にベトナム人は敬語として相手に対して自分より目上の人を示す人称代名詞を用い、自分のことを目下又年下の人を示す人称代名詞により呼ぶ。

従って、初対面の時など、自分より年上か年下か分からない場合は原則として相手のことを目上の人を示す人称代名詞により呼ぶ。このような場面では、面白いことに、互

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いが同じ呼び方を用いるのである。例えば、初めて会った女性達は二人とも相手のことを「Chị」、自分のことを「Em」と呼ぶのである。

また、教師と学生との関係においては、学生は男女とも教師に対して自分を Em(私

)と呼ぶ。また、教師も学生・生徒を Em(あなた)と呼ぶ。ただし、学生が社会人入学などであり、年齢が高い場合には、教師の側に「大人の学生に Em を使うと、一人前として扱っていないという印象を与えてしまうので、Em を避けて Anh 又は Chị を使おう」という配慮が働くこともある。

このように、年齢を基にし、人称代名詞を選択するのがベトナム語の人称代名詞の選定ポイントだといえる。

2.3 ベトナム語における敬語的成分

表2、表3、表4に載ってある少数の敬語の特定の動詞を除けば、ベトナム語の敬語においては敬意を表したり、謙ったり、物事を丁寧に言いたい時は通常使用する語に敬語的成分(ạ, dạ, xin, kính)を付けて用いる。そのような敬語的成分はいくつかあるが

、取り分けて頻繁に用いられ、日本語の敬語に比べ大変使用しやすいと考えられる。

2.3.1「 ạ」について

「ạ」は文末詞である。「ạ」の用法は原則として文末につけることだけで簡単にその会話文を丁寧にできる。日本語の丁寧語の「です」「ます」に相当する。

「ạ」を使う疑問文:

Bác trai có nhà không? お父さんはいる?

→ Bác trai có nhà không ạ? お父さんはいらっしゃいますか。

「ạ」を使う平叙文:

Cháu có hai quyển vở ノートを二冊持っている。

→ Cháu có hai quyển vở ạ ノートを二冊持っております。

「ạ」を使う命令文:

Cho cháu đi với 私を連れて行ってよ。

→ Cho cháu đi với ạ 私を連れて行ってください。

「ạ」を使う感嘆文:

Đẹp quá! きれい過ぎる。

→ Đẹp quá ạ! きれい過ぎます。

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2.3.2「dạ」について

「dạ」は目上の人に対する応答を丁寧にする言葉である。「thưa」を更に「dạ」の後ろに置き、「ạ」を文末に付けると最も丁寧な形になる。

Xin の使い方は以下の通りである。

① 文頭に Xin を付け加え、丁寧さの度合いを高める。

Chào anh → Xin chào anh こんにちは。

Cảm ơn (chị) → Xin cảm ơn (chị) ありがとうございます。

Mời anh → Xin mời (anh) どうぞ。

Tạm biệt anh → Xin tạm biệt anh さようなら。

② Xin lỗi の形

Xin lỗi すみません。(呼びかけ)

Xin lỗi ごめんなさい。(謝罪)

③ 依頼の「~てください」

Xin anh giúp tôi どうぞ手伝ってください。

これは「Tôi xin + [人] +動作」(Xin は「(人に)請う、要求する」の意味)の文型から Tôi が脱落した形式である。依頼するとき、Xin~の方

が Nhờ~(Nhờ anh giúp tôi.) より丁寧度が高い表現である。

④ 許可を求める時の「~させていただく」

Tôi xin phép được nghỉ./Xin cho phép tôi được nghỉ.「休ませていただきます。

Ngày đăng: 23/09/2020, 22:21

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