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文学作品における日本語とベトナム語の文脈指示詞の対照 -文脈指示を中心に-= đối chiếu từ chỉ thị trong tiếng Nhật và tiếng Việt qua các tác phẩm văn học

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ハノイ国家大学 外国語大学 大学院 ĐINH THỊ THU HƯƠNG 文学作品における日本語とベトナム語の指示詞の対照 ―文脈指示を中心に― ĐỐI CHIẾU TỪ CHỈ THỊ TRONG TIẾNG NHẬT VÀ TIẾNG VIỆT QUA CÁC TÁC PHẨM VĂN HỌC 修士論文 専攻科目: 日本語学 専攻番号:6022020

Trang 1

ハノイ国家大学 外国語大学 大学院

ĐINH THỊ THU HƯƠNG

文学作品における日本語とベトナム語の指示詞の対照

―文脈指示を中心に―

ĐỐI CHIẾU TỪ CHỈ THỊ TRONG TIẾNG NHẬT VÀ TIẾNG

VIỆT QUA CÁC TÁC PHẨM VĂN HỌC

修士論文

専攻科目: 日本語学

専攻番号:60220209

ハノイ, 2015

Trang 2

ĐẠI HỌC QUỐC GIA HÀ NỘI

TRƯỜNG ĐẠI HỌC NGOẠI NGỮ

KHOA SAU ĐẠI HỌC

-o0o -

ĐINH THỊ THU HƯƠNG

ĐỐI CHIẾU TỪ CHỈ THỊ TRONG TIẾNG NHẬT VÀ TIẾNG VIỆT QUA CÁC TÁC PHẨM VĂN HỌC 文学作品における日本語とベトナム語の指示詞の対照

―文脈指示を中心に―

LUẬN VĂN THẠC SỸ

Chuyên ngành: Ngôn ngữ Nhật Bản

Mã số: 60220209 Người hướng dẫn: PGS.TS Nguyễn Thị Bích Hà

HÀ NỘI – NĂM 2015

Trang 3

保証書

課程論文は文学作品における日本語とベトナム語の指示詞の対照を テーマとして作成しました。指導教師の教えるを元に、自分で論文 を書くのを保証いたします。他の論文からこピーしないことにしま た。

Đinh Thị Thu Hương

Trang 4

謝辞

本論を行うために多くの方々から、ご協力及び援助をいただきま した。まず、ハノイ貿易大学の Nguyễn Thị Bích Hà 先生は本論文に 対して、深い関心を示してくださり、構想の大枠から問題設定まで、 懇切なるご指導を賜りました。厚く感謝申し上げたいと思います。 また、東洋言語文化学部の先生方が貴重なご意見を下さったことに も心から感謝いたします。

Trang 5

本稿では、まず日本語の指示詞に関する理論を簡潔にまとめ、そ れから、それに対応するベトナム語の指示詞に関する理論も紹介し た。その上、日本語の指示詞とベトナム語の指示詞を比較してみた。 その結果、日本語の指示詞とベトナム語の指示詞は共通点も相違点 も多いことは明らかとなった。

次に『窓際のトットちゃん』と『キッチン』という小説を資料に し、先行研究の結果を踏まえ、実際の使用頻度、実践的に各用法・ 使い分けを考察した。文学における指示詞の翻訳の注意点・特徴を

17 にまとめ、ベトナム人学習者に対して翻訳のヒント・提案として 打ち上げられた。

最後に、ベトナム人日本語学習者に対する効果的な指示詞の指導 法を提示するために中・上級レベルのベトナム人学習者の日本語の 指示詞の用法の理解度、運用力についての調査の結果を分析した。

Trang 6

1.1.1 日本語の指示詞とは 5 1.1.2 指示詞の分類 6 1.1.2.1 現場指示 6 1.1.2.2 文脈指示 8 1.1.3 指示詞の意味・用法 10 1.2 ベトナム語の指示代詞 13 1.2.1 ベトナム語の指示代詞とは何か 13 1.2.2 ベトナム語の指示代詞の分類 13 1.3 日本語指示詞とベトナム語指示代詞(文脈指示を中心に) 21

Trang 7

第3章:ベトナム人学習者に対する日本語の指示詞の理解度・運用力の調査

55 3.1 中・上級レベルのベトナム人学習者の理解度及び運用力についての調査

55

3.1.1 調査対象者および調査方法 55 3.1.2 調査の結果 56 3.1.3 調査の結果による考察と分析 57 3.2 日本語の指示詞指導法への提案 60 3.2.1日本語の指示詞の指導法 60 3.2.2読解問題を使用する指導法 61 3.2.2.1中級レベルの問題 61 3.2.2.2上級レベルの問題 64

Trang 8

序論

1.1 研究の背景

吉田(1980)は指示詞は、原初的な言語機能をもった語彙群であるため、ほとんどの言語に存在していると述べている。それに、どの言葉にも会話のみならず文書にも指示詞が重要な役割を果たしている。日本語学習者が初級で必ず出合う指示詞「こ・そ・あ」は、一見、かなり簡単な文法表現だと思われがちであるが、上級になっても指示詞の誤用が目立つことは早くから指摘されており、学習者にとって習得が難しい文法項目であると言われている。にもかかわらず、指示詞は実際の授業では他の学習項目に比べ、指導や教科書などの説明も不充分であると言えるだろう。初級段階で手にする『みんなの日本語』という日本語教科書をはじめ、ベトナム人により編集された『Ngu phap tieng Nhat(日本語文法)』などにおいて、いわゆる「こ・そ・あ・ど」はごく簡略的なもので詳細な内容までは教わらない。例えば「これ」は話し手から近いものを、「それ」は聞き手から近いものを、「あれ」はどちらからも遠いものを指し示す。

実は初級レベルでは、それだけ習得しておけば十分であるが、中級からの文書にある指示詞を理解するには絶対足りないと言わざるを得ない。しかし、会話用のテキストをはじめ、ほとんどの文法研究書も指示詞は取り扱われていないのが実情である。そのため、ベトナムの学習者は初級で習った知識を基本として中級・上級の指示詞の意味・用法を自分で学習するしかない。また、指示詞に関する母語(ベトナム語)と日本語の共通点に頼って理解しなければならない。ベトナム語の場合、「Đại từ chỉ định」(指示詞)は日本語の指示詞に相当する。

ところが、ベトナム語における指示詞は日本語の指示詞と全く同じわけではない。ベトナム人向けの日本語教育の立場から見た場合、日本語の指示詞にはさまざまな用法があり、その上、母語の指示詞の知識も把握していないこともよくある。結局、母語に頼り過ぎ、使いこなすのはもとより正確な理解も困難になってしまう。

このように、「こ・そ・あ」の指示詞はベトナム人日本語学習者の指示詞の理解・運用力を向上することはベトナム人にとって日本語教育に不可欠なものであろうと考えられる。

1.2 研究の目的

日本語学習者は話すこと、書くことがより自然になること、徹底的に理解できる読

Trang 9

解力を図るために、文法と語彙などの知識以外に、指示詞をうまく取り扱うことは欠かせないと言われている。しかし、上記のようにベトナム人日本語学習者は文法、語彙力が中・上級に達しても、指示詞の理解・運用力が高くないと見られている。それで、本稿では指示詞の「こ・そ・あ」、特に文脈の指示詞を正確に理解でき、更に使用できるように日本語とベトナム語の指示詞に関する理論を洗い直し、比較しつつその使いわけをまとめてみる。その上で、日本語の指示詞とベトナム語の指示詞の共通点及び相違点を分析する。また、日本の小説を通じて実際に使用された指示詞を調査し、その使い分けは教科書に記載された理論ではどうなるか、そしてベトナム語にどう翻訳されたかを考察してみたい。それによって、日本語の指示詞がよりうまく使用でき、特にベトナム人学習者の日越・越日に対する通訳・翻訳能力が向上できるであろうかと考える。

1.3 研究範囲

本論では日本語とベトナム語に関する理論を簡潔にまとめるが、文脈指示の「こ・そ・あ」を中心に研究を行い、指示詞の疑問詞である「ど」を取り扱う対象に入れない。なぜなら、文脈指示こそ中・上級の日本語学習者がよく迷うからである。疑問詞の「ど」は他の指示詞に比べ文脈にあまり現れず、疑問の意味しか持っていないため、他の意味と間違えることがないと考えられる。

そして、本研究は指示詞を理論的に掘り下げず、日本の文学作品(『窓際のトットちゃん』、『キッチン』)とその文学作品のベトナム語版を対照し、実践的な意味・用法、翻訳方法を考察する。

1.4 先行研究

日本語の指示詞は、古くから日本語学・国語学の分野において多大な関心が持たれており、指示詞にかかわる研究は様々な角度から考察され、またその数も多い。まず、日本語の指示詞研究は佐久間(1951)から始まったと言っても過言ではない。佐久間はそれまで主流であった「距離区別説」に対して、(1)話し手(一人称)、聞き手(二人称)、それ以外(三人称)という人称のなわばり(勢力範囲)によって

「こ・そ・あ」を区別する「人称区分説」を提唱し、その後、また指示詞の方向性も決定付けている。

コ:発言者・話し手のとどく範囲にあるものを指す。

ソ:話し相手の手のとどく範囲、自由に取れる区域内のものを指す。

Trang 10

ア:コ・ソの勢力圏外にあるものを指す。

佐久間は、現場指示に加えて、従来ほとんど区別されていなかった文脈指示的用法を見出した点で指示詞研究に大きく貢献したものの、文脈指示については人称との関係を認めるに留まっていると言えよう。

次に、久野(1973)は文脈指示に関して、話し手と聞き手の知識を導入し、より詳細に考察した。

それから、黒田(1979)は、聞き手がいない言語使用(独り言)においても指示詞が使われ得ることを考察し、「聞き手の知識」を含む久野の語用論的規定からの脱却を試みる。黒田は指示詞の用法を現場指示・文脈指示ではなく、「独立的用法・照応的用法」に分類した。黒田は久野の提案した「知識」を、「直接的知識/観念的知識」としてより明確にし、独立的・照応的用法に対する統一的説明を試みている点で評価できる。しかし、問題としてはコ系についてはほとんど触れられていないことである。 言語形式の使用法の記述から「聞き手の知識」を排除するという黒田の考えを更に発展させた研究としては、田窪・金水(1996)、金水(1999)の研究が挙げられる。メンタル・スペース理論を対話的談話に拡張した動的な談話理論(談話管理理論)を基盤に、指示詞を記述した研究である

以上は現在、主流をなしているように見える研究傾向である。ここでは、それと異なった方向性を提示している研究として、阪田(1971)、李(2002)の研究が挙げられる。

一方、ベトナム語の指示詞にかかわる研究はそれほど重視されていない。最初のベトナム語文法の研究と思われている 『Giáo trình về Việt Ngữ』において、Hoàng Tuệ、

Lê Cận、 Cù Đình Tú(1962)に文法機能をもとに「Chỉ từ」(指詞)という名称が生まれたが、Nguyễn Kim Thản(1963)は『Nghiên cứu về ngữ pháp tiếng Việt(ベトナム語文法研究)』では初めてベトナム語の「Đại từ chỉ định(直訳:指定代詞)」という概念を定めた。その時になって初めて「Đại từ chỉ định」が注目された。それから、

Lê Đình Tư,Vũ Ngọc Cẩn (2009)や Diệp Quang Ban (2008)などが『Ngữ pháp tiếng Việt

(ベトナム語の文法)』にベトナム語の「Đại từ chỉ định(直訳:指示詞)」に関して様々な視点から研究を行った。Diệp Quang Ban(2005)はベトナム語の指示詞を

「空間」、「時間」、「数量」といった 3 つの意味に分類した。それから Lê Đình Tư,Vũ Ngọc Cẩn (2009)は違う視点でベトナム語の指示詞を「位置」、「時間」、「状態」という 3 つの意味に分類した。

また、日本語の指示詞の対照研究について、日本語と中国語の指示詞の対照が最も

Trang 11

多い。迫田(1997)、渡邊(1996)、安(2000)、高(2002)などは中国語による負の移転、またその原因を分析した。同じように日本語と韓国語、英語、タイ語の指示詞の対照に関する研究が数多くある。しかし、残念ながら日本語とベトナム語の指示詞の対照研究はまだないと言える。

1.5 研究方法

本研究では、今までの先行研究、関連研究を基に筆者の観点を加え、更に整理・分析・統合した。

第1章では、日本語とベトナム語の指示詞に関する理論的な資料、先行研究を参考にして、その分類と特徴をまとめる。それに基づき、日本語の指示詞とベトナム語の指示詞を対照した上で、理論上の共通点と相違点を挙げる。

第 2 章では、 黒柳徹子の『窓際のトットちゃん』、吉本ばななの『キッチン』といった小説から文脈の指示詞を使った例文を取り上げ、それらに当てはまるベトナム語の表現を詳細に考察する。例文の考察から、結論を出す。

第 3 章では、ヌイチュック日本語センターのN3、N2 対策クラスを終了した

63 名を対象にして、日本語の指示詞の使用に関するベトナム人日本語学習者の現状の調査を紹介し、その結果を分析する。また、その結果を踏まえて、日本語を教える教師の立場から、適切な指導方法を考えてみる。それに、誤用を避けられる解決、そして学習者の指示詞運用力を向上させる提案を出す。

1.6 研究の構成

本論は、序論、結論、謝辞、付録を除いて、第1章、第2章、第3章という三つの部分からなる。

第一に章では、各先行研究を観覧して、日本語とベトナム語の指示詞の概念、分類、意味論的・語用論的な特徴についてまとめた上で、日本語の指示詞とベトナム語の指示詞を対照し、その共通点と相違点を明らかにする。

第二に章では、文学作品における日本語とベトナム語の文脈指示を考察する。その考察の結果に基づいて日本語の文学作品の翻訳おける指示詞の翻訳の特徴、傾向をまとめ、翻訳指導への提案を出す。

第三に章では、指示詞の理解度・運用力の調査の概要、調査結果およびその分析を述べる。また、日本語の指示詞を教える方法、及び日本語学習者の運用力を高める方法を提案する。

Trang 12

第 1 章 日本語とベトナム語の指示詞の対照

上述のように「こ・そ・あ」は名詞、形容詞、副詞など広く分布しているため、指示詞に関する研究は様々な面に渡り、またその数も多い。本研究では『初級を教える人のための日本語・文法ハンドブック』『中上級を教える人のための日本語・文法ハンドブック』『文法の時間』など先行文献により取り上げられた重要な論点を紹介する。

1.1 日本語の指示詞

1.1.1 日本語の指示詞とは

今まで指示詞について様々な定義がなされてきた。ここでは、そのうちの代表的な定義として『日本語辞典』での指示詞の定義は以下のようである。。

下の表に示すように、物事、方角、場所、人、状態などを指し示す語には、「こ」で始まる語(こ系列の語)、「そ」で始まる語(そ系列の語)、「あ」で始まる語(あ系列の語)がある。これらの語は、品詞の面では、代名詞、連体詞、副詞などいくつかの品詞にわたっているが、いずれも何かを直接指し示す働きをするという点では一致している。そこで、これらの語を一括して、指示詞とし、その語頭の形によって

あちら あっち

Trang 13

また「あ系列」は、古くは「か系列」であった。「か」は現在でも、「かれ(彼)」、

「はるかかなた」、「かの有名な××」などに残っている。

1.1.2 指示詞の分類

先行研究者によると、日本語の指示詞には様々な形式があるが、本稿には従来の指示詞の研究を編集した村田(2005)の分類に基づき、下記のように指示詞の種類を分類している。「こ・そ・あ」による指示の用法は、大きく 2 つに分けられる。一つは指すものが話の現場にある場合(現場指示)で、もう一つは指すものが話の中に出てくる場合(文脈指示)である。

1.1.2.1 現場指示

「現場指示」とは指示対象が語感で認識可能な場合の指示である。また会話の現場にあるものを指すためによく用いられるので、表現に際して、指で指し示すなどの行為を伴うことが多い。この用法は、話し手と聞き手の位置関係によって、さらに「立型」と「融合型」に分けて考えることが出来る。

(1)対立型:

現場で話し手と聞き手が離れた位置にあるときには対立型と呼ばれる原理によって指示詞が使い分けられる。対立型における原理は次の通りである。

こ 話し手

そ 聞き手

Trang 14

いるという考え方である。

しかし、次の例などを考えると、「こ・そ・あ」が対象との物理的な距離によって使い分けられるのではないことが分かるだろう。

(1):(歯科医院で)

医者:ここはどう?痛い?(と、器具で歯に触る)

患者:そこは痛くありません。

物理的には話し手に属するものであっても、その会話の中で心理的に相手の領域に入っていると話し手が判断した場合には、「そ」が用いられるのである。

このようなことから、「こ・そ・あ」の使い分けは、物理的な距離より、心理的な領域(なわばり)の意識によって使い分けが行われていると考えられる。

(2)融合型

現場で話し手と聞き手が同じ位置にいる場合や聞き手がいない場合は、融合型という原理で指示詞が使い分けられる。その原理は図示すと次のようになる。

Trang 15

(3)慣用句と「こ・そ・あ」

三上(1955)は対立型:「こ」と「そ」の対立、融合型:「こ」と「あ」の対立を述べた。このような対立構造は日常の慣用句にも反映されている。「こ・そ・あ」の慣用句は次のように「こ」と「そ」の組み合わせか、「こ」と「あ」の組み合わせであって、「そ」と「あ」の組み合わさった慣用句は見当らない。そして、どの組み合わせでも、必ず「そ」あるいは「あ」が先で、「こ」が後である。

ろに明示されるものである。」

この用法は、さらに、指示詞がその前の部分の内容を指す場合(前方照応)と、指示詞がその後ろの部分の内容を指す場合(後方照応)とに分けて考えることが出来る。

(1)前の部分を指す

「前方照応」と呼ばれる用法である。「こ・そ・あ」は、それぞれ次のように用いられる。

a) こ

直前の話題の対象を指す。「そ」で置き換えられるものが多いが、「こ」で表すことによって、その対象を特に話題として話を続ける、対象を話し手に近いものとしても述べるなどのニュアンスが生じる。

(9)中田という男がいるんだが、〔こいつ/そいつ〕はすごいんだ。

(10)私は今、西宮という町に住んでいる。〔この/?その〕町は大阪と神戸の間に

Trang 16

ある住宅・工業都市であるが、「甲子園球場」のある町であることを知っている人は案外少ない。(金水敏 1989 提載例)

(10)については金水(1989)は「ソよりもがコ好まれる文脈の一例である。ソを用いるとややよそよそしい感じがするのは、『自分の住んでいる町』という限定の効果によるものと思われる。」という見解がある。

b) そ

話題に出てきた対象を指したり、相手の述べた内容を指したりする。また、仮定の内容を指す場合にも用いる。「こ」で置き換えられものもあるが、「そ」を用いることで、対象を客観的に扱う、対象を突き放して見るなどの印象を与える。

(17)おーい、かあさん、あれは、あるか。あれじゃ、あれ!

(18)あの湯豆腐はうまかったなぁ...。(独り言)

「あ」の使用は共通理解のある内容について行われる。したがって、話し手のみが分かっていて、聞き手が話し手と共通の理解をしていない場合には、会話が進まない。(17)で、聞き手(かあさん)も共通の理解をしていれば、「あれは、きのう机の引き出しにしまったじゃないですか」などという具合に会話が進むだろうが、共通の理解が得られない場合には、「あれ」が何かを指すか聞き手には分からない。「あれって何ですか」ということになる。

Trang 17

なお、「あ」は、「こ」や「そ」とは異なり、指示される語がその直前にあるとは限らない。(16)では少し前の箇所に、「三日目の日没までに戻る」という王との約束が記されている。また、(17)(18)では具体的な名称などでの設定はなされておらず、指示対象は思考や記憶の中にある。このように、指示される語のあり方に相違があることから、文脈指示は更に、次のように分けられることもある。

(19)じゃ、こうしましょう。私が読み上げて、あなたが書く。いいですね?

(20)こんな夢を見た。腕組をして枕もとに触っていると...

(21)僕もそうなんだけど、週末はついつい夜更かしをしてしまうね。

「こ」と「そ」の使い分けについては、話し手が、先取りする内容を自分固有の情報であると意識する場合には、「こ」を、相手との共有を意識する場合には、「そ」を用いると考えられる。

1.1.3 指示詞の意味・用法

上記の理論を基盤にし、金水・木村・田窪(2001)は『日本語文法セルフマスターシリーズ 4・指示詞』で提示された 34 の指示詞の用法、そして、仁田らが編集した

『現代日本語文法 7』で記載された「こ」系しか現れない場合、「そ」系しか現れない場合、「あ」系しか現れない場合をまとめ、次の指示詞の意味・用法を取り上げる。

Trang 20

1.2 ベトナム語の指示詞

1.2.1 ベトナム語の指示詞とは何か

日本語の指示詞を研究した上で、日本語の指示詞とよく似た機能(意味・用法)を持っているベトナム語の「Đại từ chỉ định」(直訳:指定代詞)があると分かってきた。筆者の教育経験によれば、ベトナム人学習者は日本語の指示詞を習得する際に、指示詞と同じ機能を果たすベトナム語の「Đại từ chỉ định」を同様のものとみなし、そこから指示詞を類推しているのではないかと考えられる。

日本語の指示詞のように、ベトナム語の「Đại từ chỉ định」については様々な研究が行われ、名称もいくつかある。最初のベトナム語文法の研究と思われている

『Giáo trình về Việt Ngữ』において、Hoàng Tuệ、 Lê Cận、 Cù Đình Tú(1962)に文法機能をもとに「Chỉ từ」(指詞)という名称が生まれた。それから、Nguyễn Kim Thản(1963)はベトナム語の代詞を分類するとき、「này」、「 ấy」、「 kia」などを「Đại từ chỉ định」(指定代詞)と定義した。その時になって始めて「Đại từ chỉ định」が注目され、「Đại từ chỉ định」という名がベトナム語の文法の研究に定着するようになった。また、「Đại từ chỉ định」という品詞は日本語の指示詞とよく似た機能を持っているので本研究では「ベトナム語の指示詞」と翻訳する。本研究では

「Đại từ chỉ định」のことをこれ以降「ベトナム語の指示詞」を言う。

まず、ベトナム語の指示詞の定義について、ベトナムで出版された『Ngữ pháp tiếng Việt (ベトナム語文法)』(Diệp Quang Ban、2005)は。

「Chỉ định từ là những từ không mang nghĩa, chúng được dùng để quy chiếu đến một số phương diện, và giúp chỉ vật, viêc, hiện tượng trong mối quan hệ với các phương diện đó 」 訳文:指示詞はそれ自身意味を持っていないが、いくつかの方面の基点を表し、その方面と関係がある物・事・現象を指すために用いられる。

1.2.2 ベトナム語の指示詞の分類

ベトナム語の指示詞については様々な研究が行われているが、日本語の指示詞ほど盛んになっていない。Hoàng Tuệ、 Lê Cận、 Cù Đình Tú(1962) 、Nguyễn Kim Thản

(1963)などの研究者はベトナム語の指示詞を出したが、深く述べていなかった。詳細な研究として Diệp Quang Ban(2005)と Lê Đình Tư,Vũ Ngọc Cẩn (2009)が挙げられる。まず、Diệp Quang Ban(2005)はベトナム語の指示詞を「空間」、「時間」、「数量」といった 3 つの意味に分類した。それから Lê Đình Tư,Vũ Ngọc Cẩn (2009)は違う視点でベトナム語の指示詞を「位置」、「時間」、「状態」という 3 つの意味に分

Trang 21

類した。

しかし、まとめてみると、その研究の共通点、つまりベトナム語の指示詞の特徴が見られる。例えば、空間の指示詞と時間の指示詞が挙げられる。空間的位置を指す指示詞は Diệp Quang Ban(2005)が「空間の指示詞」と呼ぶが、Lê Đình Tư,Vũ Ngọc Cẩn (2009)が「位置を指す指示詞」と呼んだ。実はその指示詞の本質は同じだが、呼び方が違うだけである。これ以降、筆者はそれを「空間の指示詞」という。

また、Diệp Quang Ban(2005)が示した「数量の指示詞」は Lê Đình Tư,Vũ Ngọc Cẩn (2009)の研究になかった。一方、Lê Đình Tư,Vũ Ngọc Cẩn (2009)が定義した

「状態を指す指示詞」は Diệp Quang Ban(2005)の研究に触れていなかった。だが、指示詞はそれ自身意味を持っていないが、いくつかの方面の基点を表し、その方面と関係がある物・事・現象を指すために用いられるという指示詞の定義を照らすと、その二つは指示詞である。そのため、筆者は Diệp Quang Ban(2005)と Lê Đình Tư,Vũ Ngọc Cẩn (2009)の研究に基づき、次のように、ベトナム語の指示詞を大きく 4 つに分類し、まとめなおす。

①空間の指示詞

「này」、「kia」、「 kìa」、「 ấy」、「đấy」、「đó」、「nọ」、「đây」など話し手と話にあった対象の空間関係を表す言葉は位置を指す指示詞という。

空間関係を表すために、まず空間的な基点を確定しなければならない。その基点は話し手、聞き手、もしくは話し手か聞き手の話にあるものにしてもいい。「Tôi không thích cái áo sơ mi này(このシャツが好きじゃありません。)」と言うと、「này」によってそのシャツは話し手から近いことが分かる。

一方、次の例のように言うと、「ấy」は、「này」より聞き手から近いことが分かった。このように、その指示詞は話し手と聞き手ともの、あるいは「もの」と「もの」の空間関係を表す働きがある。

(22)Tôi thích cái áo ấy hơn cái áo này。

(このシャツよりそれのほうがすきだ。)

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表 3: 空間の指示詞の分類

②時間の指示詞

時間を指すために、「hiện tại(現在)」という時間的な基点が用いられ、それと対立するのは「không hiện tại(現在ではない)」だ。ベトナム語には「hiện tại(現在)」を意味する指示詞は「bây giờ(今)」, 「nay(今、今日)」で、「không hiện tại(現在ではない)」を意味する指示詞は「bấy giờ(その時)」である。「bấy giờ(その時)」は

話し手と近く、聞き手から遠いところを指す 指示詞:「cái này(これ)」の「này」(方言は「ni」)、「nơi đây(ここ)」の

「đây」

聞き手と近く、話し手から遠いところを指す指示詞:「cái ấy(それ)」の「ấy」、「cái đó

(それ)」の「đó」、「cái đấy

(それ)」の「đấy」

話してからも聞き手からも遠いところを指す指示詞:「cái kia(あれ)」の「kia」(方言は

「tê」)で、「đằng kia kìa(あそこ)」の「kia kìa」

話し手と聞き手がいるところ

を 指 す 指 示 詞 :「 cái này ( これ)」の「này」(方言は「ni」)、

「nơi đây(ここ)」の「đây」

慣 用 句 の 意 味 を 表 す空間の指示詞:「○này

○nọ」、「○này○kia」

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過去と未来の時間が両方表せる。

(33)Bây giờ rõ mặt đôi ta,

Biết đâu rồi nữa chẳng là chiêm bao! (Nguyễn Du)

(35)Đời Hùng Vương đã có sử sách chưa? (フン王様のとき、何か記録がある)

Bấy giờ chưa có.(その時はまだない)

上の指示詞は過去の時点を指す。

(36)Làm cho rõ mặt phi thường,

Bấy giờ ta sẽ rước nàng nghi gia (Nguyễn Du)

(家族に話し、その時、あなたを迎える)

この文にある指示詞は未来の時点を指す。

上記は時間指示だけの指示詞で、他に「đây、 đó、 đấy」はもともと空間の指示詞だが、時間の指示にも使われている。その中に、「đây」は現在の時点、あるいは現在で話している時点を、「đó、 đấy」は現在ではない時点を表す。

(37)Từ đây trở đi họ không phải vất vả nữa

(1)現在を指す

現在の時点を指すのは「nay」と「này」が挙げられる。「nay」は「hôm 」に付くと

「今日」という意味をするし、「ngày」に付くと「今日」の意味として使われることもあるが、殆どの場合は「今や」という意味を表す。「này」は「tuần này(今週)、 tháng này(今月)、 năm này(今年)、 mùa này(今の季節)」などのように「日」より長い単位と、「giờ này、 phút này(たった今)」などのように「日」より短い単位に付

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「nãy」と「kia(方言は「tê」)」も過去の時点を指すために使われているが、意味がちょっと違う。

その中で、「不明な時間を指す名詞+nãy」は近い過去、つまり一日の時間に限られている。ただし、先日の 1 時から次の日の 12 時までという期間は使われていない。例えば、「lúc nãy」, 「hồi nãy」,「 ban nãy」は全部「先/少し前」という意味がある。しかし、「giờ nãy(少し前の時間)」,「 ngày nãy(先日)」 はない。

一方、「はっきり時間を指す名詞+kia」は現在からある程度遠い過去の時点を指す。例えば、「hôm kia (一昨日)」や「năm kia(一昨年)」などである。その意味を表す

「kia」がかなり限られている。

(3)未来を指す

未来を指す専用の指示詞がないが、「はっきり時間を指す名詞+空間の指示詞・方向の指示詞)」という形で表す。例えば、「giờ sau(次の時間)、 hôm sau(次の日)、 tuần sau(来週)、 tháng sau(来月)、năm sau(来年)、 thế kỉ sau(来世紀)」などのように「はっきり時間を指す名詞+sau」、giờ tới(次の時間)、 hôm tới(次の日)、 tuần tới(来週)、 tháng tới (来月)、năm tới(来年)、 thế kỉ tới(来世紀)」などのように「はっきり時間を指す名詞+tới」が使われている。

その中には、「ngày mai(明日)」の「mai」ははっきり時間を指す名詞である

「ngày」についても、「Mai tôi đến (明日、来る)。」のように「mai」は独立の存在としてもいい。

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表 4: 時間の指示詞の分類

③数量の指示詞

測定できるものは「bây nhiêu」、「 bấy nhiêu」で確定された大体の量が表される。その二つの言葉は測定できるもの、こと、現象の全てに用いることができる。その中には、「nhiêu」は「nhiều(たくさん)」と関係があり、「bây」と 「bấy」は「đây」と

「đấy」に関係がある。一方、上記のように「 đây」、「 đấy」は「này」、「 ấy」とつながりがある。そうなると、「bây nhiêu」は「これぐらい」、つまり目の前のような量という意味を表す。「bấy nhiêu」は「それぐらい」、つまり目の前になく確定される量か、

「bây nhiêu」の言い換え言葉という意味がある。

(41)Tôi chỉ còn bây nhiêu giấy thôi 紙はこれぐらいしかない。

(42)Bấy nhiêu giấy là đủ rổi それぐらいでいいよ。

この「bấy nhiêu」は上の例の「bây nhiêu」を繰り返すのに使われている。

(43)Mười lăm phút mà vẽ được bây nhiêu là giỏi rồi

+ngoái」、「nãy」と「kia(方言は「tê」)」、「はっきり時間を指す名詞+kia」

未来を指す指示詞:「はっきり時間を指す名詞+空間の指示詞・方向の指示詞)」、「はっき

り 時 間 を 指 す 名 詞 + mai 」、

「mai」

Trang 27

それぐらい言ったら、もう十分。

そのほかにも「tất cả」、「 tất thảy」、「 cả thảy」、「 cả」(全部)、「mọi」、「mỗi」、

「từng 」、「những 」、「các」、「 một」なども数量の指示詞である。その中には「mọi」、

「mỗi」、「từng 」、「những 」、「các」、「 một」というグループは必ず名詞と接続しなければならない。一方、「tất cả」、「 tất thảy」、「 cả thảy」、「 cả」、「bây nhiêu」、「bấy nhiêu」は名詞に接続しなくてもいいのである。

表 5: 数量の指示詞の分類

④状態の指示詞

状態を指す指示詞は前の文節、前の文、前の文章にあった状態、事件、または、話し手か聞き手の体験を表すと考えられる。「thế 」と「 vậy」などがよく使われている。

Trang 28

表 6: 状態の指示詞の分類

1.3 日本語の指示詞とベトナム語の指示詞(文脈指示を中心に)

指示詞はほとんどの言語に存在しているものの、言語によって、指示詞の構造や使い分け規則が異なることが少なくない(単 2005:83)。ベトナム語と日本語は異なった語族に属しているため、言うまでもなく両国の指示詞かなり違いがあるだろう。外国語を身につけるには自分の母語に比較しながら学ぶのが最も速く覚えやすいと言われている。ベトナム人日本語学習者が日本語を習得する際に、日本語の指示詞と近い母語の表現を確認してから、「こ・そ・あ」を習得した方が速いのではないだろうか。そのため、本稿は日本語の指示詞とそれを対応するベトナム語の表現を考察し、共通点と相違点を述べる。

1.3.1 共通点

日本語の指示詞とベトナム語の指示詞の定義、分類を個別に考察した上で、次のような共通点が挙げられる。

①日本語とベトナム語の指示詞は物事、方角、場所、人、状態などを指し示す語に接続して、ある意味を直接指し示す働きがある。

(49)Tôi đã đi trên con đường này

(この道を歩いたことがある。)

(50) Khi ấy, tôi sẽ kiện anh

(その時、訴えるよ。)

②空間的関係を表すために、日本語では「こ」は話し手から近いものを、「そ」は聞き手から近いものを、「あれ」はどっちからも遠いものを指し示すという。

状態の指示詞

動詞/形容詞+vậy

này kia 動詞/形容詞+thế + ấy

nọ

Trang 29

「話し手から近いもの」の指示詞で表されている。

(53)Đây là nhà ông Giáp, kia là nhà ông Tị

(ここはジャップさんの家で、あそこはティさんのだ。)

③日本語とベトナム語の指示詞は両方にも「空間」、「時間」、「状態」という意味を表すものがある。特に、「状態」を指す指示詞は英語のような言語にはない。

この点はアジア国の影響を受けているからだと言えるだろう。

(56)その人たちは学生でしょ?

(Các anh ấy là sinh viên phải không)

⑤指示詞の使い分けは、物理的な距離より、心理的な領域の意識によって使い分けが行われていると考えられる。

(57)この本を、亡き、小林宗作先生にささげます。

(『窓際のトットちゃん』)

その本は読者の手元にあるはずだが、そのことを想像しながら作者は「近い」と感じ、自分の領域に認めるゆえに、「こ」を使う。

Trang 30

(58)Tôi vốn không định kể lại câu chuyện này

(この話を言うつもりはなかった)

「này」の使用によってその問題は話し手のものになり、聞き手への距離を遠くする効果があるようである。

⑥日本語の指示詞とベトナム語の指示詞は「空間」と「時間」の 2 つの意味が表せるものがある。例えば、ベトナム語には「đây」、「 đó」、「 đấy」など挙げられる。日本語は「{この・その・あの}+空間・時間を指す名詞」という形で使われている。

1.3.2 相違点

ベトナム語は日本語と別の語族に属しているので、言うまでもなく、両者は相違点がある。日本語の指示詞とベトナム語の指示詞の特徴、用法を個別に考察した上で、次のような相違点を挙げる。

①品詞の面では日本語の指示詞は、代名詞、連体詞、副詞などいくつかの品詞にわたっているが、ベトナム語の指示詞は代詞として認められる。すなわち、ベトナム語では、同じ言葉を何回も繰り返すことがない場合とはっきり言いたくない場合しか指示詞が用いられていない。一方、日本語の指示詞は言い換えの言葉としての働き以外に他の文法的意味を含んでいる。

②上記のように日本語の指示詞は現場指示と文脈指示の二つに大きく分けられ、意味・用法も表 2 のように 34 もあるなど様々な角度から考察されているが、ベトナム語の指示詞は位置、時間、状態、数量など全部合わせても 4 つの意味しか分類されていない。しかも現場指示、文脈指示などはまだ重視されていない。それは指示詞研究がベトナム語研究では未だ盛んになっていないからだと言えるだろう。しかし、日本語教育の立場から見た場合、母語でも知識が足りない学生たちは外国語を習得するのに更に障害が多くなる。例えば、ベトナム人学習者は「その反面」、「それに対して」など接続の働きをする指示詞を見たら、その指示詞の意味(意図)が分からず、対応の代詞を必死に調べるようになるかもしれない。そのため、母語であるベトナム語の知識を完成させるのは重要な問題である。

③同じ日本語の文脈指示の中では、「こ・そ・あ」の使い分けがかなり複雑である。

表 2 のように「そ」は使えるが、「こ」と「あ」が使えない意味・用法も、「こ」と

Trang 31

「そ」が使えるが「あ」が使えない意味・用法も、いずれも使える意味・用法もある。その上、文書には、「そ」と「こ」が使えるが、「こ」を用いると、臨場感あふれる場面を提示するような効果が出ることもある。ところが、対応のシステムがないベトナム語にそれを訳すると、その意味が伝えられない。逆に、ベトナム語から日本語に訳する場合、誤用が多く出てしまう可能性が高い。

④日本語の指示詞の使い分け要因としては、川鶴(1999)は話し手(書き手)だけではなく、聞き手(読み手)の存在が重要であることを指摘した。一方、ベトナム語の指示詞の使い分けには聞き手(読み手)でなく、話し手(書き手)が要因である。その話し手(書き手)がいた位置を、その話し手(書き手)がいた時間を基点として他の人、物、物事の位置、時間を確定する。

⑤ベトナム語の指示詞は位置と時間の意味で確定できるか確定できないかということを重視している。

⑥日本語の指示詞では時間を表すとき、「{この/その/あの}+時間」という形で、後ろの時間の言葉によってその時点が分かるが、時間を指すベトナム語の指示詞はそれ自身でも時間を表すことができる。

Trang 32

(59)Tôi hứa với anh, ngày kia hoặc ngày kìa mọi việc sẽ hoàn tất

(明日か明後日全部完成すると約束します。)

⑦日本語の文章、特に小説などは「発言・思考」を表す動詞」を修飾すると、発言・思考の内容を表す指示詞が多い(表 2)。その指示詞をベトナム語に直訳すると

⑧敬語を抜きにして日本語の特徴が表し切れないと言われている。「ここ」、「これ」、「この人」などを「こちら」に、「そこ」、「それ」、「その人」などを「そちら」、

「あそこ」、「あれ」、「あの人」などを「あちら」に変えられるように日本語の指示詞は特別な敬語の形がある。一方、ベトナム語の敬語はただ文末に「ạ」を付けたらいいので、指示詞の形が変わることなどがない。また、尊敬の意を表すために、その人の年齢に相応しい丁寧な人称代詞(呼び方)にする。

(81)そちらはどなたですか。

話し手(自分)より少し年上だったら、「Anh ta là ai thế ạ?」になるが、話し手よりかなり年上だと、「Ông ta là ai thế ạ?」になる。

⑨日本語の指示詞とベトナム語の指示詞の定義から見ると、日本語の指示詞の対象は「物事、方角、場所、人、状態」である一方、ベトナム語の指示詞の対像は

「物・事・現象」である。ベトナム語の指示詞は「人」を指さない。なぜならば「この人」、「その人」、「あの人」はベトナム語に直訳すると「người nọ」、「người đấy」、

「người ấy」になるが、ベトナム語でその言い方は相当水臭い呼び方なので、あまり使われていないからである。また、ベトナム語で目上の人について言うとき、指示詞を使うと大変失礼だとされているのである。それで、その場合、ベトナム語では人称代詞が使われる。

(61)あの人って、思いつきだけで生きてるからね。(『キッチン』)

(Mẹ mình chỉ sống toàn bằng những ý tưởng bột phát tức thời mà.)

Trang 33

⑩言うまでもなく、日本語の語順とベトナム語の語順は逆である。日本語の指示詞は名詞に付くとき、「この時」、「その人」、「あの所」のように「指示詞+名詞」であるが、ベトナム語の指示詞は名詞に付くと、「lúc này」、「người đó」、「chỗ đó」のように必ず「名詞+指示詞」という形で用いられる。

⑪空間の位置を表す指示詞の中では、日本語の指示詞でもベトナム語の指示詞でも独立語として使われているものもあれば、必ず名詞に付くものもある。しかし、ベトナム語の指示詞では上記のように名詞と付いていない指示詞は限られているし、現場指示のためしか使われていない。その反面、短いという点で、その指示詞は日本語の文書によく使われている。

⑫時間の指示詞で過去の意味をするものは日本語の指示詞にもベトナム語の指示詞にもあるが、ベトナム語の指示詞の中で「近い過去」と「遠い過去」がはっきりされている。例えば、「lúc nãy」、 「hồi nãy」、「 ban nãy」のように「不明な時間を指す名詞+nãy」は近い過去、つまり一日の時間に限られている。一方、「はっきり時間を指す名詞+kia」は現在からある程度遠い過去の時点を指す。「hôm kia (一昨日)」や

「năm kia(一昨年)」などが例として挙げられる。

時間を表す日本語の指示詞は「近い過去」と「遠い過去」などはっきりされていない。指示詞はただ話におけるその時点を言い換える働きしかない。

1.4 まとめ

本章では、日本語とベトナム語における指示詞について定義、用法、分類について基本的な理論を述べている。

最初に、日本語の指示詞については「物事、方角、場所、人、状態などを指し示す語には、「こ」で始まる語(こ系列の語)、「そ」で始まる語(そ系列の語)、「あ」で始まる語(あ系列の語)がある。」と指している。「こ・そ・あ」による指示の用法は、大きく 2 つに分けられる。一つは指すものが話の現場にある場合(現場指示)で、もう一つは指すものが話の中に出てくる場合(文脈指示)である。

次に、ベトナム語の指示詞については「指示詞はそれ自身意味を持っていないが、いくつかの方面の基点を表し、その方面と関係がある物・事・現象を指すために用いられる。」と指している。また、ベトナム語の指示詞を空間、時間、数量、状態とい

った 4 つの意味に次のように分類した。

Trang 34

日本語は近称のコ系、中称のソ系、遠称のア系という指示体系であるが、ベトナム語は上記のように指示詞が数多い言語である。日本語の指示詞の意味・用法は様々あるが、ベトナム語は4つの意味しか中心とされていない。特にベトナム語と日本語は指示体系の違いから、日越指示詞の対応関係が複雑であることは、当然である。したがって、同じアジアにある日本とベトナムの言葉(指示詞)は共通点がたくさんある一方、相違点も少なくない。

そのため、日本語の指示詞とベトナム語の指示詞を理論という点から対照し、共通

点を 6 つ 相違点を 12 まとめた。その結果は日本語学習者や日本語教育のみならず、日本語をベトナム語に、ベトナム語を日本語への翻訳能力や通訳能力を向上することにも比較的に役に立つ知識ではないだろうかと思う。

以下、筆者が日本語の小説とその小説のベトナム語版における指示詞を参照し、実践面でも考察する。

Trang 35

第 2 章:文学作品における日本語とベトナム語の文脈指示の考察

本論文では、日本語とベトナム語の指示詞について、理論のみならず実践的な立場からも分析を試みてみたい。実践面では、『窓際のトットちゃん』、『キッチン』という日本の文学作品の二つとその文学作品のベトナム語版を対照し、実践的な意味・用法、翻訳方法を考察する。それに、現場指示なら何とか分かるが、文脈指示はそれほど簡単ではない。そのため、日本語文学作品における日本語とベトナム語の文脈指示の考察することにした。

2.1 考察資料

まず、本稿で扱う第一の資料である『窓際のトットちゃん』は講談社により 1983年に発行された黒柳徹子の小説である。また、Phi Van Gung、 Pham Duy Trong により翻訳され、文化情報出版社(Nhà xuất bản văn hóa thông tin)により出版された『Tot-to-chan co be ngoi ben cua so』はその小説の対応のベトナム語版として取り扱われる。なぜその作品を選んだかというと、殆どのベトナム人学習者はこの小説を愛読し、少なくともベトナム語版を読んだ経験があるからである。それに、これはトモエ学園のユニークな教育とそこで学ぶ子供たちをいきいきと描いた感動の名作とされ、分かりやすい日本語で表される、非常に面白い文学作品だと言えるだろう。その上、日本語検定試験(JLPT)の問題などにも採用されたことがある。ということからは日本語学習者に向くもので、日本語の小説が苦手な初中級ぐらいの日本語学習者もちゃんと楽しむことができる作品である。

次に、吉本ばななの代表的な短編小説である『キッチン』というとベトナム人日本語学習者のみならず日本に興味を持つ人なら知らない人はいないだろう。1987 年、

「キッチン」が第 6 回海燕新人文学賞を受賞し、一躍吉本ばななの名を有名にし、社会現象となった。言うまでもなくこれはすばらしい作品であり、現代的な日本文学の代表作品の一つと言っても過言ではない。それから、2006 年に Lương Việt Dzũng のベトナム語版はベトナムでベストセラーとなった。

実は『キッチン』は『海燕』(福武書店)1987 年 11 月号に掲載され、続編の「満

月 キッチン 2」は同誌 1988 年 2 月号に掲載されている。本稿で扱う資料は最初の

『キッチン』、つまり 1987 年に書かれたものだけである。そして、Lương Việt Dzũngにより翻訳され、作家会出版社(NXB Hội nhà văn)により出版された『Kitchen』は対応のベトナム語版として考察をする。

Trang 36

2.2 考察の方法

論文の目的を達成するために、以下の方法を用いた

● 統計の方法

本論で統計という方法で研究しようと思う。『窓際のトットちゃん』と『キッチン』からの指示詞を統計する。統計の証拠はこ系列・そ系列・あ系列の指示詞を使った例である。

●分析

上記の統計の方法から指示詞を使った指示詞を手に入れ、分析する。日本語における文脈指示はどんな特徴(小説における指示詞の使い方の傾向)、どのように使用されるか研究する。

●対照

日本語の指示詞、それらに対応するベトナム語と比較し、その翻訳などの特徴がまとめる。こうして、日本語の指示詞、特に文脈指示に対する理解度が必ず高くなり、翻訳し方(その指示詞はどうやってベトナム語でうまく伝えるかということ)も勉強になるはずである。

収集結果は本稿の付録につけている。

2 3 考察の結果

まず、『窓際のトットちゃん』を考察した上で、211 の例文から 233 の文脈指示詞を抽出した。その中では、こ系列は 70、そ系列は 157、あ系列は 6 である。使用頻度率を計算すると、こ系列は 30%、そ系列は 67.3%、あ系列は 2.7%である。

次に『キッチン』の 110 の例文から 116 の文脈指示詞を抽出した。その中では、こ系列は 42、そ系列は 68、あ系列は 6 である。使用頻度率を計算すると、こ系列は36.2%、そ系列は 58.6%,あ系列は 5.2%である。

要するに、『窓際のトットちゃん』と『キッチン』を考察した上で、343 の文脈指示を抽出した。使用頻度率を計算すると、こ系列は 31.8%、そ系列は 64.8%、あ系列

は 3.4%である。

表 7: 文学作品における文脈指示詞の使用頻度率

Trang 37

久野(1973)は文脈指示に関して、話し手と聞き手の知識を導入し、文脈指示のあ系列について、次のように述べた。

「ア系列:その代名詞の実世界における指示対象を、話し手、聞き手共によく知っている場合にのみ用いられる。」

というのは小説、つまり文章の場合なら、あ系列はその代名詞の実世界における指示対象を、書き手(筆者)と読み手(読者)が共によく知っている場合にのみ用いられるということになる。筆者と読者がよく知っている、作品にあるもの、ことがとても限られている。

また、田窪・金水(1996)、金水(1999)はあ系列について長期記憶とリンクされる領域を探索範囲として、指示対象を検索せよという標識だという。子ども向けの作品である『窓際のトットちゃん』は長期記憶とリンクされる領域にある物がたくさんあるなら、読者は子どもの世界のイメージを想像するのが難しくなってしまうだろう。 つまり、あ系列が文章にあまり使われていないのはもちろん、子ども向けの読み物ならより使用頻度がより少なくなるのである。

以下、『窓際のトットちゃん』と『キッチン』における文脈指示についてこ系列、そ系列、あ系列をそれぞれ詳細に分析する。

2.3.1 こ系列

『窓際のトットちゃん』と『キッチン』を考察した上で、文脈指示詞のこ系列を

112 得た。その中には、「こう」は 18(16.1%)、「ここ」は 5 つ(4.5%)「この」は51(45.5%)、「これ」は 19(17%)、「こんな」は 19(17%)である。

①「こう」は日本語で 18 であるが、翻訳されたのは 6 つしかなかった。なぜかというと、「こう」という形は小説にはよく「発言・思考を表す動詞」を修飾すると、

Trang 38

発言・思考の内容を表すからである。だが、1.3.2 の⑦のように、その指示詞をベト

ナム語に直訳すると「nói rằng」、「nghĩ rằng」になるが、使うと、その話の自然さが

なくなり、何回も「rằng」という言葉を繰り返すと退屈になってしまうのだから、実際には次のようにベトナム語の文章(小説)にはその言葉をあまり使わないし、翻訳もしない。

『窓際のトットちゃん』

(1)とたん、先生は、また一段と大きな声で、こういった。

Cô giáo lại tiếp tục kể , giọng gay gắt hơn:

(2)校長先生は、トットちゃんの前に椅子をひっぱって来て、とても近い位置に、むかい合わせに腰をかけると、こういった。

Thày hiệu trưởng kéo ghế ngồi đối diện với Tôt-tô-chan Khi hai bác cháu ngồi gần lại với nhau, thầy nói:

Cuối cùng chỉ có chín học sinh trong toa tàu Các em là học sinh lớp một của trường

Ở đây, cháu cứ tùy thích nhé Có thể có nhiều người miệng thì nói như vậy còn trong lòng

lại nghĩ khác, nhưng cô bảo thật đấy

(7)えり子さんがやさしく育てたその息子は、こういう時、とっさに王子になる。

Cậu con trai mà cô Eriko đã nuôi nấng bằng thứ tình yêu dịu dàng ấy, vào những lúc như

thế này, bỗng thoắt biến thành một trang vương tử

(8)いつも女のほうが、こういうことを受け入れるのが早いからだろう。

Có lẽ vì con gái luôn dễ dàng hơn trong việc chấp nhận những chuyện như thế này

Trang 39

「thế này」、「như vậy」、「như thế này」になった。「こういうこと」も「発言・思考を表す動詞」を修飾すると、発言・思考の内容を表し、「thế này」と翻訳された。なぜかというと、それが修飾したのは「こと」だからである。

一方、「こうして」は「Cuối cùng」、「Thế là」になる。「こうして」は「こういう+名詞」などと違って「結果動詞」(動作・作用の結果、主語や目的語が指し示す対象に状態の変化が現れる動詞)を修飾すると、動作や作用の結果の状態を表す。これは指示詞であるが、前文と後文の関係を指す接続詞の働きもするので、翻訳されることが多い。

②「ここ」は 5 つの例があり、全て翻訳された。

『キッチン』

(9)家族という、確かにあったものが年月の中でひとりひとり減っていって、自分がひとりここにいるのだと、ふと思い出すと目の前にあるものがすべて、うそに見えてくる。

Mỗi lần bất chợt nghĩ ra, rằng gia đình tôi, một thứ đã tồn tại thật trên cõi đời này, cứ mất

dần đi từng người, từng người theo năm tháng, và rốt cuộc chỉ còn lại mình tôi nơi đây, tôi

bỗng thấy mọi thứ trước mắt đều giống như một lời nói dối

Trang 40

③「この」は 45.5%を占め、こ系列の中で一番よく使われるものである。その中

の 28 は翻訳された。「この」は直前の話題の対象を指すために用いられる。「そ」で置き換えられるものが多いが、「こ」で表すことによって、その対象を特に話題として話を続ける、対象を話し手に近いものとしても述べるなどのニュアンスが生じる。

しかし、上記のようにベトナム語には指示詞がよく使われるが、日本語の指示詞に比べ少ない。なぜなら指示詞でも同じ言葉を繰り返すとつまらなくなるからである。一方、他のものを間違える可能性がない限り、ベトナム語では指示詞でなく代わりの言葉(名詞が多い)を使ったほうが分かりやすい。

『窓際のトットちゃん』

(13)この教室の窓というのが、トットちゃんにとっては幸福なことに、先生にとっては不幸なことに、一階にあり、しかも通りは目の前だった。

Phòng học ở ngay tầng trệt nhìn ra đường phố là niềm vui của Tôt-tô-chan và cũng là nỗi

khổ của cô giáo

また、次の文のように、「退学」は日本語には名詞があるが、ベトナム語では動詞になるので、指示詞をつけにくい。

Còn cổng trường này chỉ gồm hai cột ngắn có cành lá trồi lên

(16)このとき、トットちゃんは、まだ退学のことはもちろん、まわりの大人が手こずってることも、気が付いていなかったし、もともと性格も陽気で、忘れっぽいたちだったから、無邪気に見えた。

Tất nhiên, lúc đó Tôt-tô-chan không hề có ý nghĩ là em bị đuổi học và người ta chẳng biết

còn cách nào để giải quyết việc này Tính sôi nổi tự nhiên có phần hơi đãng trí của em đã làm

em càng thêm hồn nhiên

(17)でも、何よりも“変わっていた”のは、この学校の、授業のやりかただった。

Tuy nhiên, điều kỳ lạ nhất ở trường này lại chính là các bài học

(18)この授業のやりかたは、上級になるに従って、その子供の興味を持っている

Ngày đăng: 23/09/2020, 21:26

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