ベトナム南部ロックアン河口における 砂嘴の延伸 1 Thuyloi 大学研究員, Vietnam-Netherlands Center for Water and Environment (175 Tay Son, Đong Da, Hanoi, Vietnam.) E-mail: ducanh.cte@gmail.com (〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒
Trang 1ベトナム南部ロックアン河口における
砂嘴の延伸
1 Thuyloi 大学研究員, Vietnam-Netherlands Center for Water and Environment
(175 Tay Son, Đong Da, Hanoi, Vietnam.)
E-mail: ducanh.cte@gmail.com
(〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉 6-6-06)
E-mail: dvduy19@gmail.com
(〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉 6-6-06)
E-mail: hitoshi.tanaka.b7@tohoku.ac.jp
4 Thuyloi 大学教授, Faculty of Civil Engineering(175 Tay Son, Đong Da, Hanoi, Vietnam.)
E-mail: nguyentrungviet@tlu.edu.vn
ベトナム南部ロックアン河口において沿岸漂砂の下手方向への砂嘴の延伸が著しい.このため,河口右
岸においては流路の移動に伴う深刻な侵食が見られる.しかし,当地ではこれまで様々な現地資料の蓄積
が行われておらず,砂嘴延伸の状況・対策を論ずるための基礎資料が乏しい.そこで,1988 年以降に撮影
されている Landsat 画像や Google Earth 画像をもとにロックアン河口砂嘴の変動特性に関する検討を行っ
た.その結果,砂嘴先端部は平均的に 95m/年の速度で延伸し,一方,対岸の汀線位置もほぼ同じ速度で後
退することから,一定の河口幅が維持されていることが分かった.また,この砂嘴移動速度に砂の移動高
さを乗じることにより推定される沿岸漂砂量は,これまで数値シミュレーションにより評価された値と良
好な一致を示した.
Key Words : Loc An River Mouth, Vietnam, sand spit elongation, river mouth opening, satellite
image analysis, longshore sediment movement
1 はじめに
適度に発達した河口砂州は波浪や塩水の河道内への
遡上を阻止することから,河川環境にとって望ましい効
果を有する.しかし,過度に発達した場合には,洪水時
の水位せき上げなど治水上の問題を引き起こすこととな
る.このように,河口砂州(砂嘴)の発達は河川におけ
る重要な地形要素である.
我が国の河川では堤防や導流堤により河口部が固定
されていることが多く,河口砂州はこれら人工構造物の
影響を多く受けている.また,河川流出土砂の減少によ
方,より自然状態にある河口環境においては大規模な砂
嘴の延伸が見られる.例えば,インドネシア2), 3),セネガ
象とするベトナムにおいても自然な河口地形の発達が見
口における砂嘴延伸と周辺沿岸漂砂との関係について検
討を行っている.
本論文で扱うベトナム南部ロックアン河口では数km にも及ぶ砂州の延伸が見られる.そこで,衛星画像より 約30年にわたる砂州の変形過程を明らかにし,その成長 が対岸の海浜に及ぼす影響を評価した.
2 ロックアン河口の概要と使用データ ロックアン河口はホーチミン市から南東に約75kmの 箇所に位置するレイ川の河口部である(図-1).ベトナム においては河口部に固有の名称を使用することが多く,
幹川流路延長は90kmである6). ロックアン河口の内部は小規模な漁港として利用さ れているため,河口内への漂砂の押し込みによる河口水 深の浅化が現地の大きな課題となっている.
長期的な河口砂嘴の変化を把握するために,全34シー
Trang 2して幾何補正を行った後に,WGS84座標系の統一座標で
表示を行った.これらの画像を分析することにより,約
30年間のロックアン河口砂嘴の変形過程を明らかにした.
なお,宇多ら7)は同一のGoogle Earth画像を用い,現地
観測結果と併せて,2012年以降の近年における砂嘴の伸
張過程について検討を行っている.本論文においては,
Landsat画像や,過去のフラッシュ情報なども加え,より
長期にわたる河口現象について着目した.
(1) ロックアン河口の地形変化 代表的な衛星画像を図-2に示す.図中の赤線は初期形 状として1988年2月の砂嘴を示しており,この時の開口部 は画像のほぼ中央に位置している.図-2(a)においてはす でに約500m程度の左岸砂嘴の延伸が認められる.図-2(b), 図-2(c)の時間の経緯とともに,さらなる砂嘴伸張が発生
している.なお,図-2(c)には(x, y)座標の定義を示した.
図-1 ロックアン河口の位置図
図-2 ロックアン河口砂嘴の成長
Trang 3(a) Google Earth 画像(2016 年 3 月 26 日) (b) Geotextile tube の設置状況(2005 年 12 月)
(c) 破壊された Geotextile tube(2016 年 10 月 6 日) (d) コンクリートブロック護岸(2018 年 3 月 26 日)
図-3 右岸の被災と水際固定のための護岸 (新河口)
(旧河口)
図-4 過度に延伸した砂嘴の破断と旧河口の閉塞(FitzGerald et al.8)に加筆)
図-2(d)以降はGoogle Earthの画像であり,より明瞭な画
像である.開口部はさらに右岸に移動していることが分
かる.図-2(d)では砂嘴上での植生の繁茂が見られ,地形
の安定化が認められる.図-2(e)では砂嘴上に建設された
ビーチホテルや舗装走路が確認される.図-2(f)の段階で
は河口が画像の右端部に位置している.
以上に示された地形変化過程より,写真の左から右に
向かう沿岸漂砂の卓越が示唆される.このような左岸砂
嘴の延伸に呼応して右岸には侵食が生じており,現地に
おける深刻な課題となっている.まず,海岸侵食対策と
して,図-3(a)の四角に示す範囲内においてGeotextile tube
の突堤が建設された(図-3(b)).しかし,砂嘴の成長に
より当該箇所は河口右岸となった.2016年10月には損傷 し機能していない(図-3(c)).河口右岸水際を保護するた めに,図-3(c)上部に見える工事がなされ,図-3(d)に見ら れるようにコンクリートブロック護岸が設置された. 図-4はFitzGerald et al.8) が示した延伸した砂嘴の破断 と旧河口の閉塞を図示したものである.Viet et al.6)による 1953年以降の地図・衛星画像の解析によれば,1953年, 1965年,1979年,1991年の地形には,図-4の様に河川が 直進する形で砂嘴の付け根で破断が見られる.しかし, それ以降,上述の様に砂嘴上での植生繁茂やホテル・道 路の建設などにより地形の安定化が進み,以前の様な自 然条件下での砂嘴破断が生じにくい状況にある.
Spit Breaching Inlet Filling
Spit Accretion
Trang 4図-5 左右岸砂嘴の発達
図-2に示した画像を含め34枚の全画像より,右岸,左
岸の水際線を画像処理により抽出した.結果の一部を図
-5に示す.図-5(a)より,左岸砂嘴の移動距離は3kmにも
達している.この左岸砂嘴の移動に呼応して,右岸砂嘴
は後退している(図-5(b)).
(2) 砂嘴特性の変化
砂嘴の変形特性をより定量的に評価するために,図-5
の汀線データより各種特性値を求めた.図-6にその定義
する.図に示すように,左右岸の砂嘴に対して,その先
端部座標,基準座標より先の砂嘴の面積,および河口最
狭部の幅を求めた.
図-7(a)に示す左岸砂嘴先端座標x1,および図-7(b)の右
得る.
( 1985) 2.16 10 m 30
( 1985) 2.38 10 m 79
延伸速度について同様な検討を行い,42.5m/yとの結果を 得ている.本研究による式(1)の値は約二倍の値となって いる.収集した画像によると,ロックアン河口周辺では 北東モンスーン期の波浪の汀線への入射角がよりきつい ことが確認される.このことが二つの河口における砂嘴 延伸速度の相違をもたらしているものと考えられる.
次に,図-7(c)の川幅Bは2000年以降,ほぼ一定値を保 っている.図-3に示された左右岸砂嘴の面積A1,A2につ いても,ほぼ一定の速度で変化している(図-7(d),図-7(e)). これは,図-7(a),図-7(b)において砂嘴の岸沖方向の幅が ほぼ一定値を保って成長するためである.
図-6 砂嘴特性値の定義
1 2
B
1.5
0.5
2.5
(a) 左岸砂嘴
(b) 右岸砂嘴
Trang 5(a)
(b)
(c)
(d)
(e)
図-7 砂嘴特性の変化
なお,図中では解像度の高いGoogle Earth(黒塗りマー
ク)と,精度の劣るLandsat(白抜きマーク)がほぼ同様
な傾向を示すことが確認され,Landsat画像からも精度の
高い評価がなされていると結論づけられる.
図-7(d)より,左岸砂嘴面積の増加率は,
/y m 10 5
1= ´
dt
dA (3)
手法と同様に,左から右に向かう沿岸漂砂量Qが河口開
口部に持ち込まれることにより左岸砂嘴が成長すると仮
定する.これより,左岸砂嘴面積増加率より,沿岸漂砂
量が求められる.
( + ) 1 =2.0´105m3/y
=
dt
dA D D
リア・ブンタウ省における実測値9)よりDB=2.0mとし,移
動限界水深についてはロックアン河口から90km北東の
Phan Thietにおける実測値10)からDc=6.0mの値を使用した.
一方,Bon et al.11)による数値シミュレーション結果に
よれば,Q=1.9×105 m3/y が得られており,本研究の砂嘴 延伸速度を用いた推定値式(4)と良好な一致を示してい る.
4 おわりに
本研究においてはベトナム南部ロックアン河口を対 象として,この約30年間にわたる衛星画像により得られ た河口砂嘴の変動の解析を行った.それにより,ほぼ一 定の速度で右岸側に移動する特性を確認した.現在,開 口部を固定化するための突堤が建設されたことから,こ の効果についてさらにモニタリングを続け,必要に応じ てさらなる対策を講じる必要がある.この際,導流堤工 法が一つの対策として考えられるが,沿岸漂砂の遮断に よる周辺海岸への影響を十分に配慮する必要がある.
謝辞: 本研究に対して,独立行政法人日本学術振興会の
x 1
3 m
x 2
3 m
6 m
2 )
x1=95.30´(t-1985)+2.16´103
R=0.99
x2=79.79´(t-1985)+2.38´103
R=0.91
Trang 6た.ここに記して,関係機関に対して謝意を表する.
参考文献
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と rhythmic pattern の海浜形成,土木学会論文集 B3(海 洋開発),Vol 71,No 2,pp.I_760-I_765,2015
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2012 (in Vietnamese) 10) Takagi, H., Esteban, M and Tam, T.T.: Coastal
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11) Bon, T.V., Ngoc, V.V and Ha, D.T.: Numerical results of tides, waves, and longshore sediment transport rates from Lap River mouth to Loc An River mouth in Ba Ria-Vung
Tau Province, Journal of Water Resources Science and Technology, No.13, pp 2-6, 2013 (in Vietnamese)
(2018.2.8 受付)
ELONGATION OF SAND SPIT AT THE LOC AN RIVER MOUTH,
SOUTHERN VIETNAM
Nguyen Quang DUC ANH, Dinh Van DUY, Hitoshi TANAKA and
Nguyen Trung VIET Elongation of a sand spit at Loc An Inlet in the Southern Coast of Vietnam is so remarkable that
many resorts and hotels have been built on this newly formed sand spit The spit elongation is caused
by down-drift accumulation of sand introduced by longshore sediment transport On the other hand,
serious erosion of the down-drift sand spit can be observed In addition, there is a fishing port inside
the inlet and the elongation of the up-drift sand spit is causing a problem for navigation of the fishing
boats Due to lacking field data in many coastal zones along the coastline of Vietnam, Landsat and
Google earth images from 1988 to 2017 have been utilized for the investigation of the Loc An Inlet’s
evolution According to the analysis results, the tip of the up-drift sand spit is shifting with the velocity
about 95 m/y while the tip of the down-drift sand spit is retreating at almost the same speed This
indi-cates that the width of the inlet has remained constant Longshore sediment transport rate (LSTR)
along the up-drift sand spit is calculated as a product of the area change rate of this sand spit and the
total depth of closure and berm height This LSTR shows good agreement with the LSTR calculated by
numerical simulation